見て聞いてそして思い出して、の先に

土着信仰の神々は、いつもどこかおかしな姿に怖い名前が付いているもの。
だから人は恐れ、崇め、敬うものなのですが、その敬意に違和感を抱くのは、「外部からやって来た人間」よりも、「世間全てに疑問を抱き始める若者」の方だと、私は思っています。

大人が目を背ける事実を見て、聞いて、まっすぐな心で解決しようとする熱量は、若さゆえの特権。
この中の主人公も、まさにそう。
僅かに残る記憶の欠片と、ふいに現れる幼馴染の幻影に、彼女は果敢に大人達とは違うクリアな視線で向き合うのです。

そこに行き着くまでの滑らかな語り口調と、感じる不条理を裏付けるような世界観に、読み手はきっと、応援しながらも、ふと違和感を抱くことでしょう。

全てを読み終えた後に、改めてタイトルを見つめてください。
それは単なる題名でも言葉でもなく、警告であったことに読み手は気がつくのです。

ぜひ、ご一読を。
人の力ではどうしようもできない「こわい」が、ここにあります。

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