あの日、世界から音が消えた

橘 織葉

あの日、世界から音が消えた

 僕が目覚めると、世界から音が消えていた。

 まず初めに気がついたのは、起き上がる時。

 手を寝床ねどこにつけた時に鳴る「ペタッ」という音が聞こえず、なきごえも聞こえない。

 そこからわかったことは一つ。

 人間の出す音だけでなく、動物の声も消えているということだ。

 それでなぜ「自分以外の時が止まってる」などではなく「音が消えてる」と気づいたかというと、周りを見ると止まっている人なんかいなくて。

 子供達は皆、"苦しそうに泣いたり"、"感情などとうに失ったように虚空を見つめる"仕草をしていたからだ。

 そして、いきなり足に、鞭で叩かれたような……

 いや、鞭で叩かれたのだろう——の衝撃と痛みが入る。

 それを感じると、聴覚と同じく、感覚がなくなる。

 次に、「鞭で叩かれたのは、起きたのなら仕事をしろ。家畜に餌をやりに行け」ということだろう。と認識すると、足の感覚もなくなった。

 そこで意識が突然途絶え、次に目を覚ましたのは病院。

 病室の端に置いてあったテレビに映されたニュースを見る。

 聴覚はないので、最後に残った「視覚」で字幕を見た。

 そこには、とある事件について解説の声らしきものがかかれていた。

『この事件では、親が複数の児童に"鞭などで叩く"などの虐待、そして肉体労働をさせられていました。

 そのうちの一人の児童は、

 仲間の子供の泣き声を聞きたくないと願い、聴覚を喪失。

 叩かれる痛みを感じたくないと触覚を喪失。

 仕事をしたくないと足の感覚も喪失しました。

 現在は病院で意識不明とのことです』

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あの日、世界から音が消えた 橘 織葉 @To1123

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