ツンツン可愛い、ツンデレのツン狐(こ)さん!

 女流作家(たぶん)の「しろっこにー」さんのデビュー作です。今のところ、これ一作しかありませんが、これは相当いいですよ。

 わたくし、この手の心理描写多めの恋愛ものが大好きで、自分でもしょっちゅう書いていますが、ワンシーンで心理描写オンリーで5000字埋めるのはなかなかできることではありません。文体や表現方法もオリジナリティにあふれ、AIでは書けないセンス。文章も小粋でしかも読みやすい。

 ストーリーは、交通事故で異世界に転生してしまった主人公が、そこで助けてくれたツン狐さんと、いろいろ話しながら、二人でお月見するという、ただそれだけのお話ですが、これがなんともほのぼのしていてよいです。王道のツンデレ、そしてラブコメ。

 魔法も勇者も出てこず、異世界転生の意味は希薄ですが、そこに力点のあるお話ではなく、二人の会話や気持ちのやり取りを楽しむ作品ですね。

 他の作品も、もっとたくさん書いて欲しいと思わせる好編でした。