事務職を勤めながら劇団に所属している青山草志はある日、劇団仲間の大学生・成瀬理仁から、
「夕菜という女の子と、二人芝居をしてほしい」
と言われる。
その内容は、別れた元恋人同士が、駅で偶然会うというもの。
快くオファーを受ける草志だが、その夕菜という女の子、なんとなく草志と距離を置いている。
彼女は練習を重ねても一向に打ち解ける様子もなく、さらにはジト目を向けてくる始末。
草志は、そんな彼女に違和感を感じ始め……。
演劇を通して、夕菜という女の子の不思議さを解き明かしていく本作。
ミステリー仕立てになっており、読み進める度に深まる謎と、それが明かされた時の驚き……!
素晴らしい読書体験に心が躍りました!
さらに、草志を通して体験する演劇の練習風景が素晴らしいです。
練習後のご飯も相まって、一緒に練習を共にしたような感じを覚えます!
そして何より、草志と成瀬……本当に良い距離感のコンビです!
ゆるやかな謎ときながら、あっと驚かされる傑作!
是非ともご一読下さい!!!
ラストまで読み終えて「なるほど、そういうことか」と目の前が開ける感じがありました。
主人公の草志は、友人である成瀬に呼ばれ、これから「二人芝居」をやることが決まる。草志は成瀬の連れてきた岡崎夕菜という女子を相手役としてお芝居をすることになるが……。
タイトルでは「幽霊」という言葉が登場してくるけれど、本編を読み進める限りは「お芝居」をやり遂げようとする青年の物語となっている。
「なぜ、このタイトルに?」と中盤までは少し不思議に思うこともありました。
夕菜との関係性。彼女がなぜか草志に嫌悪感を抱いているような様子があること。飄々とした感じの成瀬。
そしてお芝居が進んでいく……という形に。
本作は演劇にかける青年たちの物語としても完成度が高く、純粋に「そういう作品」として読んでも楽しめる仕上がりになっています。
そんな中でも各所に散りばめられた「違和感」のようなものがあり、それが最後に思わぬ形で花開く。
この感じがとても爽快でした。タイトルの意味も回収され、ストンと腑に落ちる感じがとても心地よい。
草志と成瀬の関係性もとても良いし、スッキリとした読後感と共に読者に高い満足を与えてくれる作品です。
演劇って奥が深いですよね。台本通りに話は進行するにしても、セリフを忘れてしまったり飛ばしてしまったりと、多少の修正は致し方ないのかも知れません。むしろそれを乗り越えるためのアドリブの力は必要でそれも含めた総合力が試され観客たちに期待されていると言っても過言ではありません。
しかし、本作はその領域を超えたミステリアスな展開で読者を迎え、演者たちがこれを発揮するところに本作の醍醐味があると感じました。
本番――演劇の台本にはない展開と様子のおかしくなっていく相手の女の子。
突然、台本にはないセリフを語り出すのです。
これに機転の利かせたアドリブで軌道修正。
しかし、女の子が急に距離を詰めてきて……
作者様が演劇用の台本も用意してくださっています。そちらも楽しめる内容となっているのでオススメです。
👇演劇台本URL
https://kakuyomu.jp/works/822139837455731428