第2話
「おぉ、これは……」
綺麗な青空と何処迄も広がる荒野。数日歩き続けたが、景色は変わらない。私が見てきた世界と大体は同じだった。
だが、眼前を埋め尽くす無数の蒼く透き通った丸い物体。名称は不明だが、斬撃が通りそうにないように思える化物だった。柔らかい……普通に斬ることだけなら出来そうだが、その命を終わらせることは普通の剣術ではまず成し得ないだろう。
それらが私の進むべき道の前に立ちはだかっている。私の進路を塞いでいる。
ならば、斬るしかなかろう。私に出来るのはこの刃を振るい、斬ることだけなのだから。今までそうしてきたし、これからもそうするつもりだ。
息を鋭く吐き、抜刀する。
化物へと一気に間合いを詰め、刀を振るう。切先が化物を捉え、切断する。難なく斬ることは出来たが、分裂して数が増えてしまった。
化物が何かを吐き出す。咄嗟に飛び退くと、地面に当たった瞬間、肉が腐ったような異臭が放たれる。毒なら吸ったところで私には通じないので違うだろう。
少し考え、答えに行き着いた。
「酸か。当たったら怪我しそうだな」
私が居た世界ではこんな化物は居なかった。この世界にはこういう化物も居るのだな。
そう思いつつ、再び刀を振るう。今度は一度ではなく、二度、三度と数を重ねていく。それでも数を増やそうとしているので、斬撃の回数と速度を上げていく。
一太刀では事足りぬのなら、二度、それでも足りぬのなら三度、それでも足りないというのなら────その発想のお陰で百ほどの斬撃を浴びせれば粉微塵となって消滅した。
よかった。私が知る限り、最も背筋が凍った化物は千撃切り裂いて漸く殺せた。それも一瞬で再生してしまうから、一瞬で千撃浴びせる必要があった。
それに比べれば楽だ。目の前の化物が無数にいようとそう手間はかからない。
名称不明の化物は数分と絶たず、全て消滅した。途中からは一体一体ではなく、数体を相手取りながら同時並行して切り裂いていったからな。ほんの少しだけ時間を短縮できた。
「む」
化物を全滅させ、再び歩き出そうとした私の足は止まる。
少し距離があるが……およそ三里、いや四里か。そこからこちらを視ている者が居る。目的は分からないが、敵ではなさそうで何より。
敵意は感じられないし、攻撃の予兆もない。無視しておいていいだろう。
ただその視線の主のいる方角に向かうことにした。相手が気になるからではない。そちらから大勢の人の気配がしたからだ。
おそらく
目的地は決まったので早速出発することにしよう。
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