たった2ヶ月の春

@aruunoshou

たった2ヶ月の春

「あずさ、彼氏と別れたらしいよ」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「なあ~明日のテストだるくね?」

「わかる。一日に全部終わらせてほしいよなーー」


 中学校の通学路で幼馴染の清水がいつもの薄い内容で話しかけてくる。薄いとは言ったものの正直テストは俺も面倒くさい。わざわざ五教科しかないのに二日に分けて行うのは馬鹿馬鹿しい。それに加えて今はなんといっても七月下旬。太陽は一年で一番イキイキしているため、猛烈な日光が身体中に降り注いで来る。これがあるので尚更めんどくさい。しかも俺は日光に弱いため、あまり日を浴びたくないのだ。あと俺は肌が白いほうが似合う。肌の白さはモテ度に直結する!!特に夏なんてイベントの宝庫だ。夏祭りから、花火、海水浴などたーーくさんのアクティビティがあるではないか。こんなの彼女を作って一緒にあまーーい青春をしたいに決まっている!!まあ中学に入ってから彼女は一度もできていないが気にしてはいない。俺のポテンシャルはこんなもんじゃない。今年だ!今年良ければすべてよしだ!!こんな事を頭で考えながら清水と雑談しているうちに正門の前についた。


「まーくんおはよーー!!」


 陽炎の奥から声が聞こえた。『まーくん』というのは俺の名前、マサキからとって『まーくん』とほぼ全員から呼ばれている。だがこの声の正体はすぐわかる。『森川あずさ』俺の想い人だ。バドミントン部に入部しており、クラスは別。中一、中二は交友度75くらいの時々話す程度の関係を築いていた。彼女と知り合ったのは小学校四年生のときだ。算数の問題を丁寧に教えてくれる彼女にどんどん惚れていった。想い歴で言えば四年は超えていることになる。そこそこ一途な部類だろう。だがしかし、彼女には「彼」がいる。『木村晴』身長が高くて女子には優しくて、髪の毛は幼気な印象を出す天然パーマがかかっている。このモテそうな木村はクラブチームでサッカーもやっているのだ。モテる要素しかない。それに比べて俺は身長は背伸びすれば彼女のつむじが見れるぐらいの雑魚、女子とは仲はいいが友達の1歩先に踏み出されない関係性、髪型は話を聞いていそうなマッシュ。唯一自身が少しある顔面も身長によってプラスがかき消される。多分彼女の恋愛の渦の中にすらいないのだろう。勝手に落胆しながらしっかり挨拶には挨拶を元気に返す。


「あずさ、おはよ!」


 テストが終わった。テスト期間が終わったので、三者面談期間を挟んですぐに夏休みに入る。今年こそは夏っぽいことができるのだろうか。いやもう受験生のため今年夏は長時間机と向き合わなければならない戦いが待っているのか。そう考えると今年の夏は憂鬱なものになりそうだ....。



 勝負の夏休みに入った。やはり夏は侮れない。まずとやかく言おうとする前にとことんあつすぎる!!!だてに毎年最高気温を更新しているだけある。暑さに頭をやられながらも外を死ぬ気で飛んでいるハエに目を釣られながら勉学に勤しんだ。塾と家を往復している中のある日、夏休み課題で行き詰まってしまった。こんなときに頼りになる人はごまんといる。いやごまんは言い過ぎだが選べるほどの人間関係は保持していた。そんな中でも俺が選んだのはオール五の天才少女でも、幼馴染でもなかった。彼氏がいる状況でも俺は彼女に連絡を取る。別に奪いたいわけでもない。いやでも奪えるものなら奪ってやりたい。中1の頃木村にはいじめの一歩手前のようなことをやられていた。そんなことをされた人間が許せるはずもない。中学生という狭いコミュニティのなかでハブるなどの行為は大人が思う以上に心に刻まれ続ける。それの仕返し、いや復讐で奪おうとしてる訳では無い。俺はそんなやつと付き合っている彼女を思うと心に雨雲よりも黒く、雷鳴より鋭い気持ちがずかずかと刺してくるような感覚に陥った。すごい辛い気分になる。勉強目的で俺はたったひとつのラインを送った。


「公民のレポートみせてもらってもいい?」

「いいよーー、今から写真取るからちょっとまってて」


 直ぐに返信が来た。既読が遅く、一日ほど空いてもおかしくないような人からものの数分で返信がきたのだ。俺の心は昇華してしまうのではないかと疑うほど浮き足立ち、心の底からいたく喜んだ。だが疑念は抱いた、彼氏という存在がいるのにもかかわらずなぜこんなに早く返信してきてくれるのだろうか。ただ暇だっただけ?それとも彼氏との通話中?いろいろなことを考えた。だがこのとき嬉しさに勝る感情はなくこのひとときだけでも雨雲が晴れ、お天道様が顔を見せてくれた。


「公民のノートある?」

「あるよ!みるー?」


 あずさからLINEが来た数日後、ラインの通知音がなった。どうせ清水とかそこらだろう、となんの期待もせずスマホを手に取り目を向けた。スマホの画面にピコンと表示されたのは驚きの相手からのラインだった。夏休み前からちょくちょくライン上で話していた。でも毎回俺が最初の話題をラインするところから始まっていた。それがついに相手から送られてくるようになったのだ。たとえ課題のヘルプだとしても素直に嬉しかった。相手が俺を頼ってくれたその事実がすごく嬉しかった。冗談交じりで進む何気ない会話。そこに恋愛の概念がないとしても話せているだけで良かった。会話途中に奢ってなどの会わないとできないイベントもふざけっぽく混ぜ合わせた。いや俺が送ったときまでは冗談が通じていたそう思っていた。


「なら図書館にいつ来れるの?」


 この文は一般的に見たらなんの変哲もない文章だろう。でも我々の中学校の人々が見たら必ず驚く!!図書館に行くというのは仲いい同性や異性で集まって、文化ホールと呼ばれるところで仲良く勉強するということなんだ。前まで男女仲がいいグループや圧倒的一軍!!が毎日のように入り浸っていた図書館グループというところへの招待状が届いてしまったのだ。しかも相手が誘ってくるという一番の謎状況。俺の脳はそれに対し、びびった。塾を言い訳にして明確な予定を立てなかったのだ。それからたった数日後だった...



「あずさ、彼氏と別れたらしいよ」



 衝撃的な情報が入ってきた。俺の恋愛協力者Aが教えてくれた。すごいタイムリーな話題だ。どう反応するべきか。口から出たのは『可哀想』などという薄っぺらく表面的な言葉だった。それに反して激しく脳が訴えていたのは喜怒哀楽の喜だった。心でも今がチャンスだ、それしか考えられなくなった。最低な野郎だ。その情報を教えてくれたAに感謝してもしきれないほどの感情を抱いた。だがしかしチャンスなのは頭でわかっている。それなのに倫理観なのかそれともプライドなのか、なんなのか分からない自分の心が隠し通している重いオモリが足かせとなり何もできずにいた。その時Aから続けてラインが来た。


「まって私いい考え思いついた!!別れた理由聞きながらあずさ癒やしてけばいいんじゃない!?」


 このラインが来て俺の心は軽くなった。なぜかというとAの考えに便乗することで重く動かなかった足かせを取ることにできた。ただの逃げの手段としてAを使えるのだ。しかもA曰くまだあずさのことが好きならば諦めないほうがいいらしい。性悪な木村があずさから離れていき、Aからは諦めるなと言われた。ここまで条件が整っていてラインをしにいかない漢がどこにいるのだろうか。希望しか満ち溢れてこない心と共に指をすべらせてラインを送信した。


「ねね、噂できたんだけど別れたの?」


 あくまでも別れたことをあまり知らないような設定でキャラを作った。


「別れたよー、誰から聞いたの?笑」


 やはり返信が早い、前まではこの返信速度でも叫ぶほどの喜びがあった。いや今もある。だがそんなことよりも大事なことがある。もっと話を聞きたい。確かめたい。今はただその一心だった。


「風の噂できいたー笑」


 少し笑いの要素を入れながらユーモア溢れるように話していきたい。さっきの返信の感じ元カレのことは吹っ切れていると考えて良いだろう。このあとあずさから漏れ出す色取り取りな不平不満を聞いた。例えばすごい束縛されていた話や木村は彼女っていうステータスが欲しいから彼女を作ったという話など。俺がその話を聞いてしてあげられたのは、あずさが話す内容すべてに共感。納得をし新たな共感ポイントを提示しながら話していった。確かに話を聞いてみると俺も木村のことが正真正銘のクズだ思ってしまった。そんな中俺も仕掛けたくなって仕掛けてしまった。


「今居ないの?好きな人」

「気になる人ならいるよ」


 最高のアンサーだ。断定はされていないが心の高ぶりが身に包み込んで体が熱くなる。


「それよりまーくんの好きな人が気になる!!」


 聞いたことのない拍動だった。シャトルランなんてもってのほかこれから死んでしまうのではないのかと心配してしまうほど心は一人走りをしていた。ふたりとも互いの好きな人が気になった。こんな提案を持ちかけてみた。


「お互いヒントを言い合わない?」

「・・・・・いいよ」


 許可が降りてしまった。一縷の望みに託してした提案がキーポイントとなった。驚きの成分が体を血液と共に巡り、体を震えさせた。武者震いみたいなものだろう。

このあとお互いヒントを言い合った。好きな人のクラスからはじまって、部活が運動部か否か、部活は外か中かなどいいあった。お互い限界ギリギリまで言い合った、お互いほぼ答えは出ているだが認めるのに心の用意ができていなかった。こんなにも眼の前に金銀財宝があるのに手を伸ばせずにいた。その時しびれを切らしたあずさがいった。


「まああずさ興味ない人とラインしないけどねー」


 体に電流が走るなどという普通の表現では表しきれないほどの気持ちがながれこんできた。本当にその瞬間に心から感じたことはただひとつ、本当によかった。これまでの行いや想いがすべて報われ肯定された気分になった。顔からは笑みが溢れ落ち、ほかほかとした空気の中母親に抱き着かれているかのような安心があった。このラインの結末は綺麗にまとまった。深夜にもかかわらず二人で驚きながらこれが現実なのかを確かめ合い、二人の間で新たな恋の花が咲き乱れ始めたのが感じ取れた。満開の俺の春が始まった。



あれから1週間ほどたった。まだリアルだと信じれない時があるが、これは現実だ。頬をつねっても赤くなる。痛くは無い、嬉しさの方が先行する。しかしカップルぽいことが出来たかと言われれば出来ていない。受験生は夏期講習が夏休みの予定を占領しているため、遊ぶ時間が無いのだ。いや今思うとこんなのはただの言い訳に過ぎないのだろう。遊ぶ時間が無い分、明日のあずさの誕生日プレゼント探しに本気を出していた。誕生日プレゼントについてAに聞いたり、少々屈辱的だが親や姉にもアドバイスを聞いた。こんなちっぽけな屈辱を受けるだけで彼女が喜ぶ姿を見れるなら大成功だ。最初はハンドクリームでも渡すかと考えていたが、夏でもあるし、何よりAがおすすめしてくれたヘアミストを渡してみた。


「これ!誕生日プレゼントです!!」

「え!!おっきいね!めっちゃ嬉しい!ありがとう〜!」


彼女が喜んでくれた。誕生日プレゼント作戦成功ということで良いだろう。誕プレを渡した何日か後にもラインで「ほんとにマジで最高です」とのお言葉を頂戴したため俺の気分は最高潮に達していた。



夏期講習を受けて疲れが足先まで伝わっていた日の夜、親友の中本と一緒に帰っていた。こいつは別の塾だが終わる時間と方向が一緒のためよく帰っていたのだ。中本とゲームの話をしている途中電灯すらついてない一本道に、見覚えのある人影がみえた。


「あれ、森川じゃね?」

「たぶんそうじゃね」


ああ、その通り。やっぱあずさだ。頭の奥底までその後ろ姿は焼き付けられ、すごく好きな影だ。今にでも話しかけに行きたい。それでもこの中本には付き合ってることを言ってない。というか中本だけではなく、全ての男子に付き合ってることは言ってなかった。仲の良い2人の女子にしかおれは言っていなかった。心では色んな人に自慢して、堂々と付き合いたかった。いややればいいだろう、そう思うだろう。そう出来ないことには理由があった。まずあずさには多くの元彼がいた。中学三年までで6人は最低でもいたらしい。この元彼というのがすごく迷惑だった。まずは直近の元彼、木村晴。こいつは中一での出来事から互いに嫌いあっていた。しかも木村と別れたすぐに俺と付き合ったため奪われたと勘違いされている。あともう1人めんどくさい存在がいる。俺の塾の友達、「滝下景」だ。滝下は中2の頃あずさと学年集会が開かれるほどのいざこざを起こして別れているためこいつに知られたら色々とめんどくさい。塾帰り二人で帰れない理由もこいつが同塾だからだ。プラスでまあまあ仲が良いためそれも含めてめんどくさい。しかも元彼達はだいたい長続きしていない為あずさと付き合うというは元彼が増えれば増えるほど縛りが増え、難易度が上昇していくのだ。これらの背景もあり、俺は自転車のペダルをハムスターが回し車を回すように漕いであずさを素通りした。



夏休みが終わって夏期講習から解放された。俺は今から初めての経験をする。今日は付き合ってから1ヶ月目、俗に言う「記念日」というものだ。初めての彼女で少々課題はあるが、難なく1ヶ月まで持っていけたことは自分のことを褒めていいだろう。俺とあずさは記念日を月ごと壮大に祝う主義の人間では無いためLINEで「1ヶ月ありがとー」って言うほどの記念日になってしまうが、それでも長い間好きだった彼女と1ヶ月は付き合えた証が記録に残ったことがとても嬉しいことだった。しかし1ヶ月経っても何もしていないのは流石にチキンすぎる。そう思った俺はあずさにこう聞いてみた。


「ねね、そろそろ遊びに行ってみない?」

「え、わかる。そろそろ行きたいよね!」


相手も同じことを考えていたらしい。2人きりで遊びに行く=デートってことだ。それを肯定してくれた事実だけでやはり俺の心臓は激しく脈打っているのがわかった。単純な男だ。こんな単純な思考であずさと接することがどれほど大事な事か、俺は分かっていなかった。



時間はどんどん経っていった。遊びの約束は具体的な日程までは決まっていないが、どこに行くか、どのように遊ぶかなどは、大まかに話し合っていた。受験生は忙しい。塾も別のところに通っているのでなおさら日にちが合わない。まあこれもしょうがない。受験が終われば沢山遊べる。そこで思い出を作ればいい。だたその時はそう思っていた。



何もしなければ時間は軽く過ぎ去っていく。もう2ヶ月だ。学生の恋愛は時の流れが早い。何も出来ずに2ヶ月経ってしまったのはあずさにとても申し訳ない。でももうカレンダーをみたら10月。あと4ヶ月乗り切れば受験が終わり晴れて遊び放題の長い休暇がとれる。そこまでは遊ぶこともすくなってしまってもしょうがない。色々考えても今日は2ヶ月記念日。LINEは送っといたほうが絶対にいい。


「2ヶ月間ありがとーー」


「こちらこそありがとーー」

「こんなときで申し訳ないんだけど、あずさ、まーくんと『別れたい』と思っている」


は?...................

頭がなにも考えられやしない。ゲームしながら送ったLINE。2ヶ月を素直に喜び、簡単に終わると思ってた。友達と電話しながらやっていたゲームのキャラクターは何も動かない。いや手すら動かない。頭の中の全ての細胞が麻痺していた。麻痺しながらもなぜこうなったのか。何が悪かったのか。死にきった脳で考えた。しかし何も思いつかない。いやそんなことより目の前に広がる真っ暗な光の見えない1本道を進むことを余儀なくされているこの世界を受け入れられていない。とりあえず相手には少し待ってもらい、自分の気持ちを話した。でもあずさはやさしい。いい所しか見えてこない。俺の話をちゃんと聞いてくれて、ちゃんと会話してくれる。俺のわがままに対しても、しっかり回答してくれた。「友達に戻りたい。」この言葉どれだけ人を辛くさせるものなのか、この言葉が漫画の中のものだけではなく現実にあることを俺は思い知った。何も出来なかった。ほんとに申し訳なさと、後悔が何重にもなり、俺に覆いかかってきた。ベッドの上で滲み出るように目から小粒の涙が溢れてきた。


「いいよ。2ヶ月だったけど楽しかった。」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



あのことから数日後、親友の中本と一緒に帰っていた。清水は野球部の活動があるため今日は一緒に帰れてない。少し悲しいがまあいつもあまり帰れていないからしょうがない。二人でゲームの話をして、話が途切れた。毎日のように話してるから会話の質はどんどん落ちていくな。そんなことを考えていた中、中本が口を開く。


「そういえばまーくん、別れてからどう気分?笑笑」


何を言っているんだこいつは...........?

まず何故付き合っていることを知っている?誰にも付き合ってることは言っていないはず。俺らの恋愛は清水、恋愛協力者Aを含め俺が教えたのはたったの3人だ。なんでこいつは知っている?どこから聞いた、もしかしてあずさがばらした?いやそんなことしてもメリットも何も無い。俺の頭の中は急ピッチで思考を繰り返したため、直近で二回目の麻痺状態になった。何も考えられない。いや何も考えたくないが正しい。とりあえずこいつには全てシラを切った。


「え?まじでなんのこと???」


わからないふりおそらくこれが一番正解だ。相手が何を考えているか分からない。中本は何がしたい?まだ確定していない情報を確定させるために鎌をかけているのか?どう考えても答えはでない。相手の問いにシラを切ることしか出来なかった。そしたら中本が.......


「はあーつまんな。せっかく録音してたのになんか話せよお前笑笑」


「は?録音?なんのために??」


「絶対おもろいもの録れると思って笑笑笑」


こいつは頭がおかしいのか??録音をしていた?ただ面白いという感情のために?やはりなぜこいつは別れたことを知っているのだ...?問い詰める権利が俺にある。


「なんでお前別れたこと知ってんだよ。てかなんで付き合ってること知ってる。誰とか知ってんの」


「え?あぁ、あずさでしょ付き合ってたの。知ってるに決まってんじゃん噂なってたし笑笑笑」


「噂になってるなら知ってることは納得できたわ。でもなんで別れたこととか知ってんだよ」


「えーーいやそれは秘密だわ笑笑笑笑笑」


プルルルル、プルルルル、プルルルル、電話が鳴った。中本のスマホからだ。


「もしもし中本ーー?どうまーくんの反応???笑笑」


あぁ声でわかる。清水ではないことに安堵したが、少し面白い相手だ。この声の主は河田だ。河田は俺の部活のペアでまあまあ仲はいい。それよりもこいつはあずさと特段仲がいい。俺らが付き合う前までは夜まで話をしていたらしい。それほどの仲の良さの関係性を持っている。それが一番厄介だ。電話の文言からしてあの件はこいつも知っているのだろう。なぜこいつが知っている?あずさから聞いた?河田が関わってきたということはおそらくそう言うことだろう。


「まーくん全然認めてくれなくてやっと今認めてくれたわ笑笑」


俺はスマホを貸してもらい河田に聞いた。


「なんでお前らは別れたこと知ってんだよ?」


「いや、知るも知らないも俺らがまーくんとあずさ別れさせたし笑笑笑」


ん?別れさせた...?別れさせたも何も、あずさは自分から別れを切り出したはず、、、


「いや、え、どゆこと??」


「おまえが別れ話する数日前、あずさ俺に相談してきたんだよね笑笑。」

「それで付き合ってる事の確証得られて、中本一緒に協力して別れさせた笑笑笑。」


「それも結構衝撃なんだけど、なんで別れさせようなんてしたんだよ。」


「だってお前あずさと釣り合ってねぇもん笑笑笑笑笑。」


釣り合ってない????なんだよその理由、ただの嫉妬じゃねぇか........


「中本、お前はなんで協力した?具体的には何をした?」


「僕はなんかお前が付き合ってんのむかついたんだよね」


「むかついた.....???なんだよそのクソみたいな理由。だとしてもそれだけじゃ別れさせるなんて無理なはず。なにをした?」


「僕はほぼしてねえよ笑、やったの河田8割、俺2割とかだわ。」


「そんな聞いてねえよ。早く言えよ、具体的に何をした?」


「あんま怒んなって笑笑。僕はただお前とのLINEの会話とか全部送っただけ。まあそこに男同士の会話とかあったかもだけど笑笑。まあ俺は失うものないし別にいいや笑笑。」


「河田、お前は?」


「俺は相談受けた時にお前の悪いところ全部言っただけ、まあその中に勘違いもあるかもだけど人間だか間違えるよね笑」


あぁ、こいつら心の底からのカスだ。なんで俺はこんなやつらと友達になったんだろう。これが起こるのが別れる前だったらどれだけ良かったことか。でももう終わっている。ただの後出しジャンケンをされただけ。俺だって、こんなことで全ての信用を無くしたくはない。でも簡単に人は信じれなくなるし、心に残る傷はより深く抉るものになるだろう。こんなことで終わるのか俺の中学の恋愛は。


俺のたった2ヶ月の春が花を吹き散らして色を残さず枯れ木のまま去っていった。

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