閉塞不変

白川津 中々

◾️

 朝起きて、冷凍していた白米を温める間に卵とベーコンを焼き、納豆を混ぜる。


 いつもの朝食、飽きる飽きない以前のルーティン。温まった白米を丼に盛り、納豆、ベーコン、目玉焼きの順に乗せる。皿を分けないのは面倒だからだ。箸ではなくスプーンを使うのも同じ理由である。食べ終えたら丼とフライパンを洗い、歯と顔を洗ってから着替え、部屋を出る。道中、我が物顔で往来を渡る野良猫を見送り駅へ。アナウンスもなく五分遅れた電車に乗って、会社最寄りに到着したらコンビニでコーヒーと水を買い早めに出社。仕事をして、昼食にうどんを食べて、また仕事をして、退勤。駅へ行き、電車に乗って、降りて、寝こけている野良猫を横目に帰宅し、シャワーを浴びて、ウィスキーを混ぜたビールと、豆腐、鶏肉、缶詰を平らげ、歯を磨いて寝る。そして朝起きて、冷凍していた白米を温める間に卵とベーコンを焼き、納豆を混ぜる。


 同じだ。ずっと同じ。五年、十年前と、まったく同じ生活をしている。なぜ気が狂う事なく生きているのだろう。毎日毎日を版画で押したように繰り返し、歳だけ重ねているというのに。もしかしてもう狂っているのか、しかしそれを証明する手段も意味もない。狂っているからといってなんだというのだ。世界が変わるのか、俺が変わるのか。変わらない、何も変わらないに決まっている。変わらないのだから、俺は毎日決まった行動をするしかない。変わりたいとも思わない。だから、いつものように、今日も一緒くたになった朝食を摂る。変わらないルーティン。味は、しない。

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