情報宇宙インフォルマシオン

加賀倉 創作【FÅ¢(¡<i)TΛ§】

存在の宿命を承知する

 ꧁ φ頭がパンクしそうだφ ꧂

 宇宙が、闇黒あんこくの内心でそう独言ひとりごちた。


 宇宙の記憶データ容量がいっぱいになる。膨張する風船が破裂を予期する。揺られる炭酸ボトルが泡沫ウタカタおどらせる。ある閉鎖系存在の中身の質量体積密度が、自他じたを隔てる外膜の耐荷重たいかじゅう、許容量を超えそうになる。これは抑えなければならない。抗力を働かせる。膨張の抑制、データを圧縮、容量節約するために、内包する魂たちの行動をコントロールする。コントロールとは、洗脳や扇動せんどうを行い、ロボット化、奴隷化して効率化を図ること。パターンを確固と決めてシステム化し、無駄を省く、容量を抑える。

 しかしながらその邪魔臭い障壁となるのが、宇宙自身のうちに抱える微細な異常反乱分子による、選択の逆張り。今この瞬間瞬間の選択を、箱物はこものたる宇宙の意思願望──誘導──の方向とは逆にとる。するとデータ容量が増え、宇宙の負担になる。そこで、これに対処する請負業者が存在する。宇宙のとある管轄かんかつ区域の例を挙げると、その請負業者というのは、影の政府やら、光の結社やら、アマゾン自由戦線やら、などと標榜ひょうぼうしているらしいが、レッテルはかく、本質的役割を解説するなら、こうである。軍事産業・石油産業・医療産業・食品産業・衣料産業・不動産業・あらゆる産業・の複合体の、等曲率とうきょくりつ網目状マッチポンプ癒着ゆちゃく構造。それらは全て、一般大衆にとっては、ほとんど不可視の見えざる脅威である。

 善も悪もなく入力と出力のための装置でしかない請負業者の奔走ほんそうにより、学校教育や入学試験や所謂いわゆる仕事や就職活動──いてはそれらからの逃避手段であると信じて止まれぬ"遊び"でさえも飼育的支配の一環いっかんやもしれぬ──に身を任せる陰陽の電子雲でんしうん的波動現象群は、労働没頭ロボットみたく、量産型歩兵みたく、なる。油を喰らい、油膜をまとい、油をあぶって走り、脂汗あぶらあせを出し、脂漏しろう宿痾しゅくあに伏し、油を投与し、老いる。潤滑油面上の不健康齢流レール並行ヘイコウ移動、平衡ヘイコウ移動、平行ヘイコウ移動、閉口ヘイコウ医道。みんな同じが正義の風潮。右にならえ。左に倣え。前後上下に倣え。世界は逃げられぬ鏡。

 宇宙の抱える分子のうち、家畜化されたものどもが、勝手に、おびただしい量の監視の目となり、同調圧力附和雷同ふわらいどう強制執行の正義警察となり、異常反乱分子を、母なる宇宙にとってという意味で、変換最適化する。大味おおあじな植木の剪定せんていや流行りの髪型への散髪みたく、元気よくはみ出た部位は切り取り捨てられ上の都合の良いように整えられる。出る杭は打たれる。究極の管理社会。ウィンストンもジュリアも逃れられなかった。オブライエンもそうだ。すなわち、宇宙の内側に存在する以上は、多かれ少なかれ社会に調教されること必至ひっしである。


 ꧁ φ頭のパンクが治ったφ ꧂

 宇宙は今回も例によって、内包する情報過多を解決した。


   〈了〉

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