霊の見えるオカルトライターが、絡まり合った「心の糸」を解きほぐす

 酸いも甘いも噛みしめた、という大人な雰囲気がとても魅力的です。

 とあるバーにて、「オカルトライター」の主人公が一人の少年から話を聞く。
 彼が体験したという不可解な出来事について。

 道を進もうとしていたところで、なぜか自分の周囲にうるさく付きまとう少年がいたこと。それを追い払おうとして怒鳴り、その先で目にしたこと。

 幽霊が見えるオカルトライターの主人公には、そのエピソードの顛末と、その裏にあった事情を見ることができる。

 怪談としての話を聞き、「本人」たちですらも把握しきれていなかった真実を浮き彫りに。そうして霊たちの心の中にあったわだかまりを解きほぐしていく。

 どことなく漫画「ブラック・ジャック」、「ギャラリーフェイク」なんかに通ずるような、専門家の持つ知識と経験により、人の心を解きほぐしていくような風味の感じられるところがなんといっても面白い。

 主人公が経験豊かな「大人」として人の心をただ純粋に受け止めて、本人たちが問題を解決するのをそっと後押しする。その絶妙なニュアンスが読んでてとても心地よかったです。

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