Ep.008:母は強し
歩き始めて体感一時間と少しが経った頃。
クーゴの後に続いた俺たちの前にそれはあった。
「村だ」
「村だねー」
如何にもゲーム序盤に出てくるような小さな農村が目の前に広がっている。
見たままの感想が漏れた俺に追従して、左腕に抱き着いているレーヴァテインも同意を示す。
「ひっつくな、暑い」
「起きたばっかでお兄ちゃん成分足りてないモーン」
「道中ずっとこのイチャイチャを見せつけられてたオイラはもう疲れたっス……」
何故だか疲れた顔のクーゴはさておいて、見える範囲に居る村人たちを眺めてまた率直な感想を告げる。
「ぱっとみ……若いのがいないな。特に男」
「お年寄りばっかりだね」
農作業をしているのは皆年老いた人々。
あとは数人の女性と彼女らに抱えられた乳飲子。
これが限界集落というやつなのだろうか。
「若いのはみんな
「……アルターって何」
当然のように放たれる専門用語。
素直にアルターなるものについて
「
「お兄ちゃん、異世界から来たんだってー」
「……はい?」
俺の代わりに何故かレーヴァテインが答えると、クーゴが何言ってんだコイツと言わんばかりの反応を示した。うん、やっぱりそうだよな。
「ほらレーヴァテイン。普通はこういう反応になるんだよ」
「じゃあやりなおす?」
「いいよメンドくさい」
村の前で宇宙猫、もとい宇宙サルと化しているクーゴを横にまたもくだらないやりとりをしているとこちらに向かって駆けてくる、白髪混じりの髪を結った女性の姿あった。
「クーゴ! やっと帰ってきた!」
「げ、かーちゃん」
どうやらクーゴの母君らしい。
身体こそ小さいものの、元気はつらつ肝っ玉母ちゃんといった風情を醸している。
「婆様がクーゴはまだかってカンカンだよ! どこほっつき歩いてたんだい!」
「いやいや、そのばっちゃから頼まれた人たちを連れてきたんっスよ!」
そのクーゴの言葉で俺とレーヴァテインに気がついたらしいクーゴ母は、あらやだと居住まいを正して柔和な顔つきでこちらに意識を向ける。
「あらお客さん? ごめんなさいね、みっともないところ見せちゃって」
「い、いえ、お構いなく……」
こういったときの“母”の切り替えの早さは異世界でも同じらしい。ついその変貌ぶりに恐縮してしまう。
「ほらクーゴ、お客さんをいつまでも外に立たせておくんじゃないよ! お二人とも、どうぞウチへいらっしゃって下さいな」
そう言って俺たちを先導して歩き出した母の背中を見て、クーゴが呟く。
「オイラ何も悪くなくないスか……?」
「母親ってのはあんなもんだよ、多分な」
彼の肩をポンと叩いて、クーゴ母の後を追って歩く。
いつかあのありがたみが分かる日が来るさ。
そうして着いたのはこれまたいかにもといった木の家。
玄関戸を開けて、彼女はニコニコと待っていた。
「ささ、入って入って。丁度スープが出来たところなの」
「お邪魔します」
「しまーす!」
家に入ればなるほどいい香りがする。それを感じた途端に腹が鳴った。そういえば今日は朝から何も食べていない。
「あらあら。少し早いけど夕飯にしちゃおうかしらね」
「す、すみません」
豪快に笑うクーゴの母。
ホントごめんなさい、ウチの腹の虫が。
「腹空かせてるところゴメンっスけど、ばっちゃのところいいスか?」
即物的な思考をクーゴが現実に引き戻す。
いけない。つい、食事の誘惑に負けて本題を忘れるところだった。
「あら、そうだったわね。じゃあみんなの分準備しておくからいってらっしゃいな」
「なんかホントすみません」
「いいのよ! 久しぶりのお客さまなんだもの。腕によりをかけるからね!」
「わぁい! たのしみー!」
クーゴの母の力強い言葉になんだか懐かしさを覚えつつ、俺たちはクーゴの婆さんのところへと案内されるのだった。
いもけんピ!〜妹を名乗る不審な剣と底辺社畜だった俺〜 透亜九郎 @dodo-fish
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