ボードクール

@takeru0303

第1話

美しい物が好きだった・・・・・・それは、とある老人が所有しているギリシアの彫刻だったり、道端に咲いているカンナの花だったり、遠い青空だったり、色々だった。




 いつの頃より、この性癖だったのかは、分からない・・・・・






 貴女はそんな僕を嘲笑う。微笑んで嘲笑う。僕は、何も言うことができない。




 



 いつだったか、美しい女(ひと)が居た。その女は、僕を好きだったのかは、分からないが、僕とその女は、恋愛みたいなことをしていた・・・・・・






 その女は、僕のことを殺そうとした。僕は死にそうになり、別れた・・・・・・








 冬の街は、人が騒がしい・・・・・三年前の冬のことを僕は忘れない。









 会いたい人に会えない。だから苦しい。けれども詩と小説は相当に鍛えられた。ふと喫茶店に立ち寄って、コーヒーを飲む。喫茶店の名前は、『ボードクール』










『なぜかは、分からないのだけれどね・・・・僕は君を鍛えている。相当に・・・・君の希みは大きい。』

『それはわかっている・・・・・』

『どうしてle cœurに行かなかったんだい?』







どうしてだろう・・・・こっちの店に寄りたくなった・・・・・・









『彼女は、とても酷い人だ。君を傷つけるのを楽しんでいる。』

『・・・・・・・・』


『もう会わないほうがいい。』






ふと海を思い出す。あのきれいな渚・・・・・・・・・・






彼女は行ってしまった、とても遠い国へ・・・・・・・







 店を出る。






「あのおじさん。遊んでばかりじゃだけだよ・・・・」そう道端の女の子が僕に言う。



「遊んでばかりじゃない。勉強もしてい・・・・・ないか・・・・」



「ヴェルレーヌ詩集を読みなよ」

そう猫のような少女は言う。





 そういわれて僕は、夕暮れの道を引き返して墓地に向かう。





墓地・・・・そこに僕の息子が眠っているはずだ。けれども何も言うことはないのだろう・・・・・・








 好きな人に一目会えた。会えたから幸せだった。幸せだから続きたかった。けれども幸福はこと切れた。






 いいんだ、また誰か僕を好きになってくれる人が居る。そう願って僕はこの道を歩むだけだ・・・・

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