謝罪の部屋
桜庭
謝罪の部屋
「ごめんね……」
そう言って俺を狭い部屋に閉じ込めた彼女は泣きそうな顔をしていた。泣くくらいならばこんなことやめてしまえばいいのに、それでも彼女の行動は止まらないわけで。
好きだから、愛しているからと繰り返す彼女は、決して俺を傷付けるでもなく、何をするでもなく、ただ純粋に部屋に閉じ込めた。
何を思い、何が目的で閉じ込めたかもわからないまま、幾日も彼女は俺に謝り続けた。
謝り続けて、泣き続けて、しまいに彼女はたった一人で壊れてしまった。俺を俺と認識できなくなり、ボロボロになった人形に彼女は愛してると囁く。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
謝るなよ。そいつは俺じゃない。もう俺じゃないんだ。
「ごめんなさい。でも、愛してるの。愛してたの」
なら、どうしてわからないんだ。それは俺じゃない。
「あなたの全部が欲しかったの」
くれてやる。全部くれてやる。
————だから、もう俺の死体に謝るな。
遠くでパトカーのサイレンが鳴る。誰かが異臭に気付いたらしい。
泣き続ける女の前で、半透明の俺は話しかけ続ける。
気付け、気付け。俺はここだ、と。
謝罪の部屋 桜庭 @sakuranoniwa
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