不幸の後には最大の蜜がある

夜のクラブで働く綾は、客のしつこいアフター強要と暴言に我慢の限界を超え、頭から水をかけて追い出し、さらには今までの売り上げ相当の100万円を叩きつけて「もう来るな」と突き放す。高揚と酒の勢いで店を早退りし、治安の悪いスラム街の自宅へ帰る途中、油断した瞬間にその客に背後から刺されてしまう。死にかけのところで意識を失った綾が次に目覚めたのは病院のベッド。
そばには心配で泣きそうな顔の同居人の麗花と、街の顔役である美蘭さんがいた。客への復讐は美蘭さんの手で片が付き、綾自身は大怪我を負ったものの命は助かる。
「不幸の底を味わったからこそ、今のこの幸せがどれだけ尊いか分かる」
愛する人の寝顔を見ながら、綾は静かにそう噛みしめる。夜の街の厳しさと、それでも守られた小さな幸せを描いた、ちょっとダークで温かいラブストーリー。