自由すぎるハナコさん
苑崎頁
学生寮に出るハナコさんは、自由でどこか変です
私の名前は狭間唯です。
今年から高校生になりました。
十五歳になります。
親に無理言って、都内の私立高校『聖ミカエル女学院』に入学しました。
受験勉強も頑張りましたが、なんだか学費がとても高いそうです。
それでも、何がなんでも私はこの学校に入学したかったのです!
それはなぜかというと、この学校出るらしいのです…。
出るって何がって?
それはお化けです!
この学校、七不思議があって超有名なのです!
ネットで検索しても出てきます。
私は怖い話とか大好きで、話だけでは飽き足らず、実際にお化けと会ってみたいと常日頃思っているのです!
そこで必ず体験できる七不思議があるという『聖ミカエル女学院』に入学したのです。
まず、学校の門をくぐるとマリア像があります。
その像はなんと夜になると動き出すというのです!
まさかと思うかもですが、夜に動いているマリア像を見たという人は沢山います。
それからはオーソドックスな七不思議で、
音楽室から夜な夜なピアノの音が聞こえるとか、
ベートーベンの絵の目が動くとか…。
理科室の骨の標本がカタカタ動くとか…。
階段を数えて登ると、いつの間にか一段増えているとか…。
その階段の踊り場にある鏡を午前十二時に見ると後ろにいないはずの女生徒が映っているとか…。
そして、一番有名な七不思議は学生寮にでるというハナコさんです。
普通、学校の怪談のハナコさんはトイレにいる小学生ぽい女の子ですが…。
この学院に出るハナコさんは女子高生の制服を着た高校生ぽい女の子です。
そのハナコさんは学生寮ならどこでも出るらしく、トイレだけに出るわけではありません。
学生寮に住んでいた生徒全員見たらしく、
怖がって生徒全員、寮を出ていったということでした。
その寮に、私は今日から入寮して住むことになったのです!
私の実家はS県の北側にあり、電車だと都内に二時間もかかるから、通学がたいへんだと親に言って寮に入れることになったのです。
『聖ミカエル女学院』は近代的で綺麗な校舎で過ごしやすいのですが、学生寮は木造ですごい古めかしいのでした。
外壁には蔦が幾重にも絡まっていて、不気味さを醸し出しています…。
なるほど、確かにこれはハナコさんが出そうだなと思いました。
私はドキドキして、寮のドアを開けて中に入りました。
寮生は誰もいないと聞いていたのですが、
そもそも私は何号室に住むのかも知りませんでした。
どうしようかな?と思っていると、背後から「ちょっと!」と声がしました。
私は突然のことだったので、ビクッ!となってしまいました。
「あなた何年生?寮になんの用?」
背後を見ると制服を着た女生徒が険しい顔をして立っていました。
てっきり寮生は全員出ていったと聞いていたので、私はすごいびっくりしてしまったのです。
「一年生の狭間唯です。今日から寮に入ることになりました」
私はどうにか答えることが出来ました。
実は私はホラー好きなのですが、すごい怖がりなのです。
怖いのが楽しいというか、怖いもの見たさというか…。
ちょっと驚かされたりしても、びっくりしてしまうのです。
「私は生徒だけど寮母もしている幾原理恵よ、いきなりあなたが入ってくるからびっくりしたわ」
私は、よろしくお願いしますと答えた。
それから私が今日から住むことになる部屋はどこですか?と、幾原さんに聞いてみた。
「知らないわ。そもそも新しい寮生が来るとも聞いてない」
そんな…。私はどうしたらいいか、わからなくなり泣きそうになりました。
「知ってるかもだけど、お化け騒ぎでここの寮生は誰もいないの。好きな部屋に行っていいわよ」
幾原さんはめんどくさそうにそう言う。
私はそのお化け騒ぎのことを聞きたくて、振り返って幾原さんの方を見たのだけれど、そこにはもう誰もいないのでした。
私はしょうがないので部屋を探しにテクテクと歩き出したのです。
寮はどうやら三階建てで、廊下があり、そこに面して部屋のドアがある構造。
どうせならと、私は三階まで階段で上がっていき、三階の角部屋のドアを開けようとしたのです。
もしかしたら、また誰かいたら大変だと思い、ドアをノックしました。
トントン…。何回かノックしましたが返答がないので、誰もいないようです。
私は意を決して、ドアを開けました。
部屋の中も木造で木の壁に床も木の床でした。
そこにベッドがあって、反対側には勉強机があります。
壁には備え付けのクローゼットもあります。
部屋も作りは古いですが、寮母の幾原さんが掃除しているのか、とても綺麗でした。
良かった。汚い部屋だと掃除しなければかな?と思っていたのです。
私は疲れてしまったので、ベッドに腰かけました。
入学してからそのまま来たので、制服のままです。
私はバックにしまってある部屋着兼寝巻きのスエットに着替えることにしました。
まず制服を脱ぎます。
ふと気づいたのですが、部屋に大きな姿見がありました。
制服を脱いだので下着姿の私が映っています。
姿見なんてあったかな?
私は不思議に思いました。
すると一瞬だけど私の背後をスっと人影が通りすぎた感じが姿見の鏡に映ったのです。
私はハナコさんかな!?とびっくりするようでドキドキした気持ちで後ろを振り返ったのですが、誰もいませんでした。
私がハナコさんに期待しすぎたので、気のせいでそんな感じに見えたのでしょう。
私は安心したようなガッカリしたような気持ちで、スエットを穿きました。
グレーの何にもオシャレさも何もないスエットですが、しょうがないですよね。
そして私はベッドに横になりました。
入学して寮に入って、今日は疲れました。
そのまま私は寝てしまいました…。
私はいつの間にか、夢を見ているようです。
これは夢だろう?と思っている私がいます。
夢の中でこれは夢だとわかっている時がありますよね。この夢はそんな感じです。
夢の中で私は寮の私の部屋にいます。
すると「ふふふ」と女の子が笑っている声がしました。
「ねぇ、一緒にあそぼ?」
女の子がそう言っています。
でも声はすれども姿は見えません。
ハナコさんなの?どこにいるの?
私は夢の中で問いかけますが、うまく声になりません。
「ねぇ、一緒にあそぼ?」
また、女の子の声がします。
私はどこなの?と問い続けます。
夢の中なのでうまくいかず、もどかしいです。
夢はそこで終わり、私はハッとして目覚めました。
部屋の中は真っ暗でした。
何時間寝ていたかもわかりません。
スマホで時間を確認しようと腕を動かそうとしましたが、うまく動きません。
これは金縛り!?
さすがに私は怖くなってきました。
「ふふふ」
夢と同じように女の子の笑い声が聞こえます。
もしかしたら、未だ夢の中にいるのかもしれない…。私はそう思うことにします。
「違うよ、夢の中じゃないよ」
女の子の声がはっきり聞こえます。
ハナコさんなの?どこなの?
口も動かないので頭の中で問いかけます。
「ここだよ!」
姿見のそばにいつの間にか女の子が立っていました。
長い黒髪が邪魔でどんな顔か見えません。
制服の上に黄色なカーディガンを羽織ってます。
「一緒にあそぼ?」
女の子はそう言うと少しずつ私に近づいてきます。
女の子は歩くというより、すぅーと滑るように近づいてくるのです。
女の子の身体は青白く透き通っています。
やはり、ハナコさんはお化けなのです。
「一緒にあそぼうよー」
ベッドの上で身動きできない私の顔に、ハナコさんはぐっと顔を近づけて言います。
長い髪で見えなかったハナコさんの顔が、見えそうになったけど、私は気絶してしまいました。
翌朝、私は目覚めました。
やっぱりあれは悪い夢だったんだ…。
ハナコさんの事ばかり考えてるいたので、
ハナコさんが夢に出てきてしまうのです。
「違うよ、私いるよ」
また女の子の声がします。
「一緒にあそぼ?」
姿見の鏡の前に女の子が立っています。
「あそぼって言ってるのに何で寝ちゃうの?」
女の子、ハナコさんは恨めしそうにこちらを睨んできてます。
朝日が燦燦と窓から入っているのに、ハナコさんの身体は透き通っていますが、はっきり見えてます。
私はあまりの出来事に腰が抜けてしまって、昨晩みたいに金縛りではないのですが、ベッドの上で身動きできなくなりました。
「私、ハナコ。遊んでくれないとイヤ」
ハナコさんは恨めしそうというか、ほっぺを膨らまして拗ねているようでした。
そのお顔は普通な女子高生の少女な顔で、
透き通っていますが可愛いらしかったです。
そのお顔を見たら少し恐怖がなくなりました。
「遊んでくれたら何でも願いを叶えてあげる」
ハナコさんがそう言うので、私は願いを考えてみました。
頭に浮かんだのはお金がほしい!
百万円がほしいという願いでした。
「お金無理!ハナコお金ない」
じゃぁ、頭良くなりたい!
テストでいい点取りたい!
「そういうの無理!勉強して!」
それじゃ脚がはやくなりたい!
運動会で一番になりたい!
「それも無理!身体鍛えて!」
ハナコさんはムッとしてます。
というか、私の考えはハナコさんに筒抜けのようです。
何でも願いを叶えるって言ったじゃない。
私もなんだかムッとしてしまいます。
私は他に願いがあるかな?と思いました。
私は中学の時に友達がいませんでした。
ホラー好きなのでクラスメイトにいつも怖い話しばかりしていて、いつしかクラスメイトたちは私のことを無視するようになりました。
だから私には友達がいません。
「だったらハナコさん友達になってよ」
私は今度は声に出していいました。
「いいよ!ハナコずっと友達!」
ハナコさんが可愛い笑顔で言います。
私もうれしくなり、笑顔になりました。
でもそろそろ学校に行かないといけません。
「ハナコさんごめん。学校に行かないと」
それを聞くとハナコさんはまた頬を膨らましてムッとしてしまいました。
「授業終わったらすぐ帰ってくるから」
私はスエットを脱いで制服に着替えようとしました。
「唯の身体きれい…」
ハナコさんはどうやら私の下着姿に見蕩れているご様子。
私の身体はまだ成長過程で胸もおしりも大きくなく、細い身体でした。
ぜんぜん綺麗ではないのです。
「そんなことないよ」
ハナコさんは私の考えを否定しました。
私はありがとうと言って、制服に着替えます。
「放課後まで待っててね!」
私はそう言って寮の部屋を後にしました。
それから退屈な授業が何時間もあり、それも終わって、やっと放課後になりました。
私は急いで寮に向かいました。
寮について三階に行ってドアを開けます。
そこにはやはりムッとした表情のハナコさんがいました。
待っててくれたんだ。良かった。
「おそい…」
ハナコさんは頬を膨らませて言います。
私はごめんごめんと言ってベッドに腰掛けます。
でも制服からスエットに着替えようと思います。
立ち上がって着替えようと制服を脱ぐと、
またハナコさんがジッと私を見てきます。
「唯、きれいだよ」
ハナコさんは真面目な顔をして、そんなことを言い出します。
私は恥ずかしくなり、すぐにスエットに着替えました。
ハナコさんは私のこと好きなのでしょうか?
「うん好きだよ…」
私はもっと恥ずかしくなり、顔が真っ赤に
なってしまいます。
昨晩出会ったばかりのお化けさんに、いきなり告白されてドキドキします。
ハナコさんは私のそばまで、またスっーとやってきて私の顔をジッと見つめてきます。
そして、ハナコさんは目を瞑って唇を突き出してきました。
え!?これってキスしてってこと!?
ムリムリ!私キスしたことないの!
ハナコさんはそのまま私の唇に自分の唇をぐっと近づけてきます。
唇と唇がくっつく前にお互いのおでこがぶつかってしまい、キスは不発に終わりました。
おでこがぶつかるというか、ハナコさんのおでこは透明ですり抜けてしまい、もしあのままキスしてたら唇もすり抜けてしまうのかな?と私は不思議だと思いました。
「もう!下手くそ!」
ハナコさんはぷんぷんと怒っています。
でも、下手くそなのはハナコさんのほうでは?と思ってしまう私。
ハナコさんは怒っていましたが、なんだかおかしくなって、あははと笑いだしました。
私もおかしくなり、笑ってしまいました。
ひとしきり笑いあったあと、私はごはんをどうしようと思いました。
一応、ハナコさんになにか食べる?と聞いてみると、霊だからいらないと言われました。
そりゃそうだよねと、お化けだものね。
と私は妙に納得しました。
私はコンビニで何か買ってくるね。と言い残し、部屋を出ていきました。
ハナコさんは寂しそうにしております。
すぐ戻ってくるから!と私は大声でハナコさんに言いました。
私は駆け足で寮を出て、近くのコンビニに向かいました。
せっかくの寮なのに、ごはんもなにも出ないの変じゃない?と思いましたが、致し方ありません。
コンビニでパンとコーヒー牛乳を買ってすぐ飛び出ました。
ハナコさんが待っていると思うと、居ても立ってもいられないのです。
私は飛ぶように早く寮に帰ってきました。
私もハナコさんのこと好きなのかな?
これって恋なの?
恋ってドキドキして身が軽くなった気がする…。
私はそんな気がして、だいぶ早く帰ってきました。
寮の私のお部屋に着きました。
ハナコさんは私の部屋のベッドに腰掛けていました。
ハナコさんは私の姿を見ると、ハッとした顔になり、泣き笑いみたいな表情になっています。
そんな悲しそうな顔しなくていいのに。
約束通り、はやく帰ってきたでしょ?
「おかえりなさい…」
「ただいま!ハナコさん」
私たちは挨拶を交わしました。
私はなぜか買ってきたパンとコーヒー牛乳を無くしてしまってました。
あまりに急いでいたので、どこかに置いてきてしまったのでしょうか?
まぁ、いいか、ハナコさんへの想いで胸がいっぱいで空腹もあまりありません。
「ハナコさん、お風呂入ろっか?」
私はハナコさんに聞いてみました。
どうせ、お化けだから入らないと言われるだろうと思っていたのです。
「いいよ。一緒に入ろう…」
まさかの一緒に入ろう発言!
私はびっくりしてしまいました。
私とハナコさんが一緒にお風呂。
女の子同士だけど、好きな人と一緒のお風呂恥ずかしい!
お風呂って裸で入るんだよね…?
当たり前のことがめちゃくちゃ恥ずかしいのです…。
そもそもお風呂はどこにあるの?とハナコさんに聞いてみると、一階に共同大浴場があると教えてくれました。
私たちは手を握りあって、共同大浴場?に向かいました。
私はすごくハナコさんの存在が近くなった気がしました。
ハナコさんと相思相愛になったからか、ハナコさんの手を握れたからです。
一階の奥に共同大浴場はありました。
「前はここの寮いっぱいに生徒がいて、みんなでお風呂に入っていたんだ」
ハナコさんは昔を懐かしむように言いました。
多分、ハナコさんが生前の話でしょう。
そもそもハナコさんは何故亡くなってしまったのでしょうか?
そんな私の疑問もハナコさんは露知らず、
お風呂の脱衣場で服を脱いでいます。
カーディガンも制服も脱いで、下着になっていました。
ピンクのブラにパンツ…。
可愛すぎる下着を見てしまい、女の私でさえ恥ずかしくなってしまいます。
しかも、ハナコさんのお胸はすごい大きくて胸の谷間がえらいことになっていました。
制服を脱いだからか、ハナコさんの桃みたいないい匂いもいっぱい漂ってきます。
私は頭がクラクラしてしまいます。
私も服を脱がないと思い、スエットを脱ぎ始めました。
スエットもダサいし、下着もグレーのスポブラなのでめちゃくちゃ恥ずかしいです。
しかも私は胸もおしりも小さい。
恥ずかしくて穴に入りたいぐらいです。
ハナコさんは下着も脱いでしまって、生まれたままの姿でした。
とっても大きな胸とまんまるなおしり。
肌も透き通るぐらい綺麗…。
ぐらいじゃなくて透き通っているのでした。
脱衣場の明かりが、ハナコさんの身体を通して光っていて、妖しい魅力いっぱいです。
ハナコさんは私が恥ずかしいのを、知ってか知らないかわからないですが、先にお風呂に入って行ってしまいました。
私は慌てて、ハナコさんの後を追いかけていきます。
共同大浴場はその名の通り、ものすごく大きなお風呂でした。
修学旅行で行った旅館の浴場を少しだけ小さくしたぐらいと言えばわかるかもです。
小さいと言っても、生徒が三十人ぐらい入っても大丈夫なぐらいの大きさです。
こんなに大きなお風呂にハナコさんと二人きりで入れるのは貸し切りみたいで、私はすごく嬉しくなってしまいました。
ハナコさんはすぐお湯に入らず、掛け湯をして頭を洗って身体を洗いました。
私もハナコさんに習って、先に掛け湯をしたり頭を洗い、身体も洗いました。
全身洗って、さっぱりして、ようやくお風呂に入れます。
ハナコさんの隣の湯船に入ります。
やっぱりこんな大きなお風呂に二人で入るのは嬉しすぎます。
「さっき私がなんで亡くなったか、気にしてたよね?」
ハナコさんは突然私にそう問いかけてきました。
私の考えはハナコさんに筒抜けなのです。
「私もこの寮生だったの。さっきの唯みたいにある夜コンビニに行ってしまって、その帰りに通り魔にいきなり刺されて、その後私の遺体は火で焼かれたわ」
そんなショッキングな話を聞いて、私は唖然として、ただハナコさんの顔を見つめる事しか出来なくなっていました。
こんな可愛らしいハナコさんの身体を刺して殺してしまう犯人に対して、私はだんだん怒りが湧いてきます。
私が怒っても何も変わらない。
悲しさとやるせなさで私の頭はいっぱいになった。そして涙があふれてきます。
「唯が泣いてどうするんだよ?」
ハナコさんは優しげに笑って、私の顔をじっと見つめてきました。
「でも私はそんな唯が大好きだ」
生真面目な顔をして、ハナコさんはまた瞳を閉じて、私の方に顔を近づけてきました。
こんな真面目な話してたのに、またキスをしようとするハナコさんの気持ちがわかりません。
それに私はキスはじめてなのに、なんで私がハナコさんにキスしなければならないの!
ハナコさんの方からキスして!
私の情緒はめちゃくちゃになって、ワケわからないことをハナコさんにお願いしました。
私のお願いはハナコさんからキスをしてもらうこと?になってしまいました?
ハナコさんはそれもそうかと、ふふふと笑い、私の肩をぐっとつかみ、あっという間に私の唇にハナコさんの唇を合わせました。
ハナコさんの唇は、甘く切なくて桃みたいな味がしました。
吐息もすごい甘い香りで、頭がクラクラしてきました。
ハナコさんはキスだけでなく、裸で私の身体をギュっと抱きしめてきました。
ハナコさんの身体はわたあめみたいにフワフワで、身体自体も甘い香りでいっぱいです。
私はこのときが永遠に続けばいいと思いました。
ハナコさんは、そろそろ出ようかと言って湯船から出てしまったのです。
私は色々ありすぎて、なかなか湯船から出れなかったのです…。
私はお風呂から出てくることができました。
寮の私の部屋に行くと、制服に着替えたハナコさんが、ベッドに腰掛けて待っていました。
「それじゃ寝るか」
ハナコさんはそう言うと、私のベッドで寝始めました。
制服のまま寝てしまうし、どこまでも自由な人だなぁと思いました。
それからは、私は朝には学校に行き、放課後は急いで寮にもどる日々を送りました。
私は学校では誰とも仲良くなれずに、ただ教室にいるだけの空気のような存在でした。
誰とも話さず一人で放課後まで過ごす。
でも、放課後になり授業が終われば、寮でハナコさんが待っていてくれる。
ただそれだけが私の支えになっています。
寮に帰って、ハナコさんといっぱいお話して、お風呂に一緒に入って、一緒のベッドに眠る。
ハナコさんが一緒にいてくれるだけで、私は心底幸せだったのです。
そんな毎日を送っていて、一ヶ月半以上が過ぎました。
その日の夜も、ハナコさんと一緒にベッドで横になっていました。
「唯の本当の願いを叶える時がきたね」
ハナコさんはまた泣き笑いのような悲しい顔をして私の方をじっと見つめました。
どういうこと?
私の本当の願い?
私の願いは、ハナコさんと一緒にいることだけれど…。
「四十九日を迎えることができたよ」
ハナコさんはそう言いました。
私は何のことか、さっぱりわかりませんでした。
もしかしたら、ハナコさんが四十九日を迎えるのかな?と思いました。
「違うよ、唯、君の四十九日だよ」
え!私の!どういうこと?
「私達が初めて会った時の夜、唯はコンビニに行ったよね。あの帰り道に唯は車に轢かれて死んだんだよ」
私が死んだ?
あの時帰ってきた時のハナコさんは今と同じ泣き笑いのような悲しい顔をしていて、口調や態度が変わった気がします。
コンビニで買ってきた商品も車に轢かれた衝撃でなくなった。
学校に行っても誰にも相手にされないと思っていたけれど、私の姿は霊なので誰にも見えなかったのでしょう。
でも、何故私が死んでいることをハナコさんは言わなかったのでしょうか?
ハナコさんは説明してくれました。
死んだことに気づかない霊が、いきなり死んだことに気づくと、この世に囚われてしまい、永遠に彷徨い続けるらしいのです。
彷徨ってもいいからハナコさんの側にいたかった…。
「それはダメ!そうなると意思の疎通も出来ない化物になってしまう」
ハナコさんは、最後まで黙って私と楽しく過ごしてくれたのでした。
「唯、もうすぐ成仏できるよ」
成仏ってどういうこと?
私、ずっとここにいたいよ!
ハナコさんとずっと一緒にいる!
死んだことに悔いは無いけど、ハナコさんと別れるのは絶対に嫌!
私の意思とは反対に天上からまばゆい光が降ってきて、私の身体は透明になり浮き上がりました。
だったら、ハナコさんも一緒に天国に行こうよ!それなら一緒にいれるよ!
「私は地縛霊だから無理だよ。でもずっとここで待ってるから」
ハナコさんは泣きながら私を見送りました。
私は天に召されてしまったのです。
「我が聖ミカエル女学院は今年で120周年を迎えました」
やっと受験が終わり、念願の女子校に入れました。
入学式の理事長先生のありがたいお話を私たち新入生は聞いています。
私、風間結はこの学校で大事な人がいるという確信があってこの学校を受験しました。
もちろん、誰にもその事は話してません。
多分誰も信じてくれないでしょう。
やっと入学式が終わり、私は寮に入る手続きをして、寮に来ました。
私の部屋は三階の角部屋。
私はその部屋のドアをそっと開けました。
「おそい。転生に百年以上もかかったのかい?」
そこには頬を膨らまして、不機嫌な顔をしているハナコさんが、ずっと私を待っていてくれたのでした。
おわり
自由すぎるハナコさん 苑崎頁 @sonozakiruka
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