第6話《恒例行事》

 結局あの後、ある程度値の張る物を何個か買って貰うことで許すことにした。(テセアにも焚き付けておいた)

 おじさんは涙目になってスカスカの財布を握りしめていたけど、少ししたら吹っ切れたように清々しい顔ではしゃぎ始めた。しばらく贅沢ができないなら今を楽しもう、と言う魂胆らしい。

 テセアとエクレアさんに加え、おじさんも気の向くままに遊び始めたため、必然的に僕とカフェさんが引率、もとい保護者のような立ち位置になった。


「エクレア!次はあっちに行こう!」


「了解っす!お供するっす!」


「二人ともあんまり急ぐと転ぶぞー。」


「「はーい」っす!」


 カフェさんは慣れた様子で二人の面倒を見てくれている。一方おじさんはと言うと


「見ろ、ジグ!格好いいだろう!」


「ジグ!これ食ってみないか?」


「カフェ!これやるy「結構です。」」


 とてもエンジョイしていた。

 おじさん、激辛料理を人に勧めるのはやめた方が良いと思います。って言うかいつの間に買ったんですか…。

 そんなこんなで、買い物を楽しんでいる僕達の耳に、人が揉めている声が聞こえてきた。


「何言ってんだ気持ち悪い!」


「お前らぁ!助けてくれぇ!」


と、こんな風に。

 それを聞いた僕とおじさんの反応はこうだ


「「そうだった…。」」


 おじさんは疲れたような様に頭を押さえる。


「すまんジグ、これ頼んだ。テセアついてきてくれ。」


「分かったー!」


 おじさんは僕に荷物を預け、テセアを連れて現場へ向かう。


「あれワー先輩の声っすよね!?あーしも行くっす!」


「ちょっと待って下さい。急がなくても大丈夫ですよ。」


 ワー先輩の声、というのは、助けを求めていた方であり、僕とテセアより前からおじさんと協力してきた人物。早いところ、仕事仲間である。(エクレアさんと僕の考えている人が同じなら)

 エクレアさんがついて行きそうになったのを引き留めて、僕はなんと言ったものかと思案する。


「町の揉めごとのだったらおじさんがいれば問題ありません。それに、今回は…多分違うので。」


「違う?」


 エクレアさんは頭に?を浮かべて、体ごと頭を曲げる。一年ほど前にテセアが見ていた動く絵(確かアニメと言う名前だったはず)にこの様な仕草があったなぁ…と目下の問題から思考をそらしつつ、


「取り敢えず歩いて向かいましょう。見た方が早いです。」


僕は説明を放棄した。

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