番外編 あの頃のラーゴ
側妃であった母が死んだ。
セデンス国の第一王子、ラウィゴ・セデンスの母である。
雨の中、しめやかに行われた葬儀。
土の中へ埋められていく母を、国王である父と共に見送った。
『ラーゴ、愛してるわ。誰よりもよ。そう、お父様よりもね、内緒よ?』
ラウィゴ・セデンス――ラーゴの頭には今でも母の声は鮮明に残っている。
豪華な棺に乗せられる土を、ラーゴはただ黙って見ていた。
常々から愛情を惜しむことのなかった彼女は、なにより息子を大切にしていた。
線の細い女性だった。貴族としては身分が低く、その美しさで側妃になったと揶揄されていたが、実際国王は誰より彼女を愛していた。
いや、今もなお愛しているのだろう。国王はラーゴの隣に立ったまま、片手で顔を覆っている。指の隙間から溢れる水滴は、雨粒ではない。
しかし側妃への国王の寵愛を面白く思わない人間も多かった。
ラーゴはチラと斜め後ろを見る。
やや後方に立っているのはこの国の王妃だ。
真っ黒な喪服に身を包んだ彼女隣には、小さな第二王子が立っている。
王妃は高位貴族の出身で、国母になるべく育てられた女性の一人でもある。数多いた王妃候補の中から勝ち上がってきただけあり、気が強く高圧的だ。
だが貴族らしい貴族とも言える。
彼女の一派が母である側妃を目障りに思っていたことは、十歳のラーゴですら知っていた。
「わたくし、そろそろ部屋に戻りますわ。ミッシャラ王子も退屈そうですもの」
まだ葬儀の途中だというのに、王妃はそう周囲に告げると国王の返答も待たずに去って行った。最後にラーゴと目が合うとニヤッと意地悪く笑った。
ラーゴの母が殺されたのは、王妃がミッシャラ王子を王太子にしたいと考えているせいだ。
王妃の懐妊が分かってから、目に見えてラーゴは母と共に命を狙われ続けていた。
それは産後さらに激化し、ミッシャラ第二王子が四歳となった最近は、随分露骨なものに変化していた。
食事に毒を盛られていたり、賊が部屋に押し入ったこともあった。周囲の助けにより危機を脱していたものの、毒によって側妃である母は死んでしまった。
母が死んだのではない、ラーゴが死なずに済んだだけだ。
嫌いなスープを残さなかったら、今頃ラーゴも母と共に土の中へ埋められていただろう。
(お母様の死が、病弱の一言で片付けられてしまった)
土で隠れてしまった棺をじっと見つめながら、ラーゴは右手を強く握り締めた。
子供の目から見てもあれは毒殺だった。
犯人が誰かなど、考えるまでもない。
だが誰も王妃を疑わないのだ。少なくとも表面上は。
ラーゴは、これが権力かと思った。
後ろ盾のない側妃が死んで、王妃は高笑いしていることだろう。
「すまないラーゴ、私のせいだ」
頭上から、父の震える声が落ちる。
愛する妻を守れなかったと後悔しているのか、それとも毒殺されたにも関わらず、王妃一派の圧力で病死に納得してしまったことを懺悔しているのか。
ラーゴへの謝罪すら、もはや自己満足だ。
「ええ、そうですね。お父様のせいです」
父を向くことなく、ラーゴは盛り土を見つめながらそう返した。
次に狙われるのは殺しそびれたラーゴだろう。
きっとそう遠くない未来、母の元に行けるのだ。
そう思っていたラーゴだったが、事態は思わぬ方向へ向かった。
葬儀から二週間ほど経った頃、宰相であるゴッドランドがラーゴの私室を尋ねてきた。
「ラウィゴ様、城にいては危険です。身の安全のため、静養を名目に避難しましょう」
ゴッドランド家が王妃一派と敵対関係にあることは知っていたが、ラーゴを守ろうとする理由がない。もはやなんの後ろ盾のないラーゴに手を貸しても、なんら旨味はないのだ。
ラーゴが素直にそう問えば、ゴッドランド宰相は苦笑した。
「私の娘は学生時代、陰湿なイジメに遭っておりました。自ら死を選びそうなほど追い詰められていたという娘を、側妃様に救っていただいたんです」
気付かなかった自分を恥じておりますと、そう告げる宰相の瞳は柔らかい。
「少しでも恩返しをさせていただけませんか。側妃様のお力添えがなければ、私は一人娘を失うところだったのです」
ラーゴはその申し出を前に、しばし考えた。
あれこれ理由をつけて自分を傀儡にでもするつもりなのだろうとも思った。
王妃一派がのさばって困るのは、反対勢力であるゴッドランド宰相もだろう。
第一王子であるラーゴが死んだ場合、王妃一派の勢いは止まらないことは火を見るより明らかだ。彼らの対抗策としてラーゴを生かしておきたい、そんな思惑もゼロではないだろう。
慎重な態度をとるラーゴに、宰相は苦笑した。
「お疑いなのは当然でしょう。ですが私がラウィゴ様を救いたいと思う気持ちも真実です。打算が全くないとは言いません。ですが腐っても宰相ですよ。身の安全は保証しますし、この手を取っていただいたら後悔はさせません」
確かに打算などないと誤魔化されるよりは納得できた。
「僕になにを求めているんでしょうか」
「まずは無事に生きてくださることですね。そして聡明なラウィゴ様が成人した暁には、私にご協力をお願いしたい」
「……いいでしょう。僕が死んでも王妃が喜ぶだけですもんね。ただ殺されてやるのも惜しい気がしてきました」
あの女を喜ばせるために、易々と死んでなるものか。
そうしてラーゴはゴッドランド宰相の手を取った。
だがそれを後悔したのは早くも一週間後のことだった。
◆ ◆ ◆
擦り切れた麻のシャツは、洗濯してもずっと匂う気がする。
サイズの合わない靴はクタクタで、ラーゴの艶やかだった黒髪も汗と油で汚れたままだ。
硬く小さな寝台までも埃っぽく、寝た気がしない。
孤児院での生活は、ラーゴにとって最悪なものだった。
「なんで僕が孤児院で暮らすんですか!」
「療養先へすぐに向かったら、王妃の手の者がすぐに命を狙うでしょう。まずは市井でその身を隠してからです。なに、数ヶ月後には私の親戚筋の家に養子として引き取らせます」
一週間前、ゴッドランド宰相はそう告げると、戸惑うラーゴを孤児院へ預けて去ってしまった。ご丁寧に、ラーゴに平民の服を着せて顔に煤をなすりつけてからだ。
孤児院の院長は事情は薄く知らされているようで、ラーゴへの扱いは他の子供達よりも丁寧だったが、特別扱いはしなかった。
そのため側妃の子ではあったが王子として生きてきたラーゴは、生まれて初めての労働をすることとなった。
まだ十歳だが、孤児院ではもう十歳だ。
薪割りや食事作り、畑の手入れでもなんでもやらされた。
年齢の割におぼつかないラーゴを周囲の子供たちは笑い、それがまたラーゴの心を頑なにした。
(僕は王子なのに、どうしてこんなことをしなければいけないのか)
溢れそうな弱音をどうにか噛み殺し、ラーゴは洗濯や畑仕事で荒れた手をジッと見た。
いくら賢くとも十歳の子供だ。今までの生活から一転した惨めな立場に悔しさが募る。
ラーゴはいくら王子とはいえ、いや第一王子だからこそ幼いころから勉強を頑張ってきた。蝶よ花よと育てられたつもりはない。
だが孤児院で暮らす子供に比べれば、明日の食事に困ることなく勉強ができた時点で恵まれていたのだ。
頭では理解しているものの、その上で平民の子供達に頭を下げられるほどラーゴは大人ではなかった。
(お母様と一緒に、死んだほうがよかったんじゃないか)
そう思うのは、孤児院に来て二ヶ月ほど経った頃だ。最低限の仕事はこなすものの、ラーゴはまだ周囲に馴染めない。休憩時間は皆から離れて、いつものようにぼんやりと園庭を眺めていた。
「きゃははは!」
「はい、おしまいだ。じゃあ次の子おいで」
園庭ではしゃぐ子供達の真ん中には、いつも同じ茶髪の男がいた。他の子供よりも少し年嵩で、十五歳だと聞いている。
名前を、リウ・バッフという。
孤児院の中でも最年長の少年は、いつも嫌がらずに小さい子供の面倒を見ている所謂『いい子』だ。
だがラーゴは初対面の頃からリウが苦手だった。
凡庸な顔立ちとひょろりとした体つきをしたリウは、金色の瞳だけ宝石のように輝いていて綺麗だと感じた。
『よろしくな、ラーゴ』
母が付けた愛称を偽名として使うことになったが、ラーゴの中で軽い反発があった。
しかしリウにラーゴと呼ばれた時は、むしろ心地良いとすら感じたのだ。もっと呼んでほしい、その笑顔を向けてほしいとすら思った。
しかしリウの注意がラーゴに向いていたのはほんの一瞬で、周囲から上がった喧嘩の声ですぐに彼はその子たちのところへ飛んで行ってしまったのだ。
その瞬間、ラーゴはリウを嫌いだと思った。
小さな子供たちの世話役を任されているリウは、城から半ば無理矢理連れてこられ不満げなラーゴに対してとても親切だった。リウはむやみに笑顔を振りまくタイプではないものの、ある種の爽やかさある。優しさを当然のように他人に与え、多少自分が損しても周囲がうまく回れば満足するようにも見えた。
どう偽装しても高貴な身分だったことは明らかなラーゴを、他の子供と分け隔てなくあれこれ気に掛けてくる。
どうにもそれが気に食わない。
負の感情は日を追う増していき、今では嫌いだとすら思っていた。
それでもこうしてラーゴの声がすれば、耳を澄ましてしまう。
なぜか姿を追いかけてしまうのだ。
見れば腹が立つことが分かっているのに。
ラーゴは今日も、理由も分からないまま苛立つ。
だが姿がなければないで、落ち着かないのだ。
「リウ! リウ! 次は俺の番だぜ! 思いっきりグルグル回してくれよ!」
「ずるーい! じゃあその次はあたしね~」
「待て待て、順番にな。でも俺にも休ませてくれ」
彼が子供たちと遊ぶ声を聞くと、胸にザワザワとさざ波が立つ。
ラーゴはこの感覚を『リウへの苛立ち・嫌悪』だと思っている。
笑顔で子供達をいなすリウを眺めていると、不意にラーゴと視線がかち合った。
するとリウは大きな声でラーゴを呼ぶ。
「ラーゴ、おいで!」
その瞬間、ラーゴは酷く攻撃的な気持ちになった。
リウを悪しき様に罵りたくなった。
何も知らない癖にと。
十把一絡げに自分の名を呼ぶなと怒りが湧いた。
強い怒りが腹の奥からグラグラと沸き上がる。
ラーゴはリウに返事をすることなく、後先考えず窓に背を向け扉へと走った。
なぜ腹が立ったのか、その理由は分からないまま乱暴に扉を開けて廊下へ飛び出した。
母に呼ばれていた愛称を偽名として使うことになったときの複雑な気持ちや、亡くなった母の顔、そして宰相の口車に乗ったはいいが、体よく孤児院に捨てられたのではないかという不安が一瞬で押し寄せてきた。
換気していた孤児院の扉をすり抜け、形ばかりのおんぼろ門を後にした。
とにかく走って、走って、走り抜けた。
走りながらラーゴの目からは次々と涙が溢れた。
拭っても拭っても視界は滲むばかりで、次第にラーゴの体力が尽きて川沿いに座り込んだ。
「……っ、く、お母様……ッ」
葬式の時ですらラーゴは泣かなかった。
母の亡骸は明日の自分だ。
明日はまだ命があるのか分からない、それは城にいたときでも孤児院にいるときでも同じはずなのに、どうしてこんなに惨めな気持ちになるのだろう。
親がいない子供たちは、どうしてあんなに明るく振る舞えるのだろうか。
ラーゴは肩を震わせながら、ただ静かに泣いた。
「ここにいたのかラーゴ」
名を呼ばれ、ビクリと身体が震えた。
リウの隣に腰を下ろした少年はリウだった。どうやらラーゴが孤児院を飛び出してすぐに探しに来てくれたのだろう。
「別に、探してほしいと思ってません」
飛び出したはいいものの、ラーゴは知らない場所に心細くなっていた。
多少なりともリウが来てくれて嬉しかった気持ちはあるが、フイと顔を背けてそんな憎まれ口を叩いてしまう。
リウは苦笑しながらもラーゴの手を取った。
「俺が探したかっただけだ。ラーゴに会いたかったからさ」
五歳年上だがリウも周囲から見れば子供のはずだ。
年齢の割に随分大人びているとラーゴは思った。面倒見もよく、こういう人間が誰からも好かれるのだろうと思う反面、リウはまた苛立ちを募らせた。
自分にはないものを持っていると認めたくないのかもしれない。
「思ってもないお世辞なら結構です。どうせ僕は、他の子供達のような可愛げはありませんから」
更に顔をぷいと背ける。
これこそが可愛げのない行動そのものだと、頭のどこかで王子としてのラーゴが思う。
どうしてリウを前にすると、こうもつまらない態度しか取れないのだろう。
ラーゴは、こんな八方美人の男などどうでもいいと思う反面嫌われたくないとも思った。
しかしその不安を吹き飛ばすように、リウは大きな口を開けて豪快に笑った。
「はははっ、はは、面白いなラーゴは! 自分でそれを言うのか?」
馬鹿にされたような言い方だったが、それよりもラーゴはリウの屈託のない笑顔に目を奪われていた。決して顔立ちが美しいわけでもなければ、どちらかといえば素朴な少年だ。
だがラーゴはとても綺麗な笑顔だと思った。
黙ってしまったラーゴの背中を、目尻の涙を拭いながらリウは叩いた。
「は~、久しぶりに大笑いしたな。ありがとうな、ラーゴ」
こんなことでお礼を言うなんて、やはりリウは変な人間だ。
そう思いながらも、ラーゴの心臓はトクトクと速い。
「どうした、顔が赤いぞ。疲れて熱でも出たか?」
「……ッ!」
リウはなんの躊躇いもなく、ラーゴの額に自らのそれをコツンと当てた。
「大丈夫そうだな。歩けるか? 無理そうならおんぶしてやるぞ」
ニカッと笑うリウが眩しかった。
どうして顔が赤いのかは分からないが熱はない。
ラーゴに背中を向けて、おぶってやろうとしゃがむリウの肩に手を掛ける。
疲れているわけではなかったが、リウに触れたかった。
おぶってもらえば、その間だけはリウを独り占めできる。
リウの首にギュッとしがみつくと、ラーゴをおぶった身体はゆっくりと立ち上がった。
「よしよし、ラーゴはいい子だな」
涙は全て流したと思ったのに、再びリウの目頭が熱くなった。
背中越しにラーゴの体温が伝わってくる。
歩くリウの身体越しに、赤くなった太陽が輝いていた。
「……母が亡くなったんです。大好きな母でした」
ラーゴがぽつりと口を開く。
「そうか」
リウは深く問い詰めることなく、ただ小さな相づちを打った。
哀れむわけでもなく、受け入れてくれるその言葉がラーゴには嬉しかった。
ぽつり、ぽつりと言葉が続く。
「孤児院に入れられましたけど、楽しくないんです。畑なんて触ったことなかったですし、ごはんもあんまりおいしくない」
「それは分かる。もっと遊びたいし、うまいものを食べたいよな」
リウが笑う振動が心地良く伝わってくる。
目を閉じると、世界にはリウとラーゴだけのように感じられた。
そうか、とラーゴは気付いた。
ラーゴは孤児院に来てからずっと、他の子供達のようにリウに甘えたかったのだ。
大人ではなく子供ではなく、貴族でもない。
自分にだけ優しくすればいいのに、どうしていつもラーゴを他の子供と同列に扱うのか不満だった。
王子なんだぞといった、傲慢な理由ではなかった。
ただリウのことが好きだからだと気付いたのだ。
八方美人の嫌な人間だと思っていたのは、自分だけを見てくれないからだ。
金色の瞳は、ラーゴだけを見てくれればいいのに。
「……僕が大人になったら、リウにおいしいご飯を用意してあげますよ」
「言ったな? その辺の食堂じゃなく、手作りだからな? 期待してるぞ」
笑いながら言うリウだが、きっと子供の戯言だと思っているのだろう。
期待していると言いながらも、全く期待していないことは伝わってくる。
また他の子供達と同列に見られたとムッとした。
「本気ですよ。大きいリウの部屋も用意しますし、好きなだけ贅沢させてあげます。そしたら……ずっと側にいてくれますか」
ラーゴにはこれが精一杯の言葉だった。
ドクドクと高鳴るラーゴの振動は、リウの背中に伝わっていそうだ。
「そうだなあ――」
リウの声に、ラーゴの身体は強ばった。
断られたらどうしようと思った。
だが同時に、断られてもどうにかしてやろうとも思った。
(よし、どんな手を使ってでも大成しよう)
たとえ宰相に見捨てられていようとも、王子として学んだ知識や経験は無駄にはならない。
少なくともなんらかの手段で金銭を稼げるだろうし、リウ一人なら易々と養えるだろうというおかしな自信があった。
自分のために生きることを頑張れなかったが、リウと生きるためならば頑張ろうと思えた。
生きる希望が湧いた瞬間でもあった。
「将来ラーゴが立派になって、俺が生活に困ってたらな。その時は頼りにしてるぞ」
きっとリウはまだ、ラーゴがその場だけの話だと思っているのだろう。
だがラーゴは本気だ。
ラーゴは明日の自分の運命すら分からない身だ。
しかしそれはラーゴに限らない。なにかあれば、皆明日には死んでしまうかもしれない。
それならばラーゴは、リウを愛したいと思った。
自分の手の中で、なんの苦労をさせることなく。ただ幸せにしたい。
「絶対幸せにしますよ」
「ははっ、お前は綺麗な顔をしてるし賢いから、俺の将来は安定だな」
今のラーゴはまだ、こうやってリウに背負われているだけだ。
力をつけなければいけない。知識を、経験を、自分の武器を増やして立場を築く。たとえ王子として城に戻れたとしても、将来リウを得るためにやるべきことは同じだ。
真っ赤な太陽が、リウの金の髪を赤く染めた。
ラーゴは手を伸ばし、柔らかな毛先に触れる。
「くすぐったいぞ」
心地良いリウの声をずっと側で聞くために、ラーゴがすべきことは決まった。
そうして半年ほど経った頃、ゴッドランド宰相の身内だという貴族の男がラーゴを引き取りに来た。当然だが対外的には、貴族が孤児を養子に迎えたということになった。
ラーゴが孤児院にいる間、母を亡くした傷心のラウィゴ・セデンス第一王子は僻地に療養のため旅立った――という物語になったそうだ。心を病んだ第一王子は、二度と城に戻ることがないかもしれないと言ったのは、実の父である国王だ。
彼もまた、愛する側妃との間に生まれたラーゴを守りたいのだろう。
国王からは、今はまだ王妃一派に強く出られないが、無事に城へ帰って来られるよう必ず地盤を固めるといった内容の手紙も渡された。
しかしそれらは全て今のラーゴにとって、些末な問題だった。
リウという愛する人間ができたのだから、むしろ王位などなくてもよかった。
数ヶ月経ち、予定通りゴッドランド宰相の息がかかった貴族に引き取られた。
「次に再会した時には、必ず僕だけのリウにします」
ラーゴは馬車に乗り込んだ際、笑顔で見送るリウを見つめながらポツリと小さく零す。
それは幼いながらもラーゴの誓いだった。
しばらくして、引き取られたラーゴは膨大な魔力を保有していることが明らかになる。
魔法使いとしての全ての技能を、ただリウを迎えに行く日を夢見て磨かれていくことは、今はまだ誰も知らない。
終
呪われ竜騎士とヤンデレ魔法使いの打算 てんつぶ @tentubu
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