ヒヨリボウって、悪い妖怪じゃないよ

暗い描写から始まっているが、最後はキュンとくるラブストーリーです。

使われなくなった校舎の壁に雨垂れが描いた大きな人型に付けられた名前は“ヒヨリボウ”、江戸時代の本に出てくる妖怪だ。

陽和(ひより)という名前の女の子が、そのあだ名で呼ばれるようになった。よくある、名前を弄るイジメだ。

傷ついた陽和を何とか助けたい、守りたいと思う主人公。

彼自身は名前のイジメには加担してないが、別の意味で傷つけてしまった事を後悔している。その心の葛藤がさりげない言葉で描かれている。

そして彼がとった行動、それに対する陽和の反応も、直接的な表現を使わずに何気なく匂わせているのが、粋だなぁと思う。私にはできない芸当だ。

筆力、表現力共に定評のある武江さんの掌編です。是非お読みください。

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