出逢い


親友(あいつ)と出逢ったのはいつだろうか………

ふと、記憶を掘り起こしてみれば小学五年生の時だろう。最初の印象は『明るい奴だなぁ』と普遍的な印象しかない。しかし、仲良くなったきっかけははっきりと心に焼き付いている。なぜなら寝る場所が同じ部屋になり、互いのわがままをぶつけ合い棒など武器アリの殴り合いをしたからである。

「もう寝るから音楽消してや」

夜十時の消灯時間を過ぎているのだが聴き続ける詩郎に僕は苛立たしく伝えた。

「まだええやろ、夜なんてこっからやて」

明日中学校があり、ましてや部活の朝練があるというのにこちらの事情など知らない他所他所しい様子に一層苛立った僕は

「せめてイヤホンなんかつけてや、僕あした部活の朝練があるねん、起きられへんのは困るって」

「そんなんアラームかなんか、かければええやろ」

「なんでやねん、自分がイヤホンつければええ話やないか」

徐々に気が急いてきた僕は腹いせに

「自分だけの部屋ちゃうねんで、一緒に寝てる奴のこと考えられへんのやったらそのスピーカーぶっ壊すで」

「やれるもんならやってみろや」

詩郎も苛立ちを覚え、僕の顔を殴打した。

「なんや自分!」

「『スピーカーぶっ壊す』とか言うからやろが!」

喧騒が加熱し始め先生が止めにくるまで殴打の応酬は抑えられなかった。

「なんで互いにアザできる程の喧嘩したんや」

夜番の女性の先生が眠たげに尋ねる。

「こいつが『スピーカーぶっ壊す』とか言うから腹たって殴ったんや」

「こいつが殴ってきたからやり返したっただけや」

2人の稚拙な弁明に先生は嘆息を吐く

「まず詩郎は消灯時間すぎてんのに音楽ならしたらあかん、ほんで空良は殴られたからって殴り返したらあかんわ、お互い様になるんやで」

詩郎は不服な様子で

「でも夜やからこそ音楽聴きたいんやし、せっかくコンポとスピーカーこうたんやし」

「でもやない、音楽聴くなとは言わへん、時間やルールは守れちゅうことや、せめてイヤホンはつけや」

先生は詩郎の目を見て誠実に説きつける。

「なんやあんたもこいつの味方か!イヤホンつけるんはええわ、でも『時間、ルール』って俺の意見聞いたわけちゃうのに勝手に決めて押し付けてや、そんなん聞けるかちゅう話やわ!」

不服が積もるようで職員室から勢いよくバァンと引き戸の音をたて自分の部屋へと帰る

「確かに僕も気に食わへんけどあいつの『時間、ルールって意見聞かずに決めたことなんか守れへん』ってのは同じやわ、先生どーにかならんの?」

先生は驚嘆したのか目を丸くし

「え、あんた反省してんのか?まぁええわ、そんなん私にゆわれてもなぁ、大人には大人の事情ちゅうもんがあるしなぁ、まぁでもその『ルール』を変えれる方法はあるな」

僕はその先生の言葉に食いつくように

「その方法ってなんなん?」

「それはなぁ、力を持つちゅうことや、喧嘩強くなるわけちゃうで、『時間、ルール』を守った上で色んな人から信頼を得るちゅうことや、私はそれを力って呼んどる、そうしたらルールなんぞ簡単に変えれるわ、信頼を得ることは簡単ちゃうけどな」

先生は腕を組んで少し誇らしげに言う。僕はこの言葉が後に呪いのようなものになるとはまだ知らない。

僕は部屋に帰り、詩郎に謝罪すると詩郎も殴ったことは反省しているみたいで

「こっちもごめんや」

と謝罪をした。その後先生の言葉を詩郎に伝えた。

「なるほどなぁ、なら俺は夢のラッパーになってでっかい夢つかまえたる!!ほんでつまらん大人達に自分の力見せつけて『自分はこういう奴や!』って訴えたろやないか!」

詩郎はベットの上から立ち上がり澄んだ瞳で宣言する。

「自己証明ってやつやな」

「なんやそれ?かっこええな!お前はなんか夢とかないんけ?」

僕はそれを聞いて少し身体がひきついた。

「僕はまだそんなん分からへんなぁやりたいこともないし」

「ならお前が好きな本とか書いたらええんちゃうか?」

僕はため息をし

「あのなぁそんな簡単なもんちゃうねんで色んなこと勉強せなあかんのやし」

「そういうもんか?好きなもんが夢になるもんとちゃうん?ほんで見て叶えるもんやろまぁ努力は必要やと思うとるけどや、お前は真面目すぎるって」

詩郎は寝ようと横になる。僕はそんな真面目なわけちゃうよと思いながら

「お前って呼ばんでや、空良って呼んでや」

「わかったわ空良、なら俺のことも自分ちゃうくて詩郎って呼んでや」

「おやすみ詩郎」

「おやすみ空良」

僕は詩郎のことが好きになり、夢があるのが羨まくなった。ここから僕らは仲良くなったと記憶している。

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