第一話 なんでも屋の閑暇
車のクラクションと、人々のざわめきが交差する都会の大通り【ブレンドストリート】。
窓の外では無数の人々が行き交い、誰もが目的地へ急ぎ足で歩いている。
ここは賑やかな街の一角にある、小さな事務所。
その事務所は、小さなアパートの二階の一室でひっそりとかまえた、「なんでも屋」を営んでいる。
都会の喧噪とは裏腹に、その小さなアパートを改装した事務所には静けさが包まれていた。
事務所のカーテンの隙間から差し込む光が、埃をきらめかせていた。
「先輩、今日の依頼はまだ一件も入っていませんね」
エゼルがため息を吐くように話した。
「ああ、そうだな。これが閑古鳥ってヤツだな!」
心配そうなエゼルとは対照的に、呑気なことを言う金髪の男——ゼフィルだ。
「今日は誰か依頼しにくるかもしれないだろう! ってオイィィ!!」
「タバコはやめろって、身体には悪いって言ってるでしょうが!」
ゼフィルは大きな声でエゼルに注意する。
「先輩、今は依頼人がいませんよ。もちろんお客様が来た時はやめますので」
エゼルはすまし顔で言った。
「そういう、問題ではないと思うんだが......」
呆れるようにゼフィルは言った。
「そういえば、昨日の火災は大変でしたね」
思い出したかのように、エゼルが口に出す。
「ああ、大変だった。なんと言っても俺の実家の近くだったからな...」
昨日の火災を思い出すように口にした。
(......昨日の助けた男はどこに消えたんだ)
「先輩の妹さんは大丈夫だったんですか?
あまりお身体が良くないと前にお聞きしたので...」
「あ、ああ、俺の自慢の妹セレスタは元気だぞ!」
「なら、良かったです」
胸に手を当て、ホッと息をした感じエゼルが優しく囁いた。
「だからな、エゼル。タバコは体にも悪いし、火事にもなるから止めるんだぞ!」
「先輩、それはそれです」
「だがな...」
ゼフィルは反論しようとした。
すると、部屋の外からコツコツとハイヒールの音が近づいてきた。
「どなたか来られたようです」
「ああ、そうだな」
その音の人物は部屋の扉をコツ、コツ、コツと三度ノックした。
「お入りしてもよろしいでしょうか?」
と貴婦人のような品のある声だった。
「どうぞ、お入りください」
エゼルが扉の前にいる主に優しく声をかける。
扉が開くと、ふんわりと花の香が流れ込んだ。
現れたのは、思っていた声の主とは違い——まだ10代後半あたりの少女だった。
次の更新予定
「この依頼は蠱惑的だな」〜ゼフィルとエゼルの依頼簿〜 夢廻 怪 @Night_own_fan_1
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