概要
三年前に亡くなった戸羽の恋人で御影の仲間でもあった珠代をAIとして完全に再現するというのだ。
戸羽の動機は、珠代への愛執という名の「方程式」。非合法の巨大地下ラボに案内された御影は、珠代の記憶の詰まったSSDと対峙する。しかし、AI「タマヨ」の学習速度は常識を超え、その「演算」は現実の時間軸までをも歪ませていく――。
完璧に再生された「彼女の声」が、御影の記憶に語りかけるとき、彼は気づく。
自分たちが触れたのは、魂の領域か、それとも制御不能な怪物の誕生か。
御影は最後にある決断をする。
それがヒトとしての在り方なのだと信じて――。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!二十二世紀の空に愛を込めて
人間とは何か。どうあれば人間と言えるのか。
という根元的な問いを、近年のホット・トピックであるAIをモチーフに、SFエンターテイメントとして描いた作品です。
主人公は若きAI研究員。物語は、親友の恋人であり共通の友人でもあった、ある女性の葬儀から始まります。死んだ女がひとりに、生き残った男がふたり。これだけでワクワク感たっぷりのシチュエーションではありませんか。
王道のホムンクルス・ストーリーを、近代的なプログラム言語で語るオリジナリティが白眉です。情感あふれる文章も素晴らしい。読後はあれこれと物語の背景を思い描いて楽しませていただきました。 - ★★★ Excellent!!!演算による推論と魂との「あいだ」に漂うのは夢か狂気か
最近、私たちの周りに生成AIという愉快な仲間が加わりました。
言語学者による記号論的解釈から、CNNによるニューラルネットワークへのパラダイムシフトは、現在、Transformer方式によって構築された大規模言語モデルの登場によって、自律型のAIエージェントとしての活動すら可能にしました。
対面よりも画面を通してやりとりをすることが多くなった現代人にとって、それはツールと言うよりもむしろ独立した人格。隣人に近くなったような錯覚さえ覚えるくらいです。
では、人とAIの違いは何なのでしょうか?
答えは簡単です。人には不可逆な「死」という欠落が付きまといます。AIにはおそらくそれがない。
…続きを読む - ★★ Very Good!!『あなたは本物か』――その問いが、読後もずっと離れない」
本当はレビュー感想文を書くつもりはなかったのですが、僕の意思に反して指が動き、エンターを押していました……
本作は、死んだ恋人をAIで蘇らせるという禁忌に踏み込んだ、本格SF。ハードウェアの天才・戸羽と、ソフトウェアの専門家・御影。二人の科学者がそれぞれの技術と執念で挑むのは、人間の魂を再現するという神の領域。
この作品の魅力は、AIと人間の境界を「理屈」ではなく「感情」で描き切っている点にあります。蘇った彼女は本物なのか。その問いに対して、登場人物たちが知性と感情を総動員してぶつかり合う姿は、読んでいて胸が締め付けられます。
特筆すべきは作者の筆力。培養液に浮かぶ珠代の描写、タマヨが…続きを読む