第3話電車に揺られて☆

「竜ちゃん、神田明神へお参りに行きませんか?」


 電車に揺られながら、ふと虎時はつぶやいた。


 「アキバって言ったら、A○B! まじかで見られるアイドルだよね!」


 竜が思いっきり笑顔で言うものだから、虎時は笑った。


 「良いですよ。俺も一度、玄武と見に行ったことがあります」


 「へぇーー。あの、いかにも野球少年でシャイそうな玄武が……? 信じられないw ゲラゲラ!」


 「そんな、そんな言い方ではまるで俺は、玄武と違ってアイドルの追っかけをしているような男に見えるように聞こえますが…… 」


 「だって、虎時さんはいかにもお坊ちゃんで、パソコンとか好きだし……アニメも見るし小説だって書くでしょ?」


 「むぅ」


 竜は、あからさま過ぎる虎時の態度に失笑した。「虎時さんは、もしかしたら玄武に嫉妬しているのかな? 」と思いついた。


 そもそも、虎時とお付き合いする前に付き合っていたのだから仕方ないのかもしれない。「男の人って、彼女の過去の男に嫉妬するって言うもんね」竜は携帯でなんとなくゲームをし始めようと携帯を手に取った。


 「嫉妬なんかじゃないぞ! 俺だけ、そう思われるのは嫌なんだ」


 虎時は髪の毛をいじりながら言った。


 「そうなんだ、じゃあ四神のみんながアキバ系男子だと?」


 「それなら、いいよ」


 「虎時さんてばッ」


 「四神はみんな、アキバ系でいいじゃないか!」


 竜は首を傾げた。「どうしても、ううん、絶対麒麟さんは体育会系のおじさまでしょう! 玄武もムキムキだしさ…あれ? 体系がゴツくてもアニメとかライトノベルとかを読んでいないとは限らないよね? ーーでも、麒麟さんがアキバ系男子ではなさそう。絶対、そう!」うんうんと虎時から視線を離そうとした瞬間、電車は急ブレーキをかけ止まった。


 アナウンスが流れ、人身事故の影響でしばらく停車するそうだ。


 「じ、人身事故」


 「竜ちゃん、別に珍しい事でもないでしょう?」


 関東の電車の人身事故件遭遇回数は想像以上に多い。


 お休みに、電車に飛び込む人の心境を想像すると竜の胸がキュッと痛くなる。「虎時さんは涼しそうな顔をしてさ。悲しいとか思わないのかしら?」と一瞬虎時の神経を疑ってしまう。


 「竜ちゃん、飛び込む人も俺たちのように生きる人もそれぞれの自由」


 「自由て、そんなーー」


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虎時さん若干納得いきませぬ☆ @mittunohikari

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