抜くのに10秒かかる刀 超電磁抜刀 マイティ・フリード

アメノマコト

第1話 蔵にあった刀


 若くして剣道場を営む高校生の武は、幼馴染の美央と共に二人で学校に登校しては帰りに道場で子供たちに剣を教える。そんな変わらない毎日を送っていた。


ある時、二人で蔵の掃除をしていると、蔵の奥から奇妙な刀が出て来た。鞘には封筒が付いており、その封筒には『この刀、使用を禁ず』と書かれた紙が入っていた。


「先に道場の掃除、やっておくわよ」と美央が言うが、武は「もう少し蔵の掃除をしてから行くよ」と声をかける。「そう、じゃあ私は先に道場へ行っておくわね」と返事をする美央。


「じいさんもこんな蔵よく残してたな~」と愚痴を言いながら掃除をしていると、道場から悲鳴が聞こえた。


 美央の声だ。武は反射的に蔵の奥から出て来た刀を手に持ち道場へと急ぐ。剣道場には、人質に取られている美央の姿があった。春なのに厚手のコートを羽織ったロン毛の男が、美央を掴んで離さなかった。



「何が目的だ!! 美央を離せ!」と武は叫ぶ。



「こいつが鳳美央(おおとりみお)だな? 特殊な刀の製造方法を知っている娘というのは」



「何故それを……! 今はもう俺と美央の両親しか知らないはずなのに!」



「アメリカに居るこの子の両親にも挨拶してきたよ……強すぎて門前払いを食らったがな!!」



「美央をどうする気だ」



「この子には、私の組織で刀を打ってもらう……ふふん、護衛がいると聞いていたがまだ高校生のガキじゃないか」




「……せない」




「ん?」




「……そうはさせない!」



「美央は将来、俺だけの刀を打ってくれると約束したんだ! だから美央は渡さない!」



「ほ~う! ガキのくせにいっちょ前な刀を持っているじゃあないか! 抜けよ! 俺一人で相手してやる……」


 美央を遠くへ突き飛ばし、男は懐から短刀2連を両手に持ちだす。



「美央……すぐに助けてやるからな」


『蔵にあったこの刀……古そうだけど使えるのか……ええい! 今は四の五の言ってる場合じゃない! 美央を助けるんだ……俺が助けなくちゃいけないんだ!!』


 そう思いながら武は刀に手をかけ抜刀しようとした瞬間だった。





『ぬ、抜けない!』

 そう、刀が鞘から抜けなかったのだ。



「ふはは! 鞘から抜けない刀など持っていても意味はない! 死ねぇ! 高校生!!」




 男が武に襲いかかろうとした瞬間、武の刀から声が聞こえて来た。


「抜刀力(ばっとうりょく)、感知。超電磁力、チャージ開始……チャージ完了まで残りあと10秒」


 ブオオオオと刀から音が鳴り響きカタカタと揺れ出す。しまいには蒸気まで溢れて来た。



「何だ?! その刀も特殊刀とでも言うのか?!」


 一旦距離を取り体勢を立て直す男。




「10…9…8…7…6…5…」続いて数字を読み上げる刀。



「何か知らんが嫌な予感がする! その前に始末してやる!!」



「3…2…1…超電磁力、解放」

 ギィン!勢いよく抜刀された刀が男の短刀を跳ね返す!刀身には電磁力が宿りバチバチ音が鳴っている。



「こ、この刀は…………これなら……戦える!」


 蔵にあった刀の封筒に入っていた紙の裏には、こう書かれていた。




『超電磁抜刀 マイティ・フリード』



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