何者でもない僕と何者になった君へ

ユウキ・アカツキ

第1話君と出会ったあの日から

 思えば僕はずっと暗かった。


 どうしてだろう、あの日、あの時、君に出会う前から僕は暗かったというか生きている意味なんてなくて、暗い暗い……暗闇ばかり歩いてきた。


 どうして僕は気づいていなかったんだろう、君が僕のことを生きる希望とか、生きてていいんだよとか言ってくれなかったら、そんな……ご都合主義みたいな素敵な事を言ってくれなかったらと思うと……


 


 そうだろう、いや、そうでないと僕はこんなところに居ない。


 賞なんて、貰えもしなかった。


 だから……


 君には感謝してるよ、いつまでも……どこに居たとしても、僕を目指していたところまで連れて来てくれたんだから……


「ありがとう……■■■」


 あの子に出会えたから……こうして、作家になれたしこうやって……楽しく、嬉しく……自分にとってのいい日常を過ごせたからこそ……

 今の僕があるんだから。


「……先生」


「はぁ……緊張するな」


「……先生、先生?」


「よし、新しい話でも……」


凌斗先生りょうとせんせい!」


「はっ!はい!!」


 不覚だ、全然編集者の方が話しかけてくれてたのに気づかなかった!!

 いや、そもそも……あの子のこと……ずっと考えてたからか……


 ほんとに、脳を焼くほどだからかずるい子だよあの子は……


「それで、また考えてたんですか?」


「はい……そうです」


「全く、もうそろそろ出番ですよ」


「え、まじすか」


「はい、まじです」


 まさか、考えていた隙にもう時間とは……

 時が過ぎるのは早い……ということか。


「変なこと考えてないで、行ってください」


「はーい」


 さて、行くとしますか。


 僕の、初の舞台へと!!



 遡ること数年前……


 生きてる意味、それが分からない。

 どうしてだろうか……

 それはまあ、意味なんて無いのはそれぐらい分かってるんだけど……


 まあ、でも……死ぬ前に少しだけ外出てなにかこの世に残すものでも考えるか……


 そう、僕はただ……死にたがりの作家になりたいなりたいと思ってるだけの少年……なのだ。


 少年、じゃ……名前ないし可笑しいくらいか。


 僕は……どちらかと言えば、クラスでもモテないし、地味で何処かつまらないと言われる方のカーストの人間であると言えばわかるだろうか。

 まあ、そう思い続けたらそういう人間だからこそ別にこんな人間いなくても問題は無いだろうな。


「はぁ……生きてるだけでめんどくさい」


 口を開けばそう言う僕をお母さんは心配して気にかけてくれる、だけどそれを無駄にして僕はこれからしのうとしているんだからこそほんとに……僕という男はほんとに酷いことをしてる気がする。


 だったら、やめろと思うんだろうが……


 それは……今の僕に言ったところで無駄だろう。

 諦めてくれ、と言ったところか。


「もう、めんどくさいな……」


 そう思っても……誰も声をかけてくれる訳でもないから……しんとした空気が流れていく。

 というか、言葉自体が霧散していくと言えばいいのだろうか。


 まあ……

 そんなことなんて、どうでもいい。


 どうせ、助けを求めたところで助けてくれる人なんて誰もいないんだから。

 というか、そもそもだけど助けを自分で無駄にしてるんだから今更助けを求めるようなことを言ったところで意味ないだろう。


「そろそろ、外、行くか」


 家族に迷惑をかけないために死ぬために、縄かナイフを買って自分で死んでしまえば問題なんて特には無いだろう。


 そんな事、無いのか?

 いや、分からんが。まあ、少なくともそんなことは無いだろうなと思いながら、僕は自分の部屋から出る。


「とっとと……おさらばするためにな」


 そうすれば……きっと、家族は楽になってくれるだろう。

 そう思いつつ、僕は歩みを進めよう。


 そう……ずっと……ずっと……


 自分の殻の中に留まり続けたら皆が心配してくれると思うから……

 そんな、卑怯な事を思いつつ……

 僕は、そう期待しながら……外に出た。


 日差しは、そんな僕を怒るかのように眩しかったけど……

 そんなの関係ない。

 ただ、僕はこの世から居なくなりたいのだ。


 だから、この外に出るのも、太陽の日差しに焼かれるのもこれで最後だ。


 早く……死にたいな……


 こんなにも、ワクワクするとは……思わなかったな……どうせなら、もっと違うことでワクワクしたかった。


「はぁ……なんでこんな思いしなきゃいけないんだろ」


「……君」


「ん?」


 呼ばれた?

 いや、気のせいか……


「君君、無視しないでよ」


「あ……なんですか」


 やっぱり……読んでたのか……

 いや、そもそもだけどなんで僕なんか呼ぶんだ……意味がわからない……


 顔とか……姿を見てる訳じゃないけど美人さんのような声に聞こえるけど。

 でも、どうして僕なんだ?

 訳が分からない……意味なんて考えない方がいいか……


「はぁ、せっかく美少女が話してるのに、なんで私の顔を見ないのさ」


「……自分から美少女とか、胡散臭……」


 そう言い、僕はその彼女の顔を見た……

 瞬間的に……僕の世界は、変わった気がした。


 美して……人形みたいに、可愛くて……

 綺麗で……こんなにも……美しいと思うほど……この子はこれだけ目を奪われてしまうほどとんでもない人だと思えた……


 こういう時に、言うのだろうな……

 僕の瞳には、この子の周りに花が見えた……とてもとても綺麗な花が。

 それに、そんなものでも片付けられないほどこの子はとても綺麗だった。


「あの……」


「ん?」


「僕、久遠凌斗くおんりょうとって、言います……あなたは……誰ですか」


「ふふ、可愛いね」


「……っ?!」


 可愛いって……僕なんかに言うことないのに……いやでも、僕……この子にそう言われるのが勿体ないと思う反面、この子になら、言われても……いいんじゃないかって思うほど……この子に気を許してしまってるみたいだ。


「私、赤池穂乃香あかいけほのかよろしくっ」


 そう、穂乃香は手をさし伸ばしてきてそう言った。



 to be continued



 ―作者のエッセイタイム―

 さて、皆さん始まりました。

 何者でもない僕と何者になった君へ。

 略称は……僕君なのかな?まあ、それはいいとして……


 この物語は、完全に私の鬱になっていた状態を書いているような半エッセイのようなものなのかな。


 手紙のような、エッセイのような……そんな物語となっているので、これを見た未来の私は多分絶対恥ずかしがるだろうなってことが大いに想像できますが……それは、気にしないでおきましょう。


 だって、未来の私に向けての手紙のような物語だし……書籍化という夢を果たすまでこの物語は終わることないのですから。


 こうして、本編を見てくれてる方にはほんとに感謝でありほんとに嬉しいと思っています。

 どうして……こんなにも嬉しいと思うのかはやはり、作者冥利に尽きるからだろう。


 この物語、追いかけてくれるのであれば、お星様やブックマークしてくれるのであればほんとにありがたいと思っています。


 それでは、次回はまたどこかで会いましょう。


 ユウキ・アカツキでした。

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