あの日の空は、ただ静かに見ていた──誰かの心にしまわれた真実を。
- ★★★ Excellent!!!
戦時下の遺品整理という乾いた日常のなかで、ふと紛れ込む一枚の写真と、一双の白い手袋。そこに縫い込まれた言葉が、失われたはずの時間をそっと呼び起こしていきます。
語られない部分が多いのに、不思議と情景が立ち上がり、誰のものとも断言できない“想いの行き先”が胸に静かに残る。
登場人物たちの心が触れたかもしれない、その一瞬の温度だけが、煙のように後を引きます。
あの空は、何を見ていたのだろう。