ぼけなす🍆

夢月みつき

本文「ぼけなす」

 ある日、登山家の男性が高山こうざんに登り頂上で景色を眺めていた。

 男性はふと思い立つと、すくと立ち上がって遠くの山に向けて呼びかけて見た。



「ヤッホー」


 ヤッホー


 気持ちの良い山びこが、かえって来た男性は気分を良くして、何度もしてみた。


「ヨーロレイヒー」


 ヨーロレイヒー


「うんうん、なかなかいいな!」


「お前のかあちゃんで~べそ~」


 

 な~んだとー



「なんだ? 俺が呼んだ声と違う山びこが帰って来たぞ!」


 しかし、男性は気のせいだと思いもう一度、呼んでみた。


「おたんこなーす」


 おたんこなーすじゃねぇだろ、コラ!


「なっ、なんだ? これは気のせいじゃないぞ! 山を下りよう」

 そう思い下山する為に道を下り始めた。




 すると、

 なんだオマエ~、逃げるのか? 根性な~し~


 その声に男性はムッとしたが、無視して歩き続ける。

 なおも聞こえて来る山びこ、木々の葉がざわざわとざわめく。



 ドジでノロマな亀だから~、あっなたっの、お傍にぃ~、置いて欲しいのよお~。


「なんだ? 今度は歌を歌って来たぞ! 無視、無視」


 誰がドジでノロマな亀やねん、コラー、いてこますぞ、ワレえ~!


「今度は、自分でボケとツッコミか、なんなんだあれは」


 男性は少し、面白くなってきてお調子者の悪い癖でムズムズしてきた。


「お~い、母ちゃん、便所の紙くれ~」


 なんなの、ボクちゃん、髪ならあんたの頭髪とうはつを使いなさい!


「えっ、斜め上の発言で返してきたぞ、ほんとにおもしれ~」


 男性はさらに調子に乗って、先程「おたんこなす」と言った時に山びこが、怒ったのを思い出した。



「ぼけなす~、どうしてお前はぼけなすなの? 塩昆布と一緒に漬物樽にでも入っとけ~🍆」


 てめっ、ぼけなすだと!? ナス言うな言うとるやないけ、しばくぞ、ワレえー!


「あっ、やっぱり怒って来た! しかし、ただの山びこに何もできるはずがない。ビビることはないな」



 男性はさらに調子に乗って踊りながら歌い始めた。



「なすなすなすなす、ぼけなぁす、あいあいあいあい、アイラブユー、今冬、おたんこなす始めました✨ シルブプレどうぞ🍆」



 なすっていうなって言ってるだろうが、このおたんちんがぁああああああああ!!!


「ギャアアッ!!」


 怒鳴り声が超高速で近づいて来たかと思うと、ナスに目と口と手と足が付いた馬鹿デカいナスに回し蹴りをされ、男性は坂を転げ落ちて行った。


 男性を蹴った、なすは消え去り、坂の下には男性の慣れの果ての賀茂かも茄子なすが一本転がっていた。



 自業自得~、とーくとーく、とお~く……

 山の向こうから山びこが響き渡って来た。



 おわり




 最後までお読みいただきありがとうございました。

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