私は、心が見えない。

第1話

私は、自分が理解できないものを語るのが怖い。

それは私の手で、口で、仕草で語られる。

私にとって、理解できないことを語るのは怖い。

なぜなら、私が理解できないことを語る度、私の知らないところで、そのことについて、私が持っている感情が、私すら知らないところで、他人に知られるかもしれないから。

私は自分の心以外理解できない。

だから、私は自分の物語に出てくる人達についても、胸の内を書くことはしたくない。

私には、その人たちの姿が見える。形がわかる。顔がわかる。そして、言葉も。

だから、私は言葉にして、その状況を伝えられる。描ける。

でも、私に他人の心を理解するなんてできないし、怖いし、考えたくもないし、やりたくもない。

自分以外の心を理解するなんてしたくないし、責任も持てないし持ちたくない。

だから、私は見えた姿、紡いだ言葉、情景だけを描きたいんだ。