破天荒でヒーロー適性のある肉弾派少女、リメアの宇宙冒険譚です。
難しい設定説明の塊はまったくない、ストーリーを純粋に楽しめる親切設計の小説です。
本作の特徴は、異なった社会観を持つ異星を渡り歩くところにあります。
リメアは本来なら現代日本人的な常識を持っている、倫理観的にはまっとうな子なのですが、滞在先の社会が少し異なった価値観で構成されているために、カルチャーショックを受けてしまいます。
滞在先の人たちが、特段悪意をもって行動しているわけではなく、その人たちなりの生活に即した善意で動いているのが、とてもリアルに人間社会を描けていると思いました。私たちが旅行をして味わう、そういった文化のすれ違いが丁寧に描かれているのが他のスペースファンタジーとは一線を画す所と言えます。
さらにリメアとアリシア、後に相棒になるアーヴィなど、キャラクター造形はそれぞれ個性がはっきりしていて、とても魅力的に感じました!
SF作品の大半は導入が難解だ。
それは中世ファンタジーほどに読者の認識統一がなされていないからに他ならない。
だが『星渡りの不完全者』にそんな心配はいらない。
物語は“アリシア”と“リメア”二人の少女の出会いから始まるが、そこに堅苦しさなど微塵もない。
百合色を意識した日常系のような体裁でありながら、読者に無理を強いる事なく“SF”している点も素晴らしい。
本作をSFたらしめるキャラクターとして“AIホログラムのリッキー”が登場するが、彼はリッキーという第三者視点、会話のキャッチボール役として、縦横無尽に活躍してくれる名サブキャラクターだ。
私が特に気に入っているのは、リメアとリッキーによる、ほぼ二人の掛け合いだけで構成された『第12話 星の架け橋』
所謂“星間移動”の話なのだが、その臨場感ときたら特筆もので、その場の空気と覚悟まで伝わってくる神回。
本作は場面転換も豊富で、ネタバレをしてはあまりにもったいないという思いから、やむを得ず自重するが、この作品の魅力を存分に語らえない事が残念で仕方がない。
『星渡りの不完全者』この作品は物語の構造ゆえに、その面白さが外に届きにくい一点のみを欠点とする為、稚拙ながらレビューを書かせていただいた。
どうか読者の皆様に知ってほしい。
『星渡りの不完全者』の魅力を!
そして、本作を目にした暁には、大いに驚き、私と一緒に涙を流していただける事を切に願っている。