セントニコラウス

@omuro1

第1話

朝起きると、枕元には赤い靴が片方だけ。


あわてんぼうのサンタクロースが落としていったのだろうか。

その靴にはなぜか、いろんな種類のお菓子が詰まっていた。


……翌年も同じ靴が落ちていた。

中には僕の大好きだったベビーチョコ。


小学生になった僕の足は、サンタクロースの靴よりも大きく成長していた。

だから、母に告げた。

「もういいよ」と。


一年間、僕に気づかれないように、母が隠し続けたサンタの靴。

それだけで、充分だった。


「嘘は良くない」と教える大人が、その掟を破る。

微笑みながら。

いつかバレると知りながら。


サンタクロースとは何なのだろう。


大人になるとは、ああした澱みを少しずつ飲み込めるようになることなのか。

子どもたちは言葉にできない思いを、こんな形で学んでいくしかないのだろうか。


僕はこのイベントを肯定しない。

けれど、その奥にある優しさまで否定したいわけではない。


あれから何年経つだろう。

今週また、日本が嘘に染まる。

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