AIと先輩の間に
矢木羽研(やきうけん)
本編
・最後の本屋:街で唯一の本屋が閉店。
・AIの恋人:孤独な老人がAIチャットボットに恋。
・タイムスリップの朝食:現代のサラリーマンが目覚めると江戸時代。
・宇宙エレベーターの切符:貧乏人が拾った切符で宇宙へ。
・鏡の裏側:少女が鏡に触れると裏世界へ。
・忘却の喫茶店:注文すると嫌な記憶を消せる店。
「どう? よさそうな話はある?」
「うーん……」
俺は文芸部の部長に渡された紙をペラペラとめくる。そこには小説のタイトルと、冒頭の展開のアイディアが箇条書されていた。
「だいたい、なんでわざわざ紙に印刷するんですか。タブレットがあるのに」
「画面越しに見るのと紙で見るのとでは脳に与える影響が違うって言うじゃない」
「確かにそうですけど……」
改めてリストを見る。現代劇、SF、ファンタジー、なんでもありといった具合だ。
「さすがAIよね、一瞬でこれだけ出せるんだもん」
「ですね。でもアイディアをAIに頼るのって邪道じゃないですか?」
「そういうセリフは自力でネタ出しできるようになってから言いなさいよ」
返す言葉もない。もともと文芸部に入ったのは、何らかの部活動が義務付けられている中で「カネもかからず楽そうだから」という極めて消極的な理由なのだ。おかげで半年経っても一作品すらまともに完結させていない。
「候補はまだまだあるわよ」
「はいはい……」
リストをめくりながら俺は生返事をする。そして改めて気づいたのだ。AIにネタ出ししてもらうのではなく、この先輩と会話しながら新作を考えるのが楽しかったのだと。
「せめて今年中には形にしなさいよ」
「わかってますってば」
とはいえ、すべては俺の不甲斐なさが一番悪いのはわかっている。ちくしょう、超名作を書いて見返してやるからな!
AIと先輩の間に 矢木羽研(やきうけん) @yakiuken
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