鈴の音が消えたあと
アオノソラ
鈴の音が消えたあと
「いやあ、夢が叶ったなあ。一度やってみたかったんだよ、これ」
星あかりの下で、先輩は上機嫌だ。六号棟の屋上、体を動かすたびにギシギシ音を立てるオンボロの椅子に座り、これまたガタガタと安定しないテーブルに湯呑みと一升瓶を置いて、僕らは向かい合っている。岩手の銘酒南部美人の純米吟醸。先輩が好きな酒を片手に、僕は遅くまで実験に勤しむ彼女を誘った。いつかやりたいと言ってた、星空酒盛りをやりましょうよ。先輩は疲れた顔に無理やり笑みを作り、僕の誘いを快諾した。実験を切り上げた先輩と一緒に階段を上がる。先輩が一段昇るごとに、チリン、チリンと小さな鈴が鳴る。ただ、その音が心なしか重い。先輩の目の下には濃いくま。僕はすでに後悔でいっぱいになっていた。階段を昇るたび、台の上の実験器具とノートが脳裏にチラつく。
「で、何に悩んでるんだよ。言ってみ」
差しつ差されつ盃代わりの湯呑みで酌み交わしていたが、三杯目あたりで先輩が切り出す。あっという間に酔いが回り、赤くなった先輩がじっとこっちを見る。あんたのことなんかお見通しだよ、と目が言っていた。僕は何もないですよ、先輩の慰労です、と取り合わない。付き合ってしばらく経つのに、敬語が抜けない。言葉遣いがそのまま心の距離になっていて、自分の気持ちを曝け出せない。本当は言いたいことは山ほどあるのに。
「本当かあ? 無理することないんだぞ。あたしには何でも言えよ」
二浪の僕と現役の先輩では、実は先輩の方が一歳下だ。でも大学生活の先輩は、やっぱり一歩先を行っている。彼女はもう大学院卒業後の進路を決めていて、自分の道を歩こうとしていた。郷里に帰って博物館に勤務するという。当然遠距離になるが、そのことを僕に相談することはなかった。彼女の人生は彼女のもの。そもそも僕との交際を考慮して就職先を決めるものでもないだろう。別れるわけじゃなし、距離は離れても仲良くやろうね、と先輩はあくまで前向きだ。
でもそれが僕には寂しい。いや眩しいと言った方が正しい。先輩は自分の考えた通りまっすぐ進む。先輩と一緒に、とある全国規模の学生学術組織を運営していたときも、彼女はいつだって前向きで努力を惜しまなかった。全国の学生たちが自主的なゼミを作り、学び、研究し、それを発表し合うための場。学生だけで作る学会みたいなもの。彼女はその運営に心血を注いだ。たぶん心の中では辛さや苦しさを噛み殺していたとしても、それを表に出すことは決してなかった。彼女が感情を出すのは、理不尽や手抜きに対して怒るときだけ。そんな先輩の眩しさに憧れ、少しでも支えようと、僕は彼女の片腕になった。
しかし組織は少しずつ衰退していく。自分の仕事のきつさには弱音は吐かない彼女も、その事実には肩を落とす。僕は彼女を励ましたい一心で、彼女が務めた事務局長の役職を継いだ。正直、組織を立て直せる自信もビジョンもなかったけれど、とにかく彼女の前でいいカッコをしたかったのだ。そんな不純な目的で運営を担っても、ろくな成果を出せはしない。僕の代になって、組織の力はますます落ちていく。それでも彼女は僕を責めず、それどころか僕の仕事にあれこれと助言や手助けをしてくれた。その甲斐もあって一時期組織は盛り返す。危ぶまれていた全国大会の開催に向け、昼間は講義をサボって企業に協賛広告をお願いし、全国の大学を青春18きっぷで巡って参加を呼びかけに行き、全国の自主ゼミの発表交流の場です、という拙い説明を繰り返した。何をどうしたら学術交流の大会が充実するのかわからないまま、がむしゃらに予算と人数の確保に駆け回る。おかげで大会参加者も確保でき、そこそこの規模で開催することができた。この頃の僕は、自分が勧誘した団体がどうすれば発表や交流を楽しめるかばかり考えていた。気づけば先輩の顔色をうかがうことも減り、職務に没頭していた。
大会を終えて先輩と交わしたハイタッチが、僕たちの関係のピークだったかもしれない。僕はそのすぐ後に、彼女に告白した。先輩は照れ笑いを浮かべながら、受け入れてくれた。
「あたしも、落ち着ける場所がほしかったんだ」
交際が始まってしばらく、僕は憧れの人の心を射止めたことで気持ちが浮ついていた。そんなふうに浮かれてるなら、付き合うのやめるよ、と先輩に怒られたが、僕はその言葉の意味を全くわかっていなかった。
その後はひどいものだった。そのときの僕らは、本気で「少しは持ち直した」と信じていた。今なら分かる。盛り返したのは人数と見かけだけで、肝心の「学ぶ中身」は、相変わらずどこにもなかった。全国大会で本当に面白かったのは、先輩たち四回生の卒研ポスターセッションだけだった。しっかり勉強している人の発表は、こんなにも具体的で、こんなにも面白いのか。僕はこのとき初めて、先輩の学問的な話を聞いたと思う。僕も先輩も、自分で書いたものを機関誌に出すことはほとんどなく、読書会でもろくに言葉を出せていなかった。
事務局の連絡ノートにOBや構成員の辛辣な言葉が並ぶ。「中央委員会の議案書つまらないよ」「全国大会に行ってでも会いたい人がいない」。さらにページを繰った僕の目に、赤インクの大文字が飛び込んできた。
「役員が勉強しない組織に未来はない」
胃が縮む感覚。僕はノートを静かに閉じた。
それからは早かった。手一杯になった役員が一人、また一人とやめ、後継もいないまま運営力だけが削れていく。参加者の数だけは惰性で保たれているのに、中身を支える人がいない。誰の目にも組織の解散が、時間の問題なのは明らかだった。
廊下で、大会を手伝ってくれた他大学の学生に呼び止められる。もう来年はないんですか。楽しかったのに残念です。申し訳ないと言う代わりに、僕は曖昧に笑うしかなかった。
OBたちがやってきてあれこれ言う。潰れたら、個人情報が流出しないよう名簿の類はしっかり処分しておけ、とだけ告げて帰った人もいた。ノートへの書き込みも辛辣さを増す。そのノートの片隅に、先輩の字もあった。いつもは細かく整った文字が、罫線二本をまたいで乱暴に走っている。「学術交流組織を、単なる仲良し交流会にしないでください。そんな組織ならないほうがマシです」。
そのなかで、OBのAさんだけは、まあしょうがないよな、とひとこと言っただけだった。項垂れる先輩の肩に手を置いて、お前は悪くないよと続ける。その瞬間だけ、先輩の顔から力が抜けて、子どもみたいな顔になった。帰り道、先輩はほとんどAさんの話しかしなかった。わたしの理想はAさんみたいな人なんだよね」と笑いながら言われたことを、今でも妙にはっきり覚えている。
先輩は最後まで僕を責めなかった。いっそ責めてくれた方がどれだけ気が楽だったか。それでも文字通り大学生活の全てを捧げた組織がなくなることに、先輩が悔しさを覚えないわけがない。もしあの企画ができていれば、結果は違ってたのかな、とふとしたときに漏らす言葉に、それが滲んでいた。
伝統ある組織は、僕の代でとうとう潰れた。まあ俺らはよくやったよ、と最後まで一緒に頑張ってきたMが肩を叩く。その手の重さを、今も覚えている。
「就職も決まってないんだろ。どうするんだ?」
先輩が心配そうに聞く。いつのまにか一升瓶は空になっていた。実は院に進学しようと思ってるんです、と言うと、先輩は赤い顔を崩して笑う。
「そうかそうか。やりたいことが決まってよかったな。あんたはコツコツやる方だし、研究に向いてるよ」
ええ、少しでも研究を続けたくて、と僕は相槌を打つ。大嘘だ。先輩と同じ研究室に居続けたいという以外に、院試を受ける理由はない。この期に及んで、僕のよすがは先輩だけ。
去年の院試の問題やるからうちに来いよ、と先輩が言い出し、屋上飲み会はお開きになった。僕は星空を見上げる。東京の郊外の夜空は、案外と星がよく見える。そう呟くと、うちの田舎はもっとすごいぞ、いつか見に来いよな、と先輩が無邪気に笑う。そんなときは来ないのではないかと、僕は薄々思っていた。屋上に並んで寝転び、二人で星を数える。握った小さな手が暖かい。
先輩のアパートへと連れ立って歩く。先輩が歩くと、チリンチリンと鈴の音が夜陰に響く。先輩は家の鍵に小さな鈴をつけていた。友達に鍵をなくさないようにともらったもの。僕はいつもこの音で、あ、先輩が来たと心を弾ませた。先輩は、鈴をチリンチリン鳴らしながら歩くケッタイな女だったのかもしれない。でも僕には、それがただ可愛くて仕方なかった。
酔っ払って機嫌のいい先輩は、僕の前を踊るように歩く。くるりと回った拍子に、いつもの「チリン」と違う、弾むみたいな音が一度だけ鳴った。
彼女のアパートで院試の過去問をもらう。帰ろうとした僕を、茶でも飲んでいけ、と先輩が引き留める。ちゃぶ台の傍で、酔いが回るにつれて他愛ない話と、言葉にならない甘え方が増えていった。腕の中にすっぽり入る小柄な先輩の体温と髪の匂いが、どうしようもなく愛おしい。お互い大事なときだし、ズブズブになりたくない、と先輩は最後の一線だけは頑なに拒んでいた。それでも、その線ぎりぎりまで寄りかかっておいて、どこに違いがあるのか、僕には分からなかった。あの夜、実際に寄りかかっていた重さがどっちの分だったのかも。
世が明けて、先輩が寝ている間にアパートを後にした。昨晩はもしかしたら本音を言えるかなと思ったけれど、星空の下の飲み会でも、先輩との睦言の交わし合いでも、一言も本当のことを言えなかった。僕は嘘で塗り固めて、先輩に気に入られたいだけなんです。この言葉がいつも、喉の奥に詰まっている。
研究室に戻る。最近僕は家に帰らず、大学や友達の家で寝泊まりしている。図々しくも着替えをそこらじゅうに置かせてもらって。バイトと大学と先輩。それだけで一日が終わっていく。学問には身が入らず、先輩の部屋でだけ呼吸ができるような暮らしが続いた。自分でも薄気味悪いと思うくらいに。
院の学費は、バイトだけでは賄えない。僕は親に進学費用を相談するため、一か月ぶりに家に帰った。金を出せないほど困窮しているわけではないが、いつまで学問を続けて、その先どうするつもりなのかと当然聞かれる。まさか先輩と一緒にいたいからとは言えず、僕は答えに窮した。親の困ったような顔が、瞼に焼き付く。
ある日、研究室の院生が血相を変えて僕に詰め寄った。お前の飼っている実験用の昆虫が死んでいる。それは知ったこっちゃないが、病気が発生したら俺の実験にまで影響が出る。真面目にやる気があるのか。このところ僕は院試の勉強ばかりで、実験は一時中断していた。そのとき始末し忘れた飼育中の昆虫が、餓死して飼育室内で腐っていたらしい。研究室の面子の刺すような視線が痛い。その中には悲しそうに見つめる先輩もいた。
僕は指導教官に謝罪した。教官は、二度と繰り返さなければいい、と許してくれたが、僕は研究室をやめる旨を申し出た。当然、院試も受けないことになる。教官はそれでいいんだな、と一言確認し、それ以上は追及しなかった。もとよりその方がありがたい。
その日の晩、教官に話を聞いた先輩から電話がかかってきた。やめてどうするんだ、という詰問に、公務員試験を受けて就職しますと話す。そんないい加減な話があるか、この前のあれはなんだったんだよ、とすごい剣幕で怒る。売り言葉に買い言葉。僕の人生は僕が決める。先輩だってなんの相談もしないじゃないか。郷里に帰るって、自分だけで決めただろ。
「わたしはちゃんと話してたろ。都会の人間には地方の実態はわからないって。わたしにできることをしたいって」
正論なのはわかっていた。郷里のことも、仕事のことも、自分で決めて、筋の通った言葉で言い切ってしまうその感じが、あの頃の僕にはただ眩しかった。でも今ならわかる。僕は怖かったんだ。そこに僕の入り込む余地なんて、どこにもないように思えて。
「そんな話だけで、故郷に戻るからじゃあね、で納得できるわけないだろ!」
電話口でぐっと息を呑む声。僕の口から言葉が勝手に溢れていく。
「先輩は、Aさんが好きなんですよね、今でも」
僕の声は少し震えていた。電話を握る手が汗で滑る。
「……何それ」
低い、掠れたような声。換気扇か何かの機械音だけが、しばらく聞こえていた。
「何言ってんだよ! あんた、本気でそんなこと思ってるのか?」
「僕とはAさんの代わりに付き合っただけですよね。でも物足りないから、いつまで経っても頼りない後輩扱いしかしてくれない。もっと対等に見てくれよ!」
「あんたのことを見下したことなんて一度もない、そんなふうに思われていたなんて心外だ!」
怒鳴り声が耳で弾ける。捲し立てた言葉の後は、荒い息遣いだけが聞こえてくる。互いに長い沈黙の後、先輩のか細い声が電話口から聞こえてきた。
「なあ、ほんとにどうしちゃったんだよ……」
僕は答えず、沈黙で返す。先輩の声はさらに弱く、低くなり、諦めたような一言が返ってきた。
「……うちら、もう終わりにしよう」
今まで聞いたことがないほど弱々しい。鼻を啜る音が聞こえた。そして電話が静かに切られた。
電話が切れた瞬間から胸の中は空っぽになった。でもその空洞に向けて、もう取り繕う必要もない。翌日から、僕は就職試験の勉強だけを機械のようにこなした。友人や後輩が取り持ちを申し出てくれても、終わったことだからと全部断った。研究室も辞めた今、先輩の居場所をわざと避けるのにだけ、細心の注意を払った。だが同じ学内にいる以上、それを貫徹することは難しい。ある日とうとう僕は先輩とばったりと出くわしてしまった。
チリンチリンと、耳に馴染んだ音が建物の角の向こうから聞こえた。僕は回れ右をしたかったが、もう間に合わない。立ち止まって先輩を待つ。鈴の音が近づく。
「……ひさしぶり」
先輩は僕の姿を認めて俯いた。それきり何も言わずに黙っている。僕も言うことはもはやない。でもこれだけはと、謝罪の言葉を口にした。
「僕は先輩の期待に応えられなかった。結局組織は潰れたし、僕のしてきたことに意味はなかった。先輩に釣り合う男にもなれなかった。申し訳なかったと思ってます。この前の暴言も、許せないと思うけど忘れてください」
先輩は僕の言葉を黙って聞いていた。目を伏せたまま、こちらを見ない。まっすぐに僕を見つめるあの眼差しは、二度と僕に向けられることはないんだなと改めて実感する。そう思った瞬間、先輩が顔を上げて僕の目を見つめた。
「あたしはあんたが決めた道なら、何でもいいと思ってたんだ」
先輩は言葉を切り、僕をじっと見る。やがて表情が少しだけ崩れ、口元に笑みが浮かぶ。にこやかな、というよりはやるせなそうな笑顔。
「あたしも同じ悩みを抱えてたから」
僕はその言葉の意味が飲み込めなかった。戸惑う僕に、先輩はまた表情を厳しくした。
「それと、意味がないとか言うな。自分のしてきたことにちゃんと向き合えよ」
先輩はそれだけ言うと、僕に背を向けて去っていく。鈴の音がだんだんと遠くなっていき、やがて聞こえなくなった。たぶんもう彼女と言葉を交わすことはないだろう。僕はそう予感したし、実際その通りになった。
僕はとにかく自分で金を稼げるようになることだけを目標にして、季節が一巡するまで勉強だけを続けた。大学を出て、バイトで食いつなぎながら一年遅れで公務員試験を受け、どうにか合格通知を掴んだ。
三月、先輩が院を出て郷里に帰る。餞別くらい渡したらどうだ、と友人に言われ、ふらふらと酒屋に出かけ南部美人の四合瓶を一本買った。家に帰って携帯を握りしめる。「お世話になりました」の一文すら打てず、何度か入力しては消してを繰り返した末に、連絡先ごと削除した。それから自分に言い聞かせるみたいに、その瓶を食品棚のいちばん奥に押し込む。
四月。新生活が始まる。初めての仕事なのに、全然初めての気がしない。同期が議事録作りや企画書作りに四苦八苦する横で、住民や他部署との利害調整も、人集めの広報も、事業結果の報告資料も、どれもこれも馴染みのあるものばかりだった。全部、先輩に手解きを受けて、二人で唸りながら工夫してきたやり方だ。少しでもわかりやすく、少しでも伝わりやすくとひねり出したその技が、今は実社会でそのまま役に立っている。
「君、慣れてるね。アルバイトとかで勉強したの?」
職場の上司にそう聞かれたけれど、僕は学生時代に少し、とだけ言ってごまかした。僕の仕事は、誰かの「やりたいこと」の下に潜り込む仕事だ。困っている人の段差を削ったり、走りたい人の足元をならしたりする役目。採用面接のときに地元のために働きたいです、と口にしたのは、まるっきり先輩の言葉の焼き直しだったが、それでも今の仕事が僕の性に合っていることに、今更ながら気がついた。
仕事を終えてアパートの自室に戻る。窓から覗く星は少ししか見えないけれど、僕はあの晩のことを思い出す。戸棚から酒瓶を取り出してベランダに出た。あの夜のように、湯呑みに酒を注ぎ、星空の下で盃を煽る。違うのは目の前に先輩がいないことだけ。あの日僕が自分の思いを全て話していたら、先輩との関係は違う結果になっていただろうか。あたしも同じ悩みを抱えていたから。彼女も組織運営に全てを捧げて、自分の学業が疎かになり、自分の道を見失っていた。それでもどうにか学問を続け、郷里のために働く道を選び取った。本当は、同じ苦しみを抱えた先輩と肩を並べて、どこへ向かうかを一緒に考えるべきだったのだろう。
不意に先輩の最後の一言が耳に甦る。意味がないとか言うな。そうだね先輩、意味はあったよ。先輩と、僕と、仲間たちとみんなで、自主ゼミとその場を支えることに全てをつぎ込んでいた日々。その努力が実を結ばず、先輩を傷つけた愚かさごと抱えた日々にだって、確かに意味があったんだ。湯呑みの中に涙が落ちる。僕は顔を上げ、ぐっと酒を飲み干した。天を仰ぎ、もう一度星空を眺める。先輩も同じ星を見ているだろうか。知る由もない。先輩にはきっと二度と会うことはない。本当の先輩は、こんな僕の感傷も甘ったれるなと一蹴して、後ろなんか振り返らないだろう。それでも先輩が、あの不器用なまっすぐさのまま、どこかで笑って生きてくれているといい。僕はそう願わずにはいられなかった。耳の奥で、あのとき一度だけ鳴った鈴の跳ねる音が、かすかに揺れた。
鈴の音が消えたあと アオノソラ @shigezou11
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