CUT「1度は言ってみたい」

ナカメグミ

CUT「1度は言ってみたい」

 日常生活の断片にほんの少しのユーモアを(視聴条件・50代女性の1度は言ってみたいという願望を、このようなひねくれた人間には絶対になりたくない、と笑いとばせる方)。


①「今の彼氏(男)はー」

 若い女性の方同士の会話で、よく聞かれる言葉。ポイントは「今」。

「今」、自分は当然彼氏(男)がいるが、「過去」においても彼氏(男)はいたのであり、おそらく「今」の彼氏(男)とだめになっても、「未来」の彼氏(男)がいるはずだという、恋愛における強い自己肯定感を示す言葉。

 おばさんのころは、「彼氏」ではなく「彼」と言っており、恋愛経験も乏しかったので、1度は頬杖をつきながら言ってみたい。


②「離婚予備軍になったということで、よろしいですかね?」

 おばさんの家の近辺には、結婚式やハウスウェディングを行う教会や会場が、複数ある。縁起の良い日の休日には、新郎新郎を祝うために訪れた着飾った男女や、送迎の大型バスをよく見かける。

 一生、同じ人に愛情を注ぎ続けるという結婚生活に懐疑的なおばさんとしては、「結婚した人=将来、離婚する可能性を持った人」という独自の等式があるため、新郎新婦に1度、この言葉を投げかけてみたい。

 この話を知人にしたところ、「結婚式は、本人たちのものではなく、友人たちに異性との出会いの場を与えるために開くものだ」という、とても含蓄ある言葉をいただいた。

 それなら、新郎新婦がお互いの友人を招いた合コンの幹事をやればよいだけであって、あそこまで自らを装飾する宴を開く必要があるのか、と更に思ってしまう。

 自分の性格の悪さに、呆れる。


③「ここが現場です!」

 価値観を育む大事な幼少期に、全盛期を迎えていたワイドショーを見すぎたゆえの後遺症。

 現場とは、①家、またはアパート、マンションの自室周辺が、雑草に覆われている、②玄関前に、空のプランターや錆びたスコップ、三輪車などの物が雑然と積まれている、③ベランダに干しっぱなしの洗濯物(よれよれの肌着やTシャツがベスト)やゴミ袋、なにやらわからぬ箱などが放置されている、との条件を満たした建物。

 見かけると、心の中で「ここが現場です!」と言いたくなる。

 マイクを片手に持ち、緊迫感を漂わせた声で、建物に向かって早歩きしながら言うのがベスト。


④「もっとパンチが効いたネタ、ないですかね」

 よく行くカフェで、耳に入ってくる会話は、①うさんくさい投資話ネタ、②嫁、孫などがキーワードの家族ネタ、③学生の方々の、自習しながらの恋愛話ネタ、の3つに集約される。

 おばさんとしては、①あの芸能人とこの芸能人(意外な2人がベスト)が、お忍びで温泉旅行に来ている現場に遭遇した、などの芸能ネタ、②ずっと売れないバス通り沿いのあの家は、実は事故物件で、夜には出るらしい、というホラーネタ、③地元のカップルやインバウンドの観光客でにぎわう夜景のきれいなあの山は、実はUFOの目撃情報が絶えないパワースポットらしい、とのオカルト(UFOは今や立派な防衛上の話でもある)ネタを期待したい。

 思わず話し手の方を振り返ってしまうパンチのあるネタを、上記のセリフでおねだりしたい(なんて自分勝手な!)。


⑤「えっ、もしかしてあの人・・・」

 おばさんがよく通る、地下鉄駅に向かう通路。特別指名手配犯の写真が2枚、貼ってある。1枚は報奨金300万円、もう1枚は100万円。

 趣味の悪いおばさんは、通りかかるたびに、ガン見する。いつかこの努力が報われて、「えっ、いつも見かけるあの人、もしかしてこの指名手配犯なのでは・・」と、口元を押さえていうことを、つい夢見てしまう。


⑥「正直、多すぎると思うことはないですか?」

 ぬい活(ぬいぐる活動)が全盛期の今。制服姿の女子高校生のスクールバッグには、キーホルダー型のぬいぐるみが複数、揺れている。中には5、6、7個というツワモノも。

 おばさんは、1人の女子高校生がトイレに入る際、そのドアに無惨にも首を挟まれたぬいぐるみを見てから、毎日、空中で揺れ続ける彼らが不憫でならなくなった。

 解決策としては、①月曜日はこの子、火曜日はこの子などの日替わりローテーション制、もしくは②今月はこの子とこの子、来月はこの子とこの子、といった月替りのローテーション制をオススメしたい。

 ぬいぐるみさんたちにも、休息は必要です。


⑦「まさか、こんなところに!」(これは昨日、思わず言った言葉)

 プリペイド式Wi-Fiで外で作業をするため、エピソードを公開すると、直ちにログアウトして帰宅していたおばさん。昨日、公開後の画面を見たら、「近況ノートを書くのはこちら」的な小さな文字を発見。

 登録後、2ヶ月11日後の大発見に、「カクヨム」のWEBは、大変合理的にできていると感動するとともに、小さな文字はとりあえず読みとばすという、老眼の宿命を痛感した次第です。 


 みなさんにはぜひ、おばさんを反面教師として、健全な日々を送っていただきたいものです。

(END)

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CUT「1度は言ってみたい」 ナカメグミ @megu1113

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