ギフトはいらない

@bokunohanasi

第1話ギフトはいらない

ある国では障害をもって生まれた人をギフテッドというらしい。ギフトを持って生まれた人。

神様からの贈り物

ふざけている


投げたら163km 打ったらホームランのメジャーリーガー

100メートルを9秒58で走る陸上選手

たった1枚の写真で1000年に1度の美少女ととりあげられるアイドル


そういう人達をギフトを持って生まれたというのではないか、

もちろん考えらないような努力もしてきたのだろう。


でも、俺だって数え切れない苦難があってかなりの努力をしてきた。。。このギフトのせいで



俺は九州の田舎町に産まれた。平成初期、うだるような暑さの夏の日だったと聞く。

4000g近い大きな逆子。


母ちゃんと父ちゃんはめちゃくちゃに喜んだそうだ。待望の第1子。母ちゃんはその時すでに30歳中盤でなかなか子供ができなかったらしい。


「拓」たく

それが俺の名前。開拓のたく。道を切り開いて行って欲しいという願いを込めたのだと聞いた。


程なくして、母ちゃんと父ちゃんの喜びは悲しみに変わったと思う。思うというのは俺にその頃の記憶はもちろんないし両親がその時の事を話たがらないのだ。


生後、1年たたない頃やっとハイハイをはじめたのだが右足を引きずっている。


そう、俺には右足の感覚がほとんどないのだ。




弟の話。


俺には2歳歳下の弟がいる。

「開」かい

2人揃って開拓。両親はどうもこの言葉が好きらしい。


弟はかなり発語が遅かったらしい。確かに俺の1番古い記憶では弟はまだ簡単な言葉しかしゃべっていなかった。


弟はのちに病院で

発達障害、知的障害と診察された。


身体の悪い俺と頭の悪い弟

両親はギフテッドを2人も神様から受け取ったのだ。



小学生の時の話

俺は勉強が割と好きだった。なにかに集中している時は嫌な事を忘れられる。

だけど、逆に小学生ならみんな大好きな休み時間はとてつもなく嫌いだった。


みんながドッチボールやサッカーをしているのを教室で見ていた。少しませた女子達のガールズトークがちょこちょこと耳に入る。


俺がよくやっていたのは妄想だ。

妄想といってもイヤらしい男女の妄想ではなく、そこは小学生だ。


街に急に恐竜があらわれたらとか俺に特殊能力が使えたらとかである。

でも、やはり1番していた妄想は、俺の右足がみんなと同じように動いていたらである。


休み時間が終わってみんなが帰ってくる。

この時が1番苦痛かもしれない。

汗のにおい、楽しそうな顔、そして彼らも一応気を使っているのか話しかけてくる。


「ジジなにしてたのー?」


俺は1年生の頃からジジというあだ名で呼ばれてる。

1年生の頃に俺が足を引きずりながら歩いているのを見た同級生がジジィみたいだなといったのがはじまりだった。小学生というのは単純で残酷である。


だが、不思議と俺も嫌な気持ちにはならなかった。今まで親のコミュニティだけで生きてきた為幼心にかなり気を使われているのを分かっていたからだ。


そこに小学校に入り、ズケズケと攻め込んでくるやつがいる事が清々しさすら感じていたのかもしれない。


「ジジなにしてたのー?」


俺の返答はいつも1択だった。

「寝てた」



弟も同じ小学校に通っている。

九州の田舎町に学校の選択肢はあまりない。


弟が入学して特別学級というものが設けられた。

「あすなろ学級」

あすなろという木があるらしく明日は檜のようになろうという意味が込められてる木らしい。


弟は普通学級とあすなろ学級をいったりきたりして勉強している。


弟1人しかいないクラス

今思うとすごく寂しかっただろうなと思う。



家に帰ると弟とよくゲームをしていた。

64のポケモンのミニゲームが弟が好きでハンデをあげて手加減をしてギリギリでいつも勝つようにしていたが俺はもちろん全然楽しくゲーム出来ていなかった。でも横にいる弟が楽しそうだったからそれでよかった。



聖と性


思春期は誰にでも訪れる。

俺にも弟にも。


中学校のクラスは恋の話でもちきりだ。

あの人とあの人が付き合っているとかこの人が好きとか

俺にも好きな人ができた。

隣の隣のクラスの「聖」せい ちゃんという大人っぽい女の子。


きっかけは本当に単純でありきたりで俺が廊下でプリントを落とした時にスマートに拾ってくれたということ、そして普通に顔が好きだった。


付き合うとかは足の事もあるし無理だろうなと諦めていたけど話したり仲良くなりたいなとは思った。


そんな時チャンスが訪れた。

当時の田舎の中学校にバリアフリーなんて概念はない。休み時間、蛇口の水を飲んでトイレにいくだけでも一苦労だ。


「大丈夫?」

後ろから話しかけられた。この声はと思い振り返ると聖ちゃんが立っていた。

「教室まで送るよ」

聖ちゃんは性格まで良かった。


こんなチャンスないと甘えることにした。

たわいもない会話をしながら教室まで帰った。

あまり内容は覚えていないが緊張したことだけ覚えている。間違いなく俺の中学人生で一番の思い出で幸せな時間だった。


だった。

何気ない会話で

「聖ちゃんって気になってる人とかおるん?」

と当時の俺では頑張った事を言った。

「いるよーサッカー部の人」


俺の初恋は終わった。妄想の中ではエースストライカーの俺だが、現実のサッカー部には遠く及ばない。


その日の夜ひとしきり泣いた後に聖ちゃんの妄想で励んで終わりとなる。




弟は中学は支援学校に通っていた。

小学校の特別学級で1人授業より毎日がとても楽しそうに見えた。というのも笑顔が増えた。


弟が笑っていると俺も嬉しい。


弟は思春期になったからかアイドルのライブ映像を見て楽しそうにする事が多くなった。俺も一緒になって見ていた。


どんな人でも元気にさせるからアイドルは素晴らしい。


この頃の弟の言語レベルは幼稚園生と同等くらいで会話をよくするようになったが口も悪くなってきた。思春期特有のあれかと思うが、母ちゃんに反抗して弟が怒られよく泣いていたのを覚えている。



俺も弟も学校を卒業して社会人となる。

社会人といっても俺は障害を持った人が働くA型作業所というところで、

弟はもう少し簡単なB型作業所とデイケアに行く事となる。


初日、俺も弟もはじめて大勢の他の障害者と出会うこととなる。かなり緊張していたと思う。どんな人がいるのかとかうまくやっていけるのかとか。


でも、そんなこともつかのま、

みんな新入りに興味津々なのかいっぱい話しかけてくれてすぐ仲良くなった。


障害者には色々な種類がある。

知的障害。発達障害。精神障害。身体障害。


みんな色々抱えてて、自分も大変なのだろうけど人に気をかけれる優しい人が多い印象を受けた。


その中でも、1番話しかけてくれる人の話。

その人は、元々大学まで行って不動産の営業マンだったけど事故に巻き込まれてパニック障害という病気になったと話した。


パニック障害は特定の状態になると発作がでてパニックになる病気だ。乗り物や遠くへの移動、狭い場所、高いとこなどで発作が出やすい。


その人は事故以降段々出来ることが少なくなって1番悪い時は家から1歩も出れないような状態だったという。そんな彼が笑顔でやっと働けるようになってよかったよと言った。


不足を言わないで現状に感謝するとても素敵な人だと思った。


他にも色々な人の素敵な話を書きたいが、これからもまた増えると思うのでまた今度とする。


最後に、


俺は障害はギフトとは思わない。

本当に誰しもが健康を望んで、誰しもが普通の暮らしをしたいと思っていると思う。


だが、障害をかかえても苦にせず不平不満ばかり言わずに素敵に生きている人がいっぱいいる。

俺もそうなりたい。


平凡で平和な日常が一番の幸せである。

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