第3話 レベルアップを目指そう

 剣と魔法のファンタジー世界だと魔物を倒せばレベルアップが起きて強くなる。こちらの世界でも似たような事が起きるらしい。ただ、加護が無いと魔物を倒すのは大変なので、王都の外には出てはいけないと言われてしまった。


 王都内にも一応魔物は住んでいる。街のお掃除屋であるスライムだ。

 スライムはゴミ置き場や用水路周囲で沢山見かける。ちなみにみに魔法で水を出せるからか、王都内に井戸らしいものは無い。生活排水は川から引いた用水路に流していた。それをスライムが処理してくれるので、王都内は貧民が多いエリア街でも綺麗さを保っていた。


 スライムは生活にかかせないパートナーではあるけれど、定期的に駆除しないといけない魔物だった。何故なら栄養となるゴミや排水があればどんどん増えてしまうし、ゴミ置き場や用水路から溢れたスライムが価値のあるものを食べてしまったりするからだ。


「えーい、やー」


 孤児院を抜け出しゴミ捨て場にやって来た僕は、ゴミ捨て場に置かれていた壊れたベッドの足っぽい棒を棍棒代わりにスライムを思いっきり叩いてみた。けれどポワンポワンと跳ね返されて倒す事が出来なかった。


「むぅ……、硬い……」


 次は、先の尖った木の枝で刺してみたけれど、スライムは黙々とゴミを食べていた。


「手強い……」

「未来の英雄、頑張れよっ!」

「うんっ!」


 鉄の棒をスライムにグサグサさして数を調整していたオジサンが、応援してくれた。

 オジサンのよると、子供が強くなるためにゴミ捨て場のスライムを倒すというのは良くやる事らしい。、微笑ましい顔で見られてしまった。


『光よ』


 光魔法をスライムの弱点と言われる核の部分に当てたけれど、核にダメージを与えられている様子は無かった。


「光は届いているけど……」

「あはは、そんな魔法じゃ倒せねぇな」


 光を束ねるイメージで当ててみたのだけれど、レーザーのように焼き切るみたいな強さは無いので、核が薄っすらと光るだけだった。


『闇よ』


 闇魔法はファンタジー世界定番の別空間を作れる魔法だ。闇属性を持っていない僕は背嚢程度の大きさしか容量を持っていないし、自分の着替えや『水よ』で水が飲めるように持っていたコップなど、全ての財産をそこに入れているので残り容量はあまりない。けれど、スライムを半分入れて解除すれば切断が出来るかもしれないと思い挑戦してみることにした。


「入らない」

「生きているもんは入らねぇよ」

「むぅ……」


 闇属性の別空間には生きてものは入れられないとは聞いていた。けれど孤児院の庭の薬草を摘んで入れる事は出来た。薬草だって摘んだばかりは生きているはずだ。それに別空間に物を出し入れする時は自分の手は入れる事が出来る。だからスライムが入らないのは何でだろうと思ってしまう。


「これ使ってみるか?」

「良いの?」

「あぁ、火の魔法を使われっと危険だしな」

「火事になるからしないよ」


 オジサンがスライムを倒すのに使っていた、先端を尖らせた鉄の棒を差し出して来た。

 それを思いっきり刺せれば、僕でもスライムを貫けそうだ。


「少し重ぇぞ?」

「うん」


 オジサンから渡された棒はオジサンの言うように確かにズシンと重かった。


「手を滑らせると怪我すっからよ」

「うん」


 体感的には10kgぐらいの重さだろうか。持てない事は無いけれど、まだ5歳の身では振り回すのは難しそうだった。


「えーい」

「あー、惜しい。滑っちまったな」

「むぅ……」

「ちょっと手伝ってやるよ」


 オジサンはそういうと、鉄の棒を持っている僕の手を取り、そのままスライムを刺した。

 核を刺されたスライムは弾力を失い、そのあと黒い霧みたいなものになって消えていった。


「消えちゃった……」

「あぁ、こうやって魔素になったら倒せたって事だ」

「何も残らないの?」

「あぁ、魔石が残るんだ、ほらキラキラ輝いてる砂があるだろ」

「このちっちゃいの?」

「あぁ、魔石は大きいと売れんだが、スライムのは拾うほどの価値はねぇんだ」

「そうなんだ……」


 一応少しだけ価値はあるって事なんだ。小遣い稼ぎにならないかな。


「スライムなら10匹倒すと位階が上がるからな?」

「うん」


 オジサンと結婚式のケーキ入刀のようにスライムに尖った鉄の棒を刺し続けると、10匹目を終えた時に体がホワッと温かくなった。


「ふぉぉ〜」

「あはは、あがったようだな」

「うっ……、うん……」

 

 ちょっと気持ちよくてクセになりそうだ。ちょっとオジサンにドキドキしているようの感じるのは吊り橋効果?もしかして僕、心も乙女になっちゃった?


「次は20匹だな。ただ自分で倒せれば10匹だ」

「はっ……、半分なんだ」

「あぁ、こうやって2人で倒すと上がんのに2倍かかんだよ」

「そっ……、そうなんだ」


 ちょっとオジサンの顔をあまり見れないよ。


「パーティーを組めればこうやって2人で刺さなくても良いんだがな」

「パッ……、パーティー?」


 何その素敵システム。いやオジサンと組みたい訳じゃないよ?さすがに年齢差がどうかって思うし……。でも……


「あぁ、仲間を組むと、位階あげを分け合えんだ。だが加護を貰ってねぇとパーティーを組めねぇから嬢ちゃんぐれぇだと無理だな」

「そうなんだ……」


 5年も先の話か……。さすがにそこまで待ってくれないだろうな……。

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猫獣人と歩む異世界生活 まする555号 @masuru555

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