勇者は刀を振るう

　史上最強の化物を斃し、のんびりと寛いでいた最強の剣士。彼は急に異世界へ飛ばされた。魔王を斃す為に喚び出された。

　勇者召喚である。

　だが、彼は異世界の言葉が分からない。神の恩恵を貰っているわけでもなければ、異世界の魔法や異能が使えるわけでもない。

　ただ純粋に強いだけ。異世界の言葉を理解する便利スキルなどは持ち合わせていなかった。

　ただやるべきことはすぐに理解した。彼が英雄だからだ。

「馬鹿な……形のない魔法をただの剣で切り裂くだと！？」
「私もこの域に至るまでにかなり苦労した。剣を振り続ければ誰でも同じ域に至れる」
『出来てたまるか！！！！』

　彼は無自覚に自身の強さを周知し、男女問わずツッコミを入れさせる。そういう剣士だ。