最終話 七夕の奇跡とカササギ橋
7月7日。久しぶりに帰ってきた日本の空は、まるで姫花の心のように曇り空が広がっていた。
姫花は日本に到着すると、空港から待ち合わせの公園まですぐに向かった。
早く星夜に会いたい気持ちでいっぱいだった。
それでも不安は拭えなかった。
星夜はあの重病から本当に元気になったのだろうか?
父が星夜の病状などを知っていて、私の仕事のことを考えて隠しているのではないか?
それに手紙はきちんと読んでくれているのだろうか?
今も私のことを好きでいてくれているのだろうか?
(星夜くん、お願い、絶対に来てくれるよね…)
姫花は胸の"カササギ"のネックレスを強く握りしめた。
***
待ち合わせ時間の5分前、姫花は天の川公園に着いた。
天候のせいか公園には人影はなく、まだ星夜の姿もなかった。
無常にも、約束の時間を待たずに突然、激しく雨が降り始めた。
姫花は傘もささずにベンチに腰を下ろしていた。
時間が経つにつれて雨足が強まっていく。
姫花の耳には激しい雨音が繰り返し聞こえてくる。
時計を見ると約束の時間の18時になっていた。
姫花はベンチでうつむいたまま、どれくらい時間が過ぎただろうか。
彼女の目から流れ落ちるものは、もはや涙なのか、雨なのか分からなかった。
すると突然、頭上の雨が止んだ。
いや、姫花の耳には周囲の激しい雨音は確かに聞こえている。
姫花がふと見上げると、傘を差し出した青年が立っていた。
「星夜くん…。」
星夜:「遅れてごめんね。姫花ちゃん。傘を買っていたから少し遅れたよ。」
姫花:「元気になったんだね…。会えて嬉しい。」
星夜:「うん、手紙を読んだからね。心配かけてごめんね。」
姫花:「本当に良かった。そうだ、これを見て。」
姫花はスマホでOrihimeプロジェクトの世界の子供たちの笑顔の写真を星夜に見せた。
星夜:「Orihimeの活動のことは聞いていたよ。姫花ちゃん、ありがとう。」
姫花:「私こそありがとう。星夜くんのおかげでOrihimeも新たな展開ができそうなの。」
姫花:「仕事のこともだけど、話したいことや聞きたいことがたくさんあるの!」
喜ぶ姫花を見るなり、星夜は片手でそっと強く抱き寄せた。
しばらくの間、二人の頭上の傘をたたく雨音だけが、切なくも優しく響き渡っていた。
まるで二人の未来を祝福する「”カササギ”
たちの架ける橋」に守られているかのように、傘の下の彼らの周りだけには光が差し込んでいた。
バリキャリ社長令嬢が恋に溺れ、最強のバリキャリになる 甘井 サト @Amai_Sato
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