第11話 その後の話



――――白き巨神ネフスジアブを倒し、新たな巨人や巨大獣が湧くことはなくなったが、世界にはまだまだ残党がいる。


「エリアG地点、討伐終了」

「こっちもよ!」

カルマとルチアが帰還する。

俺たちは手分けし残党を狩りつつ人類の再興を目指している。

脅威が去りつつあることで各人類の拠点でも変化が見えているらしい。


「食料は常に不足してたけど、少しずつ農耕にも手を加えられるようになっているようだ」

ゼキが教えてくれる。


「ずいぶんと畑や緑が増えたわよね。旧巨人域は鬱蒼としてるけど」

ルチアが笑う。人間が住まなくなった巨大生物が跋扈する地帯は白き巨神ネフスジアブの力の余波か、植物も巨大化していた。


これから人類がどうなるのか。それはまだ誰も分からないけれど。


「リン兄、美味しそうな果物、たくさん採集!」

ルーンが任務の傍ら持ってきたのは巨大な果物。


「まずは調べてもらわないと」

旧巨人域のものは僅かに残っていた研究所が調べてくれている。中には種まで失った食物もあるから、そこから再生できないかと言う試みだ。


白き巨神ネフスジアブは獣の餌用に適当に生やしまくったんだ。詳細はぼくにも分からない」

アルジュが苦笑する。今ではその事も苦笑できるくらいには元気になったと思う。今もみんなと手分けして残党狩りなどにも参加している。


それから変化もある。


「アルジュ、手切ったのか?」

「採集植物を回収した時にね」

「ほら、回復するから」

今ではアルジュもネフスジエフのコアで回復してあげられる。


「ありがとう、リン」

「気にしないで、アルジュ」


基地の本部に向かえばリュウ兄とエレナ先生が待っていた。


「基地の作戦任務と学業のカリキュラムについて話していたのよ」

「そうだな。学生らしいことができる数年は大事にしてもらいたいからな」

リュウ兄がにこりと笑う。


「じゃぁ学園祭以外にも行事をやるのはどう?」

とルチア。

「でも私たちはあまり知らないから」

イェリンが残念そうに告げる。避難所が落ち着いていれば簡単な読み書きが習える青空教室などもあるのだろうが、外から避難してきたイェリンたちにとってはこの基地の学校が全てだったはずだ。


「でも私のお父さま……リュウガさんの祖国って学校行事もたくさんあったのよね。学園祭とか」

「学園祭か……確かに昔はあったみたいだが、俺はお前らの年齢の時には国際部隊に入っていたからな」

そうして今は基地の総責任者である。


「カルマは何か聞いたことはある?」

「うちの両親、ほぼ職場に缶詰であんまりそう言う話は……」

出来るような状態じゃなかった。


「でも今なら」

「そっか。聞いてみるよ。それに他の基地のひとたちの中にも知っている人がいるかもよ」


「じゃぁ早速みんなで手分けして」

「ああ。これからは後輩たちも入るだろうし」

人類の最前線だった基地にも少しずつ人が増えていくだろうか?旧巨人域の手前。研究者もこちらに移住したりしている。中には子連れで来ることもあるし、俺たちのような若い軍人が汎用機のパイロットとして派遣されることもある。


俺たちは情報を集め、これからの時期には【ハロウィーン】と言うイベントが開かれていたと掴んだ。お菓子は貴重だから用意が難しい。けど採集で得た材料で甘味を作って、近くの避難所の子どもたちの元を回ろうと話している。仮装をするのも楽しそうだ。


それから……。


「ネフスジエフ」

基地に立てられたネフスジエフの立派な神殿の前に立つ。


「イオクム」

(ありがとうな)

俺たちのために力を貸してくれたネフスジエフの神殿にはネフスジエフと共に4柱の神騎も祀られている。俺たちを守ってくれた優しい慈悲の神だ。


「リン兄、ネフスジエフに会う来た?」

まだまだ言葉はたどたどしいがかわいい弟。時系列的には兄なのだが俺としては弟で変わりない。


「うん、でもネフスジエフはいつも一緒にいてくれるような気がするんだ」

「アイアフ、一緒」

俺たちもネフスジエフの一部だったからこそ分かるんだ。これからも人類の繁栄を見守ってくれる優しい神の名を。


――――今度こそ、受け継ごう。



【完】


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ネフスジエフの神騎 瓊紗 @nisha_nyan_

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