悪役令嬢は破滅を阻止する為に最強を目指す

雪月花VS花鳥風月

第1話

異世界ゲーム『異世界で破滅を阻止しよう』完成祝いの飲み会は盛り上がっていた。

「れこりん、せなりん。呑んでますか」

「呑んでるわよ」

「呑んでいますよ」

「どれどれ、確認させて頂きます」

「息の匂いを嗅ぐな」

「香織、顔が近いですよ」

「せなりん、かおりんと呼んでくれと何度言わせるんですか。お仕置きします」

「胸を揉まないで下さい」

「いい加減にしろ、香織」

「い、痛いじゃないですか。パワハラで訴えますよ」

「それより4人目のシナリオライターは来ていないのか。まだ会った事が無いんだが」

「私も会っていません」

「彼は飲み会には絶対に来ませんよ」

「盛り上がっている処を悪いんだが、そろそろ時間だ。お開きにするぞ」

幹事がお開きにすると告げた。


「れこりん、せなりん、もう1軒呑みに行きましょう」

「お断りだ」

「遠慮します」

「2人共、冷たいです」

「それじゃな」

「失礼します」


(コンビニに寄って行くか)

麗子はコンビニに入った。

「金を出せ」

「コンビニ強盗か。おい、強盗なんて馬鹿な事をしてんじゃない」

「うるさい。邪魔するな。死ね」

「い、痛いじゃないか」

麗子は包丁で腹を刺されてしまった。

「ぎゃああああ」

「警察を呼べ」

「それより救急車だ」

(意識が無くなりそうだ。このまま死ぬのか)

病院に緊急搬送されたが、麗子は出血多量で死んでしまった。


(少し酔ったけど、運転しても問題無いですよね)

「え〜と、アクセルはこっちで、ブレーキはそっちですよね」

(あれ、アクセルとブレーキを踏み間違えたみたいです)

車は急発進してしまい、猛スピードでガードレールに突っ込んだ。

(意識が途切れそうです。このまま死ぬのでしょうか)

瀬名は交通事故で、呆気なく死んでしまった。


「お姉様達、呑みに行きましょう」

「しつこいわね」

「貴女、未成年よね」

「私は成人です」

「嘘を付くな」

「どう見てもJKじゃない」

「飛び降り自殺だ」

「早く避けろ」

(・・・何が起きたの)

香織は自殺者と衝突してしまい、そのまま即死した。


『思い出して下さい』

(あん、うるさい)

『思い出して下さい』

(誰なのよ。うるさいわよ)

『思い出して下さい』

(もう思い出したわよ。だから静かにしてよ)


謎の声に導かれて、前世の記憶が蘇った。

その記憶によると、此処は我が国を舞台とするゲームの世界だ。

3部構成で1部が乙女ゲーム、2部がシミュレーションゲーム、3部がロールプレイングゲームだ。

私は婚約者である王太子に断罪され、破滅する公爵令嬢レアル・フロイトに転生した。

このまま破滅なんか冗談じゃない、逆に王太子を破滅させてやる。

黒幕である宰相を巻き込んで、絶対に断罪を回避してやる。

幸いにも宰相は未だに独身だし、侯爵だから公爵令嬢からの婚約は拒否し辛い筈だ。

裏の事情に詳しいのは乙女ゲームのシナリオライターだったからだ。


「父上、宰相閣下に私との婚約を打診して下さい」

「レアル、馬鹿な事を言うな。宰相は私より年上なんだ」

「分かっています。私の理想は包容力の有る頼れる男性なんです」

「駄目だと言ったら駄目だ。本気にされない決まっている」

「それでも一度で良いので、打診して下さい」

「・・・分かった。一度だけ打診してやる」

「ありがとうございます。父上」


「兄上、フロイト公爵家から書状が届いています」

「フロイト公爵家からだと」

「どんな内容ですか」

「馬鹿馬鹿しい。私とレアル嬢との婚約の申し込みだ」

「レアル嬢ですか。確か7歳の筈ですよね」

「そうだ。冗談にも程がある」

「それでは断るのですね」

「当然だ。待てよ、茶番に乗るのも面白いかもしれん。了承したと返事を出そう」

「兄上、戯れが過ぎます」


「レアル、宰相から返事が届いた。婚約を了承するそうだ」

「待って下さい。本当に宰相は了承したのですか」

「そうだ。宰相の奴、一体何を考えているのだ」

(単なる嫌がらせだったのに、マジで喰い付いて来たのか。予想外だけど、面白くなったわね)

取り敢えず身体強化と魔法の習得を目指そう。

まだ7歳の身体なので、軽い筋トレと魔力制御の訓練からにするか。


今日は王太子の生誕7周年の祝いが行われる。

王太子の婚約者に選ばれる可能性が高いが、婚約なんか絶対に拒否してやる。


遂にこの日が来た。

2年前の生誕5周年の祝いで、僕は天使と出会った。

彼女は紫色の髪の可愛い幼女で、名前はレアル・フロイト。

僕の婚約者となる公爵家の令嬢だ。

父上が祝いの席で婚約を提案してくれる予定だ。

王太子の僕との婚約を拒否する令嬢は居ないだろう。


「ところでラドロフとの婚約」

予想通りに国王から婚約の提案をされる。

「私は宰相閣下との婚約が成立しています。よって王太子殿下との婚約は拒否させて頂きます」

此処は王太子の生誕7周年を祝うパーティー会場。

王太子との婚約を提案され終わる寸前に先手を取った。

私の爆弾宣言に会場内の全ての者が驚愕の為に愕然とした表情で固まってしまった。

「宰相閣下は32歳だよな」

「レアル嬢は7歳の筈」

「25歳違いか」

「完全に親子だな」

「年の差結婚か」

「宰相閣下は少女趣味だったのか」

「ロリコンよね」

「宰相、レアル嬢との婚約が成立しているのは本当なのか」

「・・・本当です」

「何故報告をしなかった」

「申し訳ありません。レアル嬢の我儘だと思い、軽い戯れのつもりで了承しました」

「酷いです。宰相閣下、我儘ではありません。私は本気です。もし婚約を解消されたなら、修道院で生涯を終えます」

「・・・」

宰相の顔色が真っ青になった。

「・・・分かりました。婚約を結びます」

宰相が遂に折れた。


そんな馬鹿な事があり得るのか。

彼女が既に婚約していて、その相手が25歳年上の宰相だと。

絶対に納得出来ない。

「レアル嬢、貴女は王太子である僕より宰相を選ぶのか。納得出来ない。理由を述べろ」

王太子がヨコヤリを入れてきた。

「分かりました。詳しく御説明致します。私が理想とするのは包容力の有る頼れる男性です。宰相閣下はその条件を全て兼ね備えております。王太子殿下は条件を少しも満たしてはおりません。以上です。納得して頂けましたか」

「納得出来るか」

王太子が遂にキレてしまった。

「止めなさい」

「しかし母上」

「私の言葉に従わないのですか」

「・・・分かりました」

王太子は渋々引き下がった。

「レアル嬢、宰相はそなたの父親より年上の筈だ。それでも良いのか」

国王がツッコミを入れてきた。

「勿論ですよ。陛下」

私は笑顔で返答した。

国王と王太子は私を呆れた表情で見つめた。

王妃は獲物を狙う狩人のような視線で私を見つめた。

取り敢えず王太子との婚約は阻止出来たから、後は様子見かな。


「やはり納得出来ません」

「落ち着きなさい。レアル嬢が言っていたでしょう。理想とするのは包容力の有る頼れる男性だと。それならば包容力の有る頼れる男性になれば良いのです。そして見返してあげなさい。明日から厳しく教育し直します。覚悟しなさい」

「・・・はい」

王太子は頷いた。


「王太子殿下がザクロ・バンカー侯爵令嬢と婚約するらしいわよ」

「そうなの」

友人のリメル・ロザリオ伯爵令嬢から王太子の婚約の噂を聞いたが、私には関係ないから生返事した。


「私は王太子殿下の婚約者候補になりました

「おめでとうございます」

噂のザクロ嬢がマウントを取りに来たが、軽く受け流した。

どうやら婚約ではなく、婚約者候補になっただけだった。

とても残念だ。

「・・・ありがとうございます」

私が平然としているのが不満のようだ。

「破滅が待っているとも知らないで、呑気な悪役令嬢だ。ザクロ新悪役令嬢様、御愁傷様です)

心の中で呟いてやった。


5年の月日が流れ、遂に乙女ゲーム開幕の時が来た。

ヒロインの名はセレン・アプリコット男爵令嬢。

桃色の髪で小柄なのに胸が大きい少女だ。

ちなみに私は紫色の髪で背が高いが胸は小さい。


破滅を回避する為にレベリングで無属性魔法、闇属性魔法をカンストしたが、闇魔法の上位魔法である暗黒魔法を習得出来なかったのは残念だ。

どうやら習得するには特別な条件をクリアする必要があるみたいだ。


(やはりシナリオ通りね。最悪な気分よ)

王太子、ヒロインと同じクラスになってしまった。

おまけに攻略対象の騎士団長の息子パワード、神官長の息子セイヤ、筆頭宮廷魔道士の息子マジック、新悪役令嬢のザクロ嬢、友人のリメル嬢も同じクラスだ。

「レアル嬢、同じクラスだな」

「そうですね。王太子殿下」

「そう不機嫌な顔をするな」

「別に不機嫌な訳ではありません」

「まぁ、良い。それより貴女に伝えたい事が有る。私は包容力の有る頼れる男性になってみせる。そして私との婚約を拒否した事を後悔させてやる。覚悟しておけ。

「・・・はぁ」

王太子から意外な事を言われてしまった。

(本当にしつこいわね。まるでストーカーじゃない)


乙女ゲームのヒロインに転生してしまった。

しかし私は王太子や取り巻き達を攻略なんか絶対にしない。

その理由は悪役令嬢を断罪しても幸せにならないからだ。

1部の乙女ゲームのエンディング後は確実に破滅する。

何故知っているかというと、3部のロールプレイングゲームのシナリオライターだったからだ。

破滅を回避する為にレベリングで無属性魔法、光の属性魔法をカンストしましたが、神聖魔法を習得出来なかったのは残念です。

それよりも先ずは悪役令嬢のレアル・フロイト公爵令嬢と親密にならなければならない。

その理由はレアル嬢は暗黒魔法の使い手で、ロールプレイングゲームの破滅を阻止するには彼女の協力が必要不可欠だからだ。


「レアル様、ごきげんよう」

(げぇ、セレス嬢)

ヒロインから声を掛けられた。

「セレス様、ごきげんよう。私に何か御用かしら」

取り敢えず笑顔で返事をした。

「あの、学内の案内をお願いします」

「学内の案内ですか。私で良ければ、お引き受けします」

「ありがとうございます」

(悪役令嬢に案内を頼むなんて、どういうつもりなの)

悪役令嬢はヒロインを警戒している。

(レアル嬢は悪役令嬢なんかじゃないみたい。完璧な淑女に思える)

ヒロインは悪役令嬢に好意を抱いた。


「以上か主要な施設です」

ヒロインと共に学内の主要な施設を回った。

「助かります。ありがとうございました」


「レアル様、リメル様、今日も昼食を御一緒しましょう」

「・・・良いですよ」

「私も構いませんよ」

何故か毎日ヒロインから昼食に誘われる様になった。

(解せない。どうして懐かれたんだ)


「私は卒業後は王宮の文官を目指します。そして宰相閣下の下で働きたいです」

(顔面を殴りたいけど、我慢よ我慢)

「・・・それは楽しみですね」

宰相閣下の執務室を訪れて、文官を目指すと伝えた。

執務室の全員が私と宰相をジト眼で見つめた。


私はセレス・バーネット男爵令嬢。

乙女ゲームの世界に転生したヒロインだ。

家名は違うけど、桃色の髪だから間違いないだろう。

必ずハーレムを築いてみせる。

偽ヒロインは野望に燃えていた。


「王太子殿下ですね。私はセレス・バーネット男爵令嬢です」

「殿下に近付くな」

「身の程知らずが」

「さっさと立ち去れ」

「ひぃ」

パワード、セイヤ、マジックに叱責され、偽ヒロインは脱兎の如く立ち去った。


(どうして上手くいかないのよ。シナリオ通りにしたのに)

偽ヒロインは困惑した。


レアル・フロイトが王太子と婚約していない。

つまりレアルは悪役令嬢じゃない。

ザクロ・バンカーという婚約者候補が居る。

つまりザクロが悪役令嬢なのか。

セレス・アプリコットが王太子のクラスに在籍している。

つまりヒロインが2人居る。

聞き込みをして、驚くべき事実が次々と明らかになった。

(もしかして私はヒロインじゃない)

偽ヒロインは真実に気付いた。


「くそ、あれから5年になるのに、未だに対立派閥だけでなく、私の派閥連中さえも少女趣味、ロリコンと罵っている。これもレアル嬢が原因だ」

「嫌な予感がします。レアル嬢を始末した方が良いす」

「まだ12歳の少女だ。始末する必要はないだろう。放置しておけ」


「夜鴉、夜桜、レアル嬢を始末しろ」

「宰相閣下は放置しておけと指示されましたよね」

「宰相閣下の指示に従わなくて良いのですか」

「構わない。私はレアル嬢が普通の少女ではない気がするのだ」

「畏まりました」

「お任せ下さい」


(何者かが屋敷内に侵入したわね)

発動発動しておいた探査魔法が侵入者を感知した。

【結界】

毒針が結界に弾かれた。

【麻痺】

「身体が痺れる」

「身動きが取れない」

「貴方達は宰相が差し向けた暗殺者よね」

「「・・・」」

「黙秘しても無駄よ」

【自白】

「もう一度問うわ。宰相の指図よね」

「・・・違う。宰相閣下は御存知ない」

「弟君の指図だ」

「弟の指図か。報復が必要ね」

【転移】

暗殺者達と共に宰相邸に転移した。


「宰相閣下、ごきげんよう」

「・・・レアル嬢、どうして屋敷に居る。」

「・・・その2人は」

「この2人は弟君が差し向けた暗殺者ですよ」

「何だと」

「・・・何の事だ」

「惚けても無駄ですよ。自白魔法を掛けて白状させましたから」

「お前」

「・・・」

【隷属】

「報復として隷属魔法を掛けました。貴方達は今から私の奴隷です」

「ふざけ!ぎゃあああ」

「誰が奴隷!がぁあああ」

2人は激しい痛みに襲われた。

「御理解頂けましたか」

「「・・・」」

「宰相閣下、貴方は私の母に懸想していますよね。そして父への嫉妬の為に娘の私に冤罪を着せて、苦しめようとした。違いますか」

「違う!ぎゃあああ」

「見苦しいですよ。早く認めて下さい」

「み、認める」

「我等を殺す気か」

「折角の奴隷を殺したりしませんよ。貴方達には生涯に渡り、私に仕えて貰います。それから国家簒奪は諦めなさい。犯罪行為も禁止です」

「「・・・」」

2人の顔色が真っ白になり、絶望の表情になった。

(何処まで知られているんだ。全く底の見えない少女だな)

(恐ろしい。まるで老獪な魔女みたいだ)


「そろそろ覚悟は出来ましたが」

「・・・分かりました。奴隷として、生涯貴女に仕えます」

「あ、兄上」

「我等は敗北したのだ。お前も覚悟を決めろ」

「はい」

「流石は宰相閣下です。良い返事ですよ。それから婚約は解消します」

「畏まりました」

「嬉しそうですね」

「私は貴女の母親としか結婚する気はありません」

「・・・そうですか。解消の理由は貴方の男性器が不能になったからにしても良いですね」

「奴隷に拒否権はありませんので、構いません」

「用事は全て済んだので、今夜は失礼します」

【転移】

公爵邸に転移した。


「兄上、申し訳ありません。私が愚かでした。絶対に敵に回してはならない怪物を敵に回してしまいました」

「もう良い。過ぎた事だ。そんなに自分を責めるな。それよりも我等はレアル様に生涯に渡り、誠心誠意尽くそうではないか」

「それにしても彼女は本当に12歳の少女なのでしょうか。強大な威圧感に恐怖してしまい、危うく失禁しそうになりました」

「私も同感だ。あれほど奸智に長けた人物は初めてだ」


【隷属】

「お前達の名前を教えなさい」

「夜鴉です」

「夜桜です」

「夜鴉、夜桜、影として生涯に渡り、私に仕えなさい」

「「畏まりました」」

暗殺者達を奴隷にして、影として使役する事にした。


「陛下、宰相閣下との婚約を解消しました。理由は宰相閣下の男性器が不能になったからです」

「宰相、間違いないか」

「間違いありません」

「・・・分かった。そのように公表しよう」


「母上、レアル嬢と宰相の婚約が解消されたのは本当ですか」

「本当です。解消の理由は宰相の男性器が不能になったからだそうです」

「・・・男として宰相に同情します」


「お前達、ザクロ嬢の前でセレス・バーネット嬢を褒めまくれ」

「ザクロ嬢の前で」

「セレス・バーネット嬢を褒めまくる」

「セレス・バーネット嬢が酷い目に合いませんか」

「それが狙いよ。卒業パーティーでザクロ嬢を断罪し、レアル嬢を新たな婚約者にする」

「分かりました」

「お任せ下さい」

「思いっきり褒めまくります」

王太子はパワード、セイヤ、マジックにザクロ嬢の前で偽ヒロインを褒めまくれと命令した。

レアルと婚約する為にセレス・バーネットを利用し、ザクロ嬢を切り捨てるつもりだ。


「セレス・バーネット嬢は可愛いらしい」

「セレス・バーネット嬢は素直だそうだ」

「セレス・バーネット嬢は優しいと噂になっている」

「・・・」

ザクロ嬢は一見笑顔だが、眼は笑っていなかった。


「王太子殿下達に近付くのは止めなさい」

「王太子殿下達は迷惑しているわよ」

「男爵令嬢の癖に身の程を弁えなさい」

「学園の風紀が乱されているのよ」

ザクロ嬢は取り巻きと共にセレス・バーネット嬢に釘を刺していた。

「お断りします。学園内では身分は関係ありませんから」

(釘を刺されても、罵られても、私が偽ヒロインでも、絶対に諦めないわよ。必ずハーレムを築いてみせる)

偽ヒロインは諦めが悪かった。


「止めないか。一体何様のつもりだ。セレス・バーネット嬢に謝罪しろ」

「お前達の行為こそ迷惑なんだよ」

「お前達こそ身の程を弁えろ」

「お前達こそ学園の風紀を乱しているんだ」

王太子達が彼女達を激しく叱責した。

「「「「申し訳ありませんでした」」」」

「もう気にしていませんから、そんなに謝罪しなくても良いですよ」

(諦めなくて、本当に良かった)




「来週からの合同野外訓練はグループ単位に行動する。3名から5名でグループを組んでおくように」


「パワード、セイヤ、マジック、セレス・バーネット嬢、私とグループを組もう」

「「「畏まりました」」」

「はい」

王太子達は5人グループのようだ。


(セレス・バーネット嬢は少し気になるわね。ヒロインと名前と髪色が同じで、ヒロインみたいな行動をしている)


「あの、私もグループに加えて下さい」

「良いですよ」

「構いませんよ」

「歓迎します」

ザクロ嬢がグループに加えて欲しいと懇願してきたので、グループに加えてあげた。

どうやら王太子達からハブられたらしい。

取り巻き達も離れてしまったようだ。

偽ヒロインの言動の為にザクロ嬢は悪役令嬢だと認識されたようね。

どうやら偽ヒロインは奸智に長けているみたいだから、ザクロ嬢では対抗出来ないわね。

このままではザクロ嬢は断罪されて、破滅してしまうだろう。


「夜桜」

「お呼びでしょうか」

「セレス・バーネット嬢の行動を監視して、記録に残しなさい」

「お任せ下さい」

(それにしても婚約者候補をハブるなんて、王太子は何を考えているのよ。どうやら王太子も注視する必要がありそうね)

「夜鴉」

「お呼びですか」

「王太子の行動を注視しなさい」

「畏まりました」


「やはりセレス・バーネット嬢はザクロ嬢に冤罪を着せて、貶めようとしているのですか」

偽ヒロインが新悪役令嬢を王太子に断罪させようとしている。


「この件は陛下に対処して貰いましょう」

「これは事実なのか」

「紛れもなく事実です」

「分かった。この件は王太子に命じて、直ちに愚行を止めさせる」


「・・・これは何かの間違いです。」

「間違いではない。セレス・バーネット嬢がザクロ・バンカー嬢から嫌がらせを受けたというのは自作自演だった。そなたは自作自演を見抜けず、ザクロ・バンカー嬢を蔑ろにした。バンカー侯爵から婚約者候補を辞退したいと申し出があった。このままでは王太子を選び直さねばならなくなる。そなたの責任に負いて直ちにセレス・バーネット嬢に愚行を止めさせよ。そしてザクロ・バンカー嬢に謝罪して、必ず赦しを貰え。これは王命である」

「・・・分かりました」


「セレス・バーネット嬢、ザクロ嬢に冤罪を着せる愚行を直ちに止めろ」

「・・・何の事でしょう」

「惚けても無駄だ。お前が嫌がらせを受けたというのは自作自演だった事は確認済みだ。父上から私の責任に負いて愚行を止めさせよと王命が下ったのだ」

「・・・」

王命と聞いて、偽ヒロインの顔色が真っ白になった。


「ザクロ嬢、蔑ろにして済まなかった。私はセレス・バーネット嬢にザクロ嬢から嫌がらせを受けているという虚言を見抜けなかっただけなんだ。頼むから婚約者候補の辞退はしないでくれ」

「謝罪は受け入れますが、婚約者候補は辞退致します」

謝罪で赦しは貰えたが、婚約者候補は辞退されてしまった。

(このままでは王太子で居られなくなる)

王太子は窮地に立たされた。


「ルトランティス帝国の皇太子が来訪して来る」

夜鴉から意外な報告を伝えられた。

「表向きは表敬訪問ですが。真の目的は御主人様と婚約を結ぶ事です」

「・・・ルトランティス帝国の皇太子が私と婚約」

(絶対に変だ。皇太子との婚約なんてシナリオには存在しない)

「皇太子は21歳です。御主人様の理想通りですね」

「余計な情報は不要よ」


「ルトランティス帝国の皇太子ベルモンド・ラ・ルトランティスだ」

「皇太子殿下、お目にかかれて光栄です。フロイト公爵家長女のレアル・フロイトと申します」

「レアル嬢、ルトランティス帝国の次期皇后になる気は有るか」

(いきなり直球かよ)

「・・・条件次第ですね」

「条件とは何だ。具体的に頼む」

「実際の婚姻は成人後とする事。我が国との不可侵条約と同盟の締結です。永久とは申しません。私が存命の間だけで構いませんので、この条件を呑んで下さい」

「・・・噂通りだな。気に入った。しかし即答は出来ない。返答は保留とさせてくれ」

(噂通りって、どんな噂よ)

「どのような噂なのですか」

「知りたいか」

「はい」

「老獪な魔女だという噂だ」

(12歳の乙女を老獪な魔女とは失礼にも程があるわよ)

「老獪な魔女ですか。出来れば老練な聖女と噂して欲しいですね」

「老練は兎も角、聖女は無理だな」

「自分でも無理だと分かっています。それよりも良い返答を期待していますよ。皇太子殿下」


「王都の案内を頼みたい」

「分かりました」

「御希望の場所は何処ですか」

「宝石店に案内してくれ」


「王都で一番人気の宝石店です」

「いらっしゃいませ。どのような宝石をお求めですか」

「紫色で一番高価な宝石を見せてくれ」

「畏まりました。少々お待ち下さい」


「こちらで如何でしょうか。これは魔力を貯める事が出来て、魔力ポーションの代わりにもなります。サイズも自動的に合わせられます」

「気に入った。これを貰う」

「お買い上げ、ありがとうございます」


「レアル嬢、案内のお礼だ。受け取ってくれ」

「困ります。このような高価な品を受け取れません」

「不要なら、捨てても良いぞ」

「・・・分かりました。受け取ります。ありがとうございます」

「それでは左手を差し出してくれ」

「はい」

左手薬指に指輪を嵌められた。

「薬指は早すぎます」

「良いから薬指に嵌めておけ。悪い虫避けだ」

「・・・分かりました」

「それで良い。今日は楽しかったぞ」


「御主人様、デートはどうでしたか」

「楽しかったですか」

「デートじゃないわよ。単なる案内よ」

「左手薬指の指輪はプレゼントですか」

「婚約指輪ですよね」

「婚約指輪じゃないわよ。単なる虫避けよ」


「母上、ルトランティス帝国の皇太子がレアル嬢に婚約の申し込みをしたのは本当ですか」

「落ち着きなさい。婚約の申し込みは本当です。レアル嬢は条件次第だと言ったそうです」

「その条件とは何ですか」

「実際の婚姻は成人後とする事とレアル嬢が存命中は我が国との不可侵条約と同盟を締結する事です」

「条件を呑んだのですか」

「取り敢えず保留だそうです」


「レアル様、ルトランティス帝国の皇太子と婚約を結んだのは本当ですか」

「まだ保留中よ」

「左手薬指の指輪は何ですか」

「単なる虫避けよ」

(不味いです。もしレアル様がルトランティス帝国に嫁ぐ事になったら、ロールプレイングゲームの破滅を阻止出来ません。絶対に婚約を阻止しなければなりません)

「レアル様、ラトランティスの皇太子との婚約は拒否して下さい」

「落ち着いて、この婚約は国の為なのよ」

「国の為になんかなりません。レアル様がこの国に居ないと大きな厄災によって世界が滅亡してしまいます」

「世界が滅亡するなんて、大袈裟過ぎない」

「事実です。レアル様がこの国で暗黒魔法を取得しないと本当に世界は滅亡してしまいます」

「暗黒魔法!何故セレス嬢が暗黒魔法の事を知っているの」

「・・・信じて貰えないかもしれませんが、真実を話します。この国は異世界ゲームの舞台なんです。ゲームは乙女ゲーム、シミュレーションゲーム、ロールプレイングゲームに分かれています。ロールプレイングゲームで魔王が復活し、世界を滅ぼそうとするのです。それを阻止するには暗黒魔法と使い手のレアル様と神聖魔法の使い手の私が協力する事が必要不可欠なんです」

「異世界ゲーム!乙女ゲーム!シミュレーションゲーム!ロールプレイングゲーム!魔王!神聖魔法を何故知っているのよ」

「それは私がロールプレイングゲームのシナリオライターだからです」

「・・・ロールプレイングゲームのシナリオライターって、それじゃ神代瀬名ちゃんなの」

「レアル様、何故その名前を知っているのです」

「私は乙女ゲームのシナリオライターよ」

「乙女ゲームのシナリオライターって、それじゃ麗子先輩ですか」

「そうよ。黒崎麗子よ」

「凄い偶然ですね」

「・・・偶然なのかな」

「必然ですかね、だとすると勇者魔法の使い手を見つけるのは簡単かもしれません。名前はカルラ・ブリュッセル。貴族ではなく、平民です。知り合いに居ませんか」

「勇者魔法の使い手も居るんだ。カルラ・ブリュッセルか。知り合いには居ないわね」

「暗黒魔法、神聖魔法、勇者魔法の3人が協力しないと魔王は倒せません。なるべく早く見つけたいです」

「勇者魔法の使い手って、シミュレーションゲームのシナリオライターなのかな。だとするとアイツよね。私は苦手なのよ」

「私も彼女は苦手です。というより彼女が苦手でない人って、存在しますか」

「しないわね」

3人目のシナリオライター勇坂香織はJKで同性愛者で触り魔で匂いフェチで平然とセクハラするハッキリ言ってストーカーより始末が悪い大変人だ。

2人は迫られたり、胸と尻と太ももを触られたり、汗の匂いをクンカクンカされた過去を思い出して、全身を悪寒が走った。

「怖いから思い出すの止めない」

「止めましょう」

「瀬名ちゃんの死因は何なの。私は飲み会の後にコンビニ強盗に刺殺されたんだけど」

(酔っ払ってコンビニ強盗に絡んだなんて言えない)

「私は単なる交通事故ですよ」

(酔っ払い運転したなんて言えません)

2人の死因は自業自得だった。


「それで皇太子との婚約は拒否してくれますよね」

「だけどシミュレーションゲームの為にはルトランティスとの同盟は必要なのよ」

「・・・そうですけど」

「実際の婚姻はロールプレイングゲームのエンディング後にするよう交渉してみるから、それで納得してくれないかな」

「・・・分かりました」


「レアル嬢とベルモンド皇太子の婚約が成立した。実際の婚姻はレアル嬢が成人した後だ」

「ルトランティス帝国が私の提示した条件を呑んだのですか」

「そうだ。これで不可侵条約と同盟は正式に締結されたが、早くも魔法兵団の派遣要請があった」

「魔法兵団の派遣要請ですか。戦争でもするのですか」

「戦争ではない。魔獣討伐だ。最近になって大型の魔獣が多く出現するようになったらしい。ルトランティス帝国は我が国よりも魔素濃度が低いので、大型魔獣は生息していなかった。戦闘系魔法使いも少ない。だから魔獣討伐に苦慮しているとの事だ」

「戦争でなくて、安心しました」

(大型魔獣の出現か。でも展開が早すぎるわね。確かシナリオではシミュレーションゲームのイベントの筈よね)


「母上、レアル嬢とベルモンド皇太子の婚約が成立したのは本当ですか」

「本当です。ルトランティス帝国がレアル嬢の提示した条件を呑みましたので、婚約が成立したのです。それに不可侵条約と同盟も正式に締結されました。もうレアル嬢の事は諦めなさい。良いですね」

「・・・分かりました」

王太子の顔色が真っ白になり、絶望の表情に変わった。


「新しい婚約者が決まった。メリット・シフォン侯爵令嬢だ。今度は婚約者を大切にしろ。2度と失態を犯すな。もし失態を犯したら、王太子を選び直すからな」

「・・・分かりました。2度と失態を犯しません」


「私が王太子の婚約者に選ばれました」

「おめでとうございます」

「ありがとうございます」

メリット侯爵令嬢が王太子の婚約者に選ばれた。

(しかし王太子の婚約者になるって、本当におめでたいのかな)


「レアル嬢、ルトランティス帝国への外交使節団に参加して欲しい」

「私は確かにベルモンド皇太子の婚約者です。しかし未成年なので、拒否させて頂きます」

「其処を曲げて引き受けてくれ。是非レアル嬢を参加させろとゴリ押しされてしまったのだ」

「誰にゴリ押しされたんです」

「わざわざ言わなくても、分かるだろう」

(あの色ボケ皇太子)

「分かりました。但し貸し1つにしますよ。陛下」

「・・・それが最も怖いのだがな。宜しく頼む。それから王太子と婚約者のメリット嬢も参加するからな」

(馬鹿王太子とメリット嬢が参加するなら、取り巻きの3馬鹿も参加するわね。馬鹿4人の相手は疲れるのよね)

「何故先に教えてくれなかったのですか」

「先に教えたら、絶対に拒否するからだ」

「貸しを2つに増やします。良いですね」

「・・・分かった」


「私は反対です。罠です、危険です、嫌な予感がします、拉致監禁されるかもしれません。帰国出来なくなるかもしれません、暗殺されるかもしれません」

「心配し過ぎよ。本当に危険な状態になったら、転移で戻るわよ」

「せなりん、過保護過ぎますよ」

「・・・分かりました」


こうしてルトランティスを表敬訪問する事になった。

「メリット様、王太子妃教育は進んでいますか。大変じゃないですか」

「大丈夫ですよ。確かに大変ですけど、必要な事ですから」

王太子と取り巻き達は馬車が別なので、相手をしないで済んだ。


「久し振りだな。レアル嬢」

「お久し振りです。皇太子殿下」

「あれが王太子か。少しも覇気が無いな。お飾りの王太子なのか、それとも影武者か」

「・・・どうでしょう。私からも何も言えません」

(王太子に対して辛辣よね。対抗意識かな)


「余がルトランティス帝国皇帝ガルマン・ラ・ルトランティスである」

「皇帝陛下、お目にかかれて光栄です。ラグリット王国王太子ラドロフ・ル・ラグリットと申します」

「皇」

「皇帝陛下、お目にかかれて光栄です。ラグリット王国王太子妃メリット・レ・ラグリットと申します」

(緊張しましたが、何とか上手く名乗れました)

(メリット様、何をやっているのですか。貴女は公式には侯爵令嬢であって、王太子妃ではありません。それに公爵令嬢の私より先に名乗ったのも不味いです)

「皇帝陛下、お目にかかれて光栄です。ラグリット王国フロイト公爵家長女レアル・フロイトと申します」

「我が帝国へ遠路遥々ようこそ。余はそなた達を歓迎したいが、苦言を呈させて貰う。メリット嬢、そなたは公式には侯爵令嬢だと認識していたが、ラドロフ王太子と婚姻を済ませたのか」

「いいえ、済ませておりません」

「それなのに何故王太子妃と名乗られたのだ。これは身分詐称と糾弾されても、仕方ない言動だ。それにレアル公爵令嬢より先に名乗ったのも非常識だ」

「・・・も、申し訳ありません」

「謁見はこれまでとさせて貰う」

「「「・・・」」」

皇帝の鶴の一声により、謁見は中止となってしまった。


「ベルモンド、レアル嬢は未来の皇后に相応しい眼をしておるな。それに比べて王太子は眼に覇気が無かったし、婚約者は非常識。あれが未来の国王と王妃でラグリット王国は大丈夫なのか」

「傀儡にするには、あの程度の方が都合が良いかと」


「王太子殿下、申し訳ありません」

「・・・謝罪は不要だ」

「・・・」

メリット嬢は泣き崩れてしまった。


今回の表敬訪問は不成功に終わり、王太子とメリット嬢は急遽帰国の途に帰国の途に就いた。

私は何故か居残りする事になった。

(解せん)


「このまま帝都に残らないか」

「冗談は顔だけにして欲しいですね」

「私の顔は好みに合わないか」

「好みとかではなく、狡猾で獲物を狙う狩人のような眼をしているからです」

「私にとっては褒め言葉だな」

「言い間違えました。狡猾で老獪で悪辣で腹黒で奸智に長けていて獲物を狙う狩人のような眼をしているからです」

「・・・流石に酷くないか」

数日間に渡り皇太子と帝都を散策し、私は帰国の途に就いた。


「レアル様、心配しましたよ。皇太子にセクハラされましたか。皇太子にモラハラされましたか。皇太子にパワハラされましたか。皇太子に婦女暴行されでいないですよね」

「セレス様、落ち着いて下さい。何にもされていません。むしろ私がモラハラしました」


「私はメリット嬢との婚約を破棄する。その理由はメリット嬢がルトランティス帝国で皇帝陛下との謁見中に失態を犯したからだ」

王太子が暴走して、公の場でメリット嬢との婚約は破棄すると宣言した。


ラドロフ王子はバーネット男爵家に婿入りが決定した。


2年半の月日が流れ、遂に乙女ゲームの閉幕の時が来た。


「リメル様、セレス様、卒業おめでとうございます」

「レアル様、セレス様、卒業おめでとうございます」

「レアル様、リメル様、卒業おめでとうございます」


結局レアルの断罪は行われず、穏やかに終了した。

こうして乙女ゲームはエンディングを迎えた。




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悪役令嬢は破滅を阻止する為に最強を目指す 雪月花VS花鳥風月 @akihirohasumi

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