概要
頭で解く薬師と、帳簿で解く看板娘。苦い真実にも、甘いものを一匙。
双冠帝国の首都オーレファルク。庶民街と役所街の境に、黒くて甘い匂いのする小さな薬屋がある。
店主のエミルは、過去に"何か"を抱えた訳あり薬師。薬草と調剤の腕は確かだが、儲けより人の命を優先して、つい赤字ぎりぎりまで助けてしまう。趣味は、この時代まだ誰も本当の味を知らない「チョコレート」を練り上げること。
その帳場を預かるのが、看板娘のアンネリーゼ、十八歳。
「うちの店主は原価計算というものができないの」
減らず口は止まらない。けれど彼女は、人の顔と名前を覚え、誰が何杯食べたかを数え、帳簿の一行の狂いを見逃さない。エミルが身体と物を読み、アンネリーゼが人と数字を読む。
金物の味がした一杯の粥。次々と倒れる客。毒か、事故か。
エミルは鍋肌のくすみ、薬瓶の澱、匂いのひと筋から物証を手繰
店主のエミルは、過去に"何か"を抱えた訳あり薬師。薬草と調剤の腕は確かだが、儲けより人の命を優先して、つい赤字ぎりぎりまで助けてしまう。趣味は、この時代まだ誰も本当の味を知らない「チョコレート」を練り上げること。
その帳場を預かるのが、看板娘のアンネリーゼ、十八歳。
「うちの店主は原価計算というものができないの」
減らず口は止まらない。けれど彼女は、人の顔と名前を覚え、誰が何杯食べたかを数え、帳簿の一行の狂いを見逃さない。エミルが身体と物を読み、アンネリーゼが人と数字を読む。
金物の味がした一杯の粥。次々と倒れる客。毒か、事故か。
エミルは鍋肌のくすみ、薬瓶の澱、匂いのひと筋から物証を手繰
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