「影と共に乗る」

人一

「影と共に乗る」

「はぁ~疲れた疲れた。今日はもうあと1人乗せたら終わりにしよう……っとお客さんだ。」

「お客さん、どちらまで?」

「そぼろ会館前まで……」

「そぼろ会館前?かしこまりました。」


「お客さん、あなたかなり濡れてるように見えますがどうされたんです?今はよく月も見えますが……天気雨にでもやられました?」

「……いいえ。天気雨じゃないわ。

私はただ話しかけただけなのに、いきなり水をひっかけてきた人間がいたのよ。

そのせいでセットした髪がもうめちゃくちゃよ。」

「へ~それはそれは……ひどい人がいるもんですね。ところで……」

「運転手さん、青になったわよ。」

「おっと、すみませんね。」


「……」

「……」

「……」

「ねぇ、運転手さん。聞きたいことがあるのだけど、いいかしら?」

「ん?え、あぁはい。どうぞ?」

「ねぇ、私キレイ?』

「え?まぁ……はい。綺麗だと思いますよ?」

『これでも?』

「うわっ!マジかよ。まぁ綺麗なんじゃないんですかね。」

『はぁ?』


「うわ~マジかよ~せっかく遅くまで頑張ったってのに……」

『どういうことよ。』

「今日はあんたで切り上げて、晩飯にしようって思ってたのに……まさかバケモンだとはな……人間が良かったぜ。』

『はぁ?意味分かんないわよ……ってあなた、その顔どうしたのよ。顔に大きく穴が空いてるじゃない。』


『バケモンに遭ったんだ。もう正体を隠す必要ないだろう?』

『あんた私をバケモンって言うけれど、あなただって十分バケモノじゃないの。』

『まぁ、いいだろ。それよりも晩飯だよ。お前のせいでパァになったんだ。どうしてくれるんだ。』

『知らないわよ。もう1人人間を捕まえればいいじゃない。』


『時間考えろよ。というか、お前に水かけた人間はどうしたんだ?』

『そんなの……聞くまでもないでしょう?』

『まぁそうだな。

それより、ほら。着いたぞ目的地に。』

『あら、ありがとうね。』

『まったくバケモン相手だと飯も食えないし、金も請求できねーや。』

『そういうもんでしょ。

まぁ……お代は再開できた時に、人間を2人くらい引っ掛けてくるわ。

それでいいでしょう?』

『……覚えておくからな。

それでは、ご利用ありがとうございました~』

『……』

『……』

『はぁ、ようやく静かになった。

もう午前1時過ぎか……

望みは薄いけど、駅前にでも行ってみるか。』


『……』

『おっ!』

「すいません、夜遅くに。

衣良弧町までお願いします。」

『かしこまりました。

それでは……出発致します……』

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「影と共に乗る」 人一 @hitoHito93

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