かく
バン!と教室の扉が開く。
泣いていた私を心配そうに(少し距離を取りながら)見ていたクラスメイトが一斉にそちらを見た。
「来て!」
来いってどこにだよ。
もうわけわかんないよ。
彼女は突然私のロッカーを漁りだした。
「無い!どこ!?」
何がだよ。
「何が?」
芯の通ってない、嗚咽混じりの声。
情けない。
そしたら彼女が唐突に自身のロッカーを漁りだした。
何やら一枚のくしゃくしゃの紙を取り出す。
「いいから!!」
ぐいと手を引かれる。
「ちょっと」
クラスメイトが声をかけた
「流石に」
「いいよ。大丈夫」
まだ嗚咽の混じる声だけど、ちゃんと芯の入ったのが出た。
コイツが強引なのは今に始まったことではない。
「ちょっと話してくる」
さっきの会話でなんか誤解があったんだろうな。というのは私でもわかる。
私もコイツも、ちょっとだけ熱くなってしまった。
、、、私の方はちょっとじゃないな。
かなり。
コイツは私を廊下に引っ張り出し、聞いてくる。
「どこ!?」
何がだよ。
とまた言いたいところだが、今まで散々繰り返した言葉だ。
さすがの私にも意図が伝わる。
「、、、美術室」
「美術室ね!わかった!」
「なに?それ」
くしゃくしゃを指さして言う。
「これ!?詩!」
なんでこいつは急に元気になり始めたんだ。
いや、泣いてはいる。
泣いてはいるが、言葉尻全てに!が付いてる。
泣きながら私の手を引いていく。
「、、、書いたやつ、見せれるの?」
「見せたことないけどね!見せたげる!」
「で、私のも見せろって?」
「そう!
なんなんだコイツは一体。
今度は心って連呼して。
「で!見せるの!?見せないの!?」
「、、、アンタの見てから考える」
「分かった!」
美術室の前で止まる。
「はい!」
泣いている。
泣きながら、くしゃくしゃを突き出してきた。
読んだ。
くしゃくしゃで字も汚いけど。
ヘタクソな挿絵も右下に載せてる。
、、、絵か?これ。
でかい丸と小さい丸がひとつずつ。
小さい丸の近くに点がひとつ。
下の方には黒いガタガタした何か。
色もヘッタクソだ。青とオレンジが混ざって汚い色になってる。
でも、題名と内容を読んだら何か分かった。
「【絵が描けたなら】」
「そう!どう?どう?」
「太陽と月と一番星?これ」
「そうそう分かる?分かるでしょ!」
「、、、」
良いのか悪いのか、私には分からん。
でも言葉の使い方が上手いというか、
言葉だけでも景色が浮かんでくる。
国語の成績が良いだけあるね。
「、、、もっと良い挿絵にしてあげられるけど?」
「ほんと?」
「おいで」
手を引き、美術室に入る。
先生が用意してくれた、棚の右側、上から3段目。
コイツが声を掛けてきた頃に描いてた絵を引っ張り出す。
「これ見たのはいつだったかな。
中三の11月か12月くらい?」
「これ!?マジで!?」
「こんな偶然あるもんなんだね」
「私はついこないだ、12月のあたまくらいに見た!」
そのくらいだったかな?私も。
「朝早く目が覚めて」
「太陽昇るの見ようかと思って」
「「空を見あげた時」」
実際には太陽が昇ると、
この3つを同時に見ることは叶わない。
でも、
太陽と月と
そう思った
そう思った
写真には残せない。
「確かに、こうして見ると同じかもしんない」
「でしょー!?言った通り」
「訳わかんなかったよホント」
「こころで語れば分かるんだって!」
頭良い奴がオカルトチックなこと言ってるの、なんか面白いな。
でも、お互い見せあえて良かった気もする。
全くおんなじ
「仲良くね」
「そう!仲良く仲良く!」
終わり
絵が描けたなら 言描き @shousetsusukisuki
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