人の子猫の仔

琴梨

プロローグ

 街灯だけを頼りに、女は夜道を歩く。夜中の3時、都心から離れているためか、街灯以外の光はない。

 腰まで伸ばされた髪は何箇所も絡まり、不潔な印象を持たせる。膝下まであるブーツは、歩くたびに女の足を締め付ける。およそ170センチの身長には見合わない赤いミニスカートに赤いセーターという、なんとも奇妙な格好をしている。

 いや、よく見ると、白いセーターに赤色の斑ら模様が浮かんでいるようだ。


 女は片手に、小さなゴム製の袋を持ち、袋の口を握りしめている。中には、半透明のドロドロとしたものがタプタプと揺れている。

 

 女は路地裏を見つけ、しばらく見つめた後、入って行った。

 壁に背を預けて慎重に袋を開け、広げた手のひらに液体を出す。袋の口を自分の口で噛み、空いた手でスカートをめくる。そして、液体を性器の奥深くへ塗りつけるかのように執念深く受け入れていく。それを3回繰り返し、女はこの夜初めての安堵の息をついた。


 暗闇の中、人一人として女の姿を見つけることはなかった。

 ただ1匹の猫が、目を光らせながら女を見つめていた。


 

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人の子猫の仔 琴梨 @haiena0306

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