原発不明癌と幸福ドラッグ

母を虚偽証言で失職させた元MR・古賀への復讐と、母の“金（Au）ナノ粒子”研究を見て育った女子高生・矢野愛子。バレンタイン前夜、愛子は“恋の化学式”と称したチョコに仕込んだ高純度ヘロインで古賀に報いを与える。
一方、天才肌の同級生・池端は、古賀が密かに所持していた医療用鎮痛薬フェンタニルに着目し、Auナノで“幸福を売る薬（Au-F）”を完成させようと暴走。実験に巻き込まれた友人・かな恵が死亡し、二人は“罪と科学”の片道切符に乗る。
「人を救う金」と「世界を支配する金」、恋と中毒、正義と復讐。炎上する実験室で差し出された手を、愛子は握らなかった。
五年後、原発不明癌（CUP）の宣告を受けた愛子に届く、金色のインクで記された「Au-F」の招待状。
幸福は化学反応だ——だが、起爆の閾値は、いつだってゼロに近い。