『ホームシェアキーパー 』〜二人はYouTuber〜

荒野の高等遊民5号

第1話

第一章 古民家に救世主現る

「いったたた……右腕が思うように動かな

いって、こんなに不便だとはねぇ」

寝室で毛布に潜り込み、包帯ぐるぐるの

腕をさすりながら かよはうめく。


「おはようございます! かよさん!」

そこへ元気いい声がかよの部屋中に響いた。

「……今日も朝から声が大きいわねぇ。

幽霊の旦那が逃げちゃうわよ」


「なんかこの家気持ちよくて、ごめんね!」


入ってきたのはまりこ。直ぐに割烹着姿に

エプロンを重ね、すばやい戦闘態勢。

3日まえからシェアハウスキーパーとして

住み込み家政フをしている。


「えっと、今日の朝食は和食ですか?

洋食? それとも“残り物でもリサイクル”作戦

にします」

「最後のはやめて。昨日のカレー三日目よ?」

「カレーは三日目がいちばんおいしいんですよ」

「……あなた、ほんとに主婦経験あるの?」

「一人暮らしのサバイバル経験ならたっぷり」


かよは苦笑いしながらも、久々に明るい声が家に響いたことにほっとしていた。


第二章 台風と涙

ある日、ゴォォォ――

嵐の夜。瓦が飛び、天井から雨水が落ちる。


「ひゃあああ! 雨漏りだぁぁ!」

とかよが叫ぶ

「ちょ、ちょっとバケツ! バケツ!」

「はいっ! ……ここに持って来てますよ」

「なんて早いのーそれに落ち着いて」


ドンッ!

外から木の板が飛んできて壁に穴が開いた。


「ぎゃあぁぁ! うちが吹っ飛ぶぅ!」

「ちょっと落ち着いて!まだ梁はしっか

りしてます!」

「……って、まりこさん、なんでそんな

冷静なの?」

「DIYやってたんで、こういう惨状には慣

れてます」

「慣れたくないスキルね……」


一段落した後、かよが肩を落とす。

「大事な家が、こんな……」


その姿を見て、まりこの心が痛む。

(私なら直せる……でも、もうDIYは

止めたと決めたんだ……)


ぽろぽろ涙をこぼすまりこ。


「ちょっと! なんであなたが泣いてるの

よ?」

「……ごめんなさい。昔YouTubeでDIYや

ってたんです。でも、誹謗中傷されて、

もう止めようって……」


「はぁ? 誹謗中傷? 何それ。あんたが

悪いんじゃないでしょ?」

「でも、もう一生分の悪口聞いた気分で…」


「バカねぇ。悪いのは陰に隠れて悪口書く

やつらよ。あたしが代わりに“体育館の裏に

顔貸しな!”って返信してやるわ」


「ぷっ……なにそれ、スケ番ですか?」

「そうよ! “マムシのおかよ”って呼ばれて

たんだから!」

「初耳です!あっはははは」


二人は大笑い。涙が笑いに変わった。


第三章 DIY魂、再燃

翌朝、軍手をはめたまりこは屋根に登った。

「よーし、ここを直して……って、かよさ

ん、下から見ててくださいね!」

「大丈夫? 落ちないでよ!」


「落ちたら動画のネタになります!」

「命をネタにするんじゃない!」


トンカン、トンカン。

瓦を並べ、壁に板を打ち付ける。


「すごいわぁ、あんた本当にプロみたいね」

「えへへ、プロ気取りの素人です!」


「じゃあ私は何? プロ気取りの応援団?」

「そうです! “まむしのおかよ参上!”って

掛け声お願いします!」

「こらやめなさい、近所に聞こえるでしょ」


けれど心の奥では、かよも楽しんでいた。


第四章 YouTube復活

数日後。

「ねぇ、かよさん。せっかくだから、

これ修理動画にしませんか?」

「動画? またYouTubeに?」


「はい! でも今度は二人で。DIYと料理

と、古民家ライフ全部入れて」

「私、カメラ担当?」


「いえ、進行役です! おしゃべり得意で

しょ?」

「得意って……近所の立ち話と一緒に

するなぁ!」


撮影開始。

「どうもー! クメまりでーす!」

「そして助手の……って違うか!

お前かよでーす!」


「今日は古民家の雨漏り修理をしてい

きまーす!」

「でも私は高いとこ怖いから下から実

況しまーす!」


二人の掛け合いにコメント欄は大盛り上

がり。


「かよさん! 見てください、登録者が一

晩で千人増えてます!」

「ちょっと待って、それって……有名人

ってこと!?」

「そうです、そうです!」


「困ったわねぇ……私、スーパー行けなく

なるじゃない」

「いやいや、古民家DIYチャンネルでスー

パー出禁にはなりませんから!」


エピローグ

「はぁ……でも、本当にありがとうござい

ます。私、また夢を見たいです」


「いいじゃない。夢くらい見放題よ」

「じゃあ次は、畑動画とか旅行動画も…」

「おぉ、それいいわね! じゃあ私は“野菜

担当”!」

「私は“収穫係”!」

「いやいや、それズルいでしょ!」


二人の掛け合いは、古民家を超えて全国に

笑いを届けていくのだった。


―おわり―


イラスト有(noteへリンク)

https://note.com/witty_gnu512/n/n7160869ac17e

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