展示会

ロックホッパー

 

展示会

                      -修.


 俺は、評価や指摘が的確なことで名の通っている、軍事兵器専門のジャーナリストだ。当然ながら、この最新兵器の展示会にも俺は招待された。俺を招待しないような展示会などもぐりだ。展示会には、軍服を着た軍の調達部門らしき人や、ビジネススーツを着た兵器ブローカーらしき人がたむろしていた。


 俺は入り口で勧められたパンフレットを断った。パンフレットの説明で変なバイアスを受けるより、自らの目で実機をじっくり見て、説明員との会話から兵器の本質を見抜くべきだという信念があるからだ。


 最初のブースには最新の高速戦闘機が展示されていた。スマートなボディには三角翼が付いており、ボディの両側に巨大なジェットエンジンが付いている。これなら確かに速度は出るだろう。俺は早速説明員に質問を投げかけた。

 「こいつの速度は・・・。ふんふん、エンジンがでかいからね。積載能力は・・・。なるほど。」

 説明員と会話していて、俺は尾翼が少し小さいことに気がついた。

 「ところで、尾翼が少し小さいようだが旋回性能はどうなの・・・。へぇー、これで9Gも行けるの、すごいな。しかし、この細いボディじゃ急速旋回はもたないんじゃないの、機体の耐久試験はやっているの・・・。」

 説明員は顔色を変えて、分厚い資料をめくり始めた。これは、俺の指摘が図星だったようだ。

 「あー、エンジン屋さんと、機体の設計屋さんの連携がうまくいっていないみたいだね。これじぁ、未亡人を量産しちゃうことになるんじゃないの・・。」

 周りで俺と説明員の会話を聞いていた人々は、パンフレットと俺を交互に見ながら、そうか、なるほど、といった顔でうなずいていた。


 次のブースには全長20mはあろうかという、大砲のようなものが展示してあった。俺は看板プレートの説明を読んだ。

 「超電導レールガン・・・。はぁ、こんなのもできているんだ。」

 俺は早速説明員に質問を始めた。

 「初速は・・・。ほう、射程距離は・・・。はぁ、すごいね。超電導なのだろ、いったいどのくらい電力を食うの・・・。へぇー、これって戦艦に載せるんだろうけど、船が発電所みたいになっちゃうね。えっ、コンデンサに電気を貯めるんだ。」

 俺は一瞬黙ってしまった。コンデンサって、かさばるんじゃなかったっけ。

 「もしかして、これに必要なコンデンサって、船より大きくなるんじゃないの。」

 説明員は意外な顔をして、急いでどこかに電話を始めた。どうやら想定外の質問だったらしい。だんだん口調も激しくなってきた。しばらく待っても回答が来そうになかったので、俺は立ち去ることにした。

 「この大砲の開発者って視野が狭くなっていたようだね。この大砲以外の周辺条件もよく考えないとだめだね。まぁ、プロジェクトマネージャーも失格だな。」

 周りにいた人々は、再び大きくうなづいていた。


 そして次のブースに向かって歩いていると、軍服の男が話しかけてきた。

 「あの有名なジャーナリストの方とお見受けします。よろしければ、我が軍で働いてもらえませんでしょうか。報酬はかなりの額を用意いたしますよ。」

 俺のようなジャーナリストを軍隊が雇うだって。銃も持ったことないのに。

 「何かの間違いではないですか。俺、戦闘なんてできませんよ。」

 男は、ページの一箇所を指さしながら、パンフレットを差し出してきた。

 そこには俺の顔写真と共に説明が書いてあった。

 「なになに、『口撃兵器』・・・的確なダメ出しにより開発者のプライドをずたずたにし、また組織内に不協和音を生み出すことで、兵器開発体制を弱体化できる。費用は要相談。」

 どうやら俺も展示物の一つだったようだ。


おしまい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

展示会 ロックホッパー @rockhopper

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ