卓越した表現力によって暗黒の世界を色づかせる圧倒的な愛の物語
- ★★★ Excellent!!!
感覚補助デバイスECHOを使用する盲唖の天才ピアニスト・白石蒼葉。
ECHOは使用者が発した音声・周囲の音・記録された声。
それらの情報を直接、使用者の脳に「色」「質感」「圧力」といった形で提示する。(第一話より)
まず本作の主人公『蒼葉』は盲唖(目が見えず口が聞けない事)である。
そんな蒼葉の一人称視点語り。
これがどれほど無茶苦茶かは、書き手でなくとも想像に難くないだろう。
そんな無茶苦茶に、作者である依近様は真正面からぶつかり、作品の魅力として昇華している。
盲目でありながら読み手には状況が伝わり、盲目である事をも読み手に理解させている。
こんな無茶苦茶があるだろうか……
私が特に気に入っているエピソードは、第6話『真冬のマリーゴールド』
この章では特に“色”について言及されており、蒼葉が色情報を聞く度に世界に色が挿されていく。
“順々”に色が挿すという手法が恐ろしく秀逸で、読み手はリアルタイムで一色ずつ世界が鮮やかになっていく。
少なくとも私には“それ”を体験する事ができた。
映像表現に直結する圧倒的な筆力で描かれる『ECHO』
もし貴方が未読ならば、これほど貴重な体験を見逃すなんて勿体ない。
今すぐにでも体験すべきだ。