第二章 奴隷運搬車

可突臣は志願兵で唐軍に従軍していた。

ウマイヤ朝に変わってアラビア世界の新大帝国アッバース朝との戦いで唐軍は負け大勢の兵士が捕虜になった。

負傷はあるものの可突臣は生き残ったが彼も捕虜となりここ大食、もといアラビア世界で奴隷の身分に落ちた。

果たして彼の人生はどうなるのか。





都市や町、村の中には、土地によって生産されたものが存在しないものは何もない。

四方八方から人が集まり、あらゆる品物が豊富にあり、値段も安い。市場には錦織物、真珠、貝殻が溢れています。

ラクダ、馬、ロバ、ラバが通りを埋め尽くす。

石の蜂蜜には、中国の宝車に似た毘盧遮那仏が彫られている。

                 経記より    著 杜環  

奴隷運搬車での道のりはとても長かった。後々聞いたが私は3日も寝ていたと知った。

周りの唐や石国やソクド人など多種多様な人種がこの車に乗っていた。

先の戦いで従軍していたのか目がない者や手を切られているものなど負傷している物もいた。

それに衛生環境は私も含め最悪だった。

たとえ目的地についたとしてもここで疫病になるのは避けられないなと少し覚悟もしておいた。

車の中は体臭や泥の匂いが混ざった最悪の匂いで、コバエが集り精神的にも疲れる環境だった。

食事は一日一食だけであったが私はもともとあまり腹がすかない体だったし腹持ちも結構よかったから食事の半分を他の人間に分けていた。

??? 「いつも半分わけてくれるが....いいのか?」

と私に問いてきた

臣「別に腹もそこまですかないしそれに手も痛いし。」

??? そうか

私はまだこの車がどこに向かっているのか知らなかったやっと他人と会話ができたのでこの隙にいろいろ話をしようとした。

臣「なぁ一つ聞きたいこの車はどこに向かってるんだ?」

と私は聞いたすると相手は

???「さぁな」と期待外れの答えが出たのでもうここから話すのをやめようとした。

臣「そうか」と私が言うと続けて彼がこう答えた

???「けどもっともっと西なのは確定だな」と知りたくなかった答えを出してきたので余計に私の気分が落ち込みんだ。すると彼は

???「なんでお前はそんなことを知りたいんだ奴隷なんてどこ言っても奴隷は奴隷だそれが唐だろうが天竺だろうがどこでもそうだ」

臣「何が言いたい」

???「別に何が言いたいって言ってもお前って何考えてるかわかんないし」

臣「そんなの俺に限らず誰だってわかんないだろもうほっといてくれ」

???「先に始めたのはお前なのに......」

と彼は返してきた

臣「はぁ?口を開いたのはお前だろ?」

???「口を開いたのは俺だがならなんで俺に食料を半分俺にくれたんだ?」

と自分の心が見透かすようなことを話してきた、それに私は何も返せなかった

???「お前話たかったんじゃないの?正直になれ」

臣「........なんでわかった?」

とすぐさま疑問をぶつけた。すると彼は笑いながらこう答えた。

???「まぁ俺もお前のような人間とたくさん関わってるしな」

臣「そうなのか?」 

???「まぁ俺もお前に食料分けて貰ったお礼があるしな俺の名前を教えてやる」

彼は自分の名前を馬雲と語った彼は石国のアラブ商人と唐人の間に生まれた子でありこの地の言語も多少分かると語った。彼は20と私の少し上だった。

彼も先の戦争に従軍して捕虜になり今に至ると語った。

馬雲「さぁ次はお前だ名前は?」

可突臣「臣......可突臣 臣でいい...」

馬雲「結構歪な名前だな.......」

可突臣「よく言われる....」

それで私はなぜ彼がこんなにも前向きなのかわけがわからなかったのでこう問いた。

臣「話変えるけどなんでお前そんなに前向きなの?」

馬雲「まぁ唐だろうが大食だろうが俺生きていけるしそれにもうとっくに諦めているからな」

諦めるあるしゅこれは奴隷になった上で必要なことだとはわかっていたわかりたくなかったけど理解している自分が心の何処かにあった。

臣「お前家族死んでないなら戻ったほうがいいんじゃないのか?」

馬雲「戻れるって言ってもどうやって?逃げるのか?」

臣「逃げるといってない。」

すると彼は突然

馬雲「逆にお前は家族はいるの?」と聞いてきた私はいると答えた。

馬雲「妻とか?」

臣「まぁ一応」と諦めたような口調で私はこう言った。

馬雲「俺は妻とか娶ったことはないけど妻がいると結構いいものなのか?」

彼は続けてこう言った。

馬雲「どうせここから目的地まで先は長いお前の故郷の話とか聞かせてくれよ」

私はこの男に自分の過去を語った。

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