漏洩した1億人の人生 - 開かれたドアの恐怖

2017年7月、大手信用情報機関「CreditGuard」から、日本国民1億4700万人分の個人情報が流出した。名前、住所、生年月日、クレジットカード番号。現代社会を生きるための「IDカード」が、根こそぎ奪われていた。

28歳のセキュリティコンサルタント・三宮涼は、後輩で想いを寄せる明日香から連絡を受ける。明日香はCreditGuardのシステム管理部で働くエンジニア。パッチ未適用の責任を押し付けられ、懲戒解雇の危機に瀕していた。

涼は攻撃の手口を解析する。Apache Struts 2の脆弱性、OGNLインジェクション、そしてIDSの証明書期限切れによる監視の死角。既知の脆弱性が放置され、組織的な管理体制の不備が、国家規模の被害を生み出していた。

開かれたドアを閉じる鍵は、システムを…続きを読む