概要
鉄板プレスから逃げた硬いスルメ。自由を懸けた、沈まぬ男の海への漂流記。
港町の土産物屋に並ぶ、山積みのスルメイカ「イカ太郎」。 彼に残された運命は、熱せられた巨大な鉄板で平らにプレスされ、誰かのビールの友になることだった。親友のゲソ吉が、潰される直前に指し示したのは、夜の海に輝く満月。 「硬く、平らにされて、誰かのビールの友になるなんて、断じて嫌だ」 大量消費の運命に抗い、イカ太郎は最後の抵抗として軒先から飛び出す。しかし、乾燥し、硬くなった体はもう泳げない。彼の逃走は、漁獲枠を超過した豊漁の裏で進む、人間社会の熱狂と絶望を目の当たりにする旅だった。 「お前はもう、沈むことを知らぬ船だ」――老タコから告げられた、絶望を逆転させる知恵。 彼は、もはやイカではない。自由の象徴となった一枚の「スルメ」として、運命に逆らい海に還る。これは、硬い板となって水平線の彼方へと
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