妖怪の恩返し
- ★★★ Excellent!!!
妖怪をそういう切り口で見せるとは。京極夏彦氏の妖怪小説が形態としては近いかもしれない。
都市伝説は(非実物の)コミュニケーションツールとしての側面を持つ。同じ怪異に慄き、ルーツを想像し、対策を練ることで、人々、特に子供たちは確実に連帯感を得ていたはずだ。おそらくは妖怪も同様であったろう。一昔前の子供たちが口裂け女の噂で盛り上がったように、江戸時代の子供たちは一つ目小僧の噂で盛り上がったに違いない。
そして、学校は子供たちのコミュニケーションの場である。そこで都市伝説が生まれたのは必然であろう。そして、都市伝説に紛れて、妖怪たちが潜むにも都合が良かったろう。子供たちの口に登り続ける限り、妖怪は死なないのだから。
だが、価値観の多様化とSNSの隆盛は、そんな最後の生息場所すら、妖怪から奪ってしまうのかもしれない。だとしたら──この物語は、世話になった子供たちへの、妖怪なりの恩返しの物語だったのかもしれない。