自宅警備員大活躍
昼月キオリ
自宅警備員大活躍
高校生の頃から、勇人(はやと・21)は部屋に引きこもっていた。
無口で、人付き合いが苦手。
外の光より、薄暗い自室でパソコンのモニターを見つめている方が落ち着く。
そんなタイプだった。
キャピキャピした明るい妹・樹菜(きな)。
朗らかでなんでも受け止めてくれる母。
昭和の香り漂う、厳格だが無口で不器用な父。
その家の中で、勇人だけが引きこもっていた。
だが、家族が家を空けた“あの日”。
妹に「自宅警備員〜」と茶化されていた勇人の“警備”が、本物になる。
樹奈の部屋から聞こえた、不自然な物音。
そして、ベッドの下で息を殺していた“何者か”。
「誰だ」
低く放たれた声は、これまでの勇人とは別人のようだった。
飛び出したストーカーは勇人に押さえつけられ、逃げる隙もない。
空手部時代に鍛えた身体は、燃え尽き症候群で引きこもった後も衰えていなかった。
犯人は青ざめながらうめいた。
「なんだよこいつ・・・めちゃ強ぇ・・・」
勇人は即座に警察へ通報した。
家族が帰宅したのは、その少し後だった。
母「大丈夫勇人? 怪我は? どこも痛くない?」
勇人「うん」
父「勇人、よくやった」
そう言う父の声は、厳しさより誇りに満ちていた。
樹奈は勢いよく兄に抱きつく。
妹「ありがとう、お兄ちゃん! 守ってくれて・・・ほんと、カッコいいよ!」
いつも優しく受け止めてくれていた母。
黙って否定せずにいてくれた父。
慕ってくれた妹。
その瞬間、勇人は気づいた。
自分にも、守るべきものがあったのだと。
そして、そのためにもう一度強くなりたいと心から思った。
あの事件から一年後。
勇人はついに部屋から一歩踏み出した。
ビルの警備員として初めてのアルバイトを始め、
同時に、空手道場にも通い始めた。
無口で不器用な青年は、今日も前へと歩き続けている。
守りたいものの為に。
自宅警備員大活躍 昼月キオリ @bluepiece221b
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